final A10000 Collector's Edition ファーストインプレッション & レビュー 〜 RME ADI-2/4 PRO SE を添えて 〜
※ 短縮版も用意してみました↓

2025年4月の注文以来、天災の影響により二度の出荷順延となっていた final A10000 が、本日10月31日ついに手元へ届きました。ずっとずっと楽しみにしていましたので、お仕事が終わってからかれこれ10時間ほど聴きっぱなしです。
A10000 を迎えるにあたり、それに相応しい DAC も必要だろうということで、Pentaconn 4.4mm バランス端子を搭載した RME ADI-2/4 PRO SE も併せて迎えるという暴挙に出ました。
note を始めたこともあり、せっかくですので僭越ながらファーストインプレッション的なことをしてみようと思い立ちました。素人の好き勝手インプレなので、なにとぞ生暖かい目でご覧いただければ幸いです。

究極の「無」
初めて聴いてすぐの第一印象でした。無音という音の表現がとてつもなく上手なイヤホンだと思います。音がスッと立ち上がり、スッと無へ消えていく。A8000 のベリリウム振動板にも同じ印象を持っていますが、A10000 は限りなく無色です。表現が難しいのですが、A8000 の 立ち上がりと立ち下がりには少し色がついているように感じます。
実は、今のところ個人的には A8000 のこの色が結構好きだったりします。日本酒の例えが果たして適しているかは疑問ながらも、A10000 の透き通るような純米大吟醸が好みという場合もあれば、A8000 の純米吟醸に残る独特の雑味が癖になる場合もある、という感じです。A10000 はひたすらに淡白です。しかし、芯がとてつもなくしっかりした淡白です。いわば無垢です。
今までこのような無垢に触れる機会が少なかったこともあって、おそらく耳が戸惑っているのだと考えています。その予想通り、聴き込む時間が長くなるにつれて、だんだんと A10000 の音に耳が馴染んできています。もしかすると、本来あるべき音のかたちをちゃんと感じ取れるように、耳をやんわり矯正してくれるようなイヤホンなのかもしれません。
どこまでもすっぴん
ひたすらにお化粧なしの音です。なにも足さない、なにも引かない。完全なストレートど真ん中の直球しか投げてきません。でも球速が 500km/h なんです。もはや自分でも何をいっているのかよくわかりませんw。それぐらいに周りの影響を受けずに、まっすぐにまっすぐに、音が耳に届くイメージです。
基礎能力がとんでもないレベルでしっかりしています。先ほど述べた究極の「無」と「すっぴん」が融合することにより、上流のDACからの音をそのまま耳へ届けているように感じます。
そして、無を極めるということは、有とのコントラストが無限大に近づくいうことです。まるで、OLEDのディスプレイで無の光、すなわち黒が正確に表現できることで、明るさのダイナミックレンジを極限まで高められている現象と似ています。これにより、有の部分がよりメリハリのついた形で表に出てきます。音が「浮かび上がってくる」感じです。

