選挙ポスター掲示板って必要?
衆議院が解散、1月27日公示・2月8日投開票となりました。短い選挙戦のスタートです。そして急ピッチで選挙ポスターや掲示板が設置されています。
でも、ちょっと待って!それってこのネット時代に本当に必要なん?
僕はあることがきっかけで、「選挙掲示板」の調査をすることになりました・・・
その いきさつからお話しします。
1.いきさつ
僕は3年前、家から徒歩5分のK大学が推し進める「リカレント教育プログラム」に1年間参加、履修しました。リカレントというのは「学び直し」という意味で、参加者は僕と同じような年代の方々が中心で、仕事もリタイアし、子供達も家庭を持ち、ようやく自分の時間ができました、というような人が多かったと思います。
そんな中で、履修したのが「社会を読み解く」という授業です。科目の副題が「クリティカルシンキング」、つまり「あたりまえを疑う・見なおす」という興味あるテーマでした。
いま身の回りで起こっている事柄について、参加者が一緒に話し合い考えてゆく、という授業スタイルで一番好きな課目でした。
そして最後に出された課題が「いま疑問に思うことについて自由にまとめ、皆んなの前で発表する」、というものでした。
4人ほどでグループを作り、各チームでテーマ設定して、まとめることになりました。
僕が参加したグループでは、課題を進めやすいようにリーダーを決めることにし、僕が手をあげました。以前から疑問に思うテーマがあったからです。それが「選挙掲示板は本当に必要なの?」、です。
そして発表会の結果、僕たちのチームは最優秀賞をとることになります。

僕がこのテーマを取り上げた理由は、「選挙の時期になると掲示板が設置されるけど、立ち止まって見ている人、ほとんど見たことないけど〜これって、けっこう費用かかってるのとちがうん?」という単純な疑問でした。
そこでまず僕はこの課題を進めるにあたって、過去の経験からマーケティングの手法を使うことにしました。それは「フィールドワーク」、つまり現地調査・聞き取り調査です。選挙掲示板はどんなところに、どれくらい設置されているのか、見ている人はどれくらいいるのか、費用はどれくらい掛かっているのかなど、メンバーと作業分担しながら、調べることにしました。
2.「選挙掲示板」の調査内容
① 始まった時期とその理由
まず、この選挙掲示板が設置され始めたのいつ、何のためだったのか、という そもそも論 から調べました。
実は今の掲示板スタイルは、1952年に公職選挙法が改正されたことで導入。
それ以前は、候補者ごとに好きな場所へ貼っていたため、同じ電柱や塀にポスターが重なって貼られたり、公園のベンチにまでベタベタ貼られ、剥がし合いのトラブルが起きたりと、混乱が絶えなかったのです。
つまり候補者間で不公平が常態化していたわけです。
この問題を解決するために登場したのが、「候補者に等しく割り当てられた掲示板制度」でした。
以後、選挙管理委員会が掲示場を設置し、候補者ごとに番号付きの枠を与える方式が全国に広がりました。
② とり仕切る役所・ 組織・ 法律
大もとじめは「総務省」です。その管轄下、運営は各地方自治体の「選挙管理委員会」が担います。
法律としては「公職選挙法」がその中核で、選挙ポスターについても、こと細かく定められています。
そして、立候補者が選挙運動する上で必要な費用を誰が負担するのかを明確にしたのが、総務省が定める「選挙公営制度」です。
ちなみに「選挙掲示板」の設置費用は、衆参議員選挙・都道府県知事選挙とも「公営」つまