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空地の真実

 吉田の家の斜向かいに空き地があって、幼稚園に通っていた頃はそこでよく一緒に遊んだ。空地と云っても所有者がいる土地で、勝手に入ったら不法侵入に当たるのだけれど、昭和の時代だったせいか、吉田のお母さんは「そこの空地で遊んでらっしゃい」と、むしろ推奨していた。自分たちも公園より近くに恰好の遊び場があると云うので、大いに喜んで遊んでいた。
 なお、この空地の奥には藪と大きな水溜りがあった。藪と水溜りについては、以前『藪とボート』で紹介した。

 ある時、今日は違う空地で遊ぼうと吉田が云い出した。
「違う空地があるん?」
「あるよ。こっち」
 吉田について少し歩くと、奥の藪のさらに向こう側に、広い空地が現れた。ちょうど文房具屋と洋食屋と銀行の裏側に囲まれた形で、表の通りからは隠れている。この位置関係が秘密めいていて、自分は大いに感心した。
「これ、凄いね」
「凄いじゃろ? わしの秘密の空地なんよ」
 自分と吉田は早速、空地の周りの茂みを使って仮面ライダーだかゴレンジャーだかのごっこ遊びを始めた。するとじきに、洋食屋から同じぐらいの年頃の子供が一人現れた。
 その子はこちらを暫く見た後で駆け寄り、目を三角に見開いて、
「僕の友達でもないのに、僕んちの庭で遊んじゃぁいけんよ」と言った。
 自分も吉田も、仲間に入れてくれと云ってくるのかと思っていたのが急に怒られて、甚だ拍子が抜けた。
「え? ごめん。庭とは知らんかった……」
 吉田が廃人のような顔で謝り、自分たちは元の空き地へ戻った。
「まさか、あいつの家の庭とは思わんかった……」
 それから自分たちは何だか悲痛な気持ちになり、遊ぶのを止して帰った。

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