周波数の分離
すっぴんであるという特徴は、周波数特性にも表れています。まず、とてもフラットです。EQなしでバランスが良いです。ただし、A8000 から乗り換えると低域が一見もの足りなく感じます。(→2025/11/2 追記:数10時間のエージングで低域が一気に覚醒し始めます)。その代わり、A10000 の低域にはブーミーさや「ぼやけ感」をほとんど感じません。実に奇をてらわない安心感のある音です。
さらに、周波数の分離感が半端ないです。例えば、低音と高音が同時に発音される場合に、どちらかが埋もれたり、音がにごったり、両方の周波数とは別の歪っぽい音を感じたりすることがあります。A10000 はこれが目を見張るぐらいに少ないです。バスドラもベースもボーカルもギターもピアノも管楽器もシンセもスネアもシンバルもハイハットも、全てが粒ぞろいで分離しながら同時に鳴ります。本当に1DDなのかと疑いたくなります。
空間の分離
左右の分離はもちろんこと、遠近の分離も心地よく感じます。リバーブの広がる様子や減衰の美しさは、耳を澄まさなくても感じ取れるぐらいです。音の有り無しという二元的な 1 と 0 の両端だけでなく、その間の刻みが非常に細かい印象です。
アナログ機器なので、本来は刻みなんて概念はない(無限小の刻み幅な)はずなのですが、もしかすると 1←→0 間のリニアリティが非常に高く、ほぼ無音とも思えるような極小音量から耳をつんざくような大音量に至るまで、あらゆる音量を正確に表現できるという、ありのままを鳴らす特徴があらわれているのかもしれません。もしリニアでなければ、例えば中間的な音量が大小へ二極化したり、コンプやリミッターをかけたみたいに大きい方へ偏ったりすることで、まるで音量を段階的に刻んだかのように聴こえますもんね。
また、周波数・空間双方の分離が高いレベルにあるためなのか、他のイヤホンよりも歌詞を明瞭に聴き取れます。実はわたし、音階を追ったりハーモニーを感じることの方に興味がありすぎて、歌詞を聞き取るのがものすごく苦手なんです。それが、A10000 で聴くとなんとも不思議なことに、意識せずとも歌詞が頭の中でちゃんと認識できるんです。これには正直驚いています。
一つひとつの音がとても丁寧に、混ざりっ気なく表現されることから、音数が少ない時の個の際立ち感と、音数が多い時のヒーロー勢揃い感との行き来が非常に楽しく、曲の抑揚につられてカタルシスのような高揚感を感じることができます。一音一音がそれぞれ主役級の存在感で表へ出てきます。
耳に寄り添うフィット感
形状が A8000 から見直されており、耳の大きさにもよりますが、自分の場合はピッタリフィットです。A6000 もピッタリフィットなのですが、それは本体が軽い恩恵もあるためでして、A10000 の重さでここまでフィットすることにとても満足です。
そして、個人的に絶大な信頼を寄せている潤工社と共同開発のケーブルも、かつてないほどの太さになって、このケーブルを見ているだけでテンションが上がります笑。もちろん、太くなったことで重くもなっているわけでして、その分イヤホン本体がケーブルに引っ張られる可能性も高くなると思われるのですが、シュア掛けした際の安定感がこの太さと重さによって逆に確保できており、つけ心地は大変良好です。

さいごに
なんてイヤホンを作ったんだ。。。いや、あらゆる技術や想いがこの小さな音響機器の中にあふれんばかりの勢いで詰まっているため、「造る」という表現の方がきっとふさわしいですね。ほんと素晴らしいです。ここにきていまさらという感じではありますが、自分なりにいいイヤホンを判断する基準が、上述したような特徴とは別に2つほどあります。
ひとつは、聴き疲れしないことです。色のついたイヤホンは、聴きはじめのインパクトの良さでゾクゾクっときますが、長続きせずに飽きてしまいます。その点、素直なイヤホンは噛めば噛むほどというスルメ的な楽しみ方ができ、いつまでもこの音を聴いていたくなります。その波及効果として、何を聴いても、たとえ今まで興味がなかったジャンルの曲であっても、聴いていて楽しくなります。あらゆる音楽に対して視界がものすごく開けて、いわゆる「食わず嫌い」がなくなります。
もうひとつは、音量を上げてもうるさく感じないことです。もちろん常識的な範囲でではありますが、クセのあるイヤホンは音量にも敏感で、ボリュームの上げ下げに応じて周波数特性が変わったり、歪みっぽい音になったり、音が耳に刺さるようになったり、ブーミーになったりと、何かとほころびを生じやすいです。上述した音量のリニアリティにも通じるお話ですね。そういった変化が少なく、どんな音量でも、特に大きな音量でも元々持っている特性がそのまま出力されるイヤホンは、総じていいイヤホンであるという印象があります。
A10000 には、これら2つの特徴も兼ね備わっています。あらゆるリスニングスタイルに対して、常に安定した超ハイレベルな特性を維持できる、大変貴重なイヤホンであると個人的には思っています。
そして、このイヤホンで聴いてみて、あらためて A8000 と HA-FW10000 の「色」も唯一無二で非常に好ましいものだと再発見できました。高価なイヤホンを手に入れたから、それより安価なイヤホンはいらなくなるというわけではなく、それぞれの色はとても大切にできるものだと思います。
つまりは、まだまだオーディオ沼は終わらないということになりそうですが、それはそれでまだ見たことのない楽しみがこれからも広がっていくのだとポジティブに捉えまして、RME ADI-2/4 PRO SE へバランス接続した final A10000 Collector's Edition の ファーストインプレッション & レビューを終えたいと思います。ここまでご覧いただき、誠にありがとうございました。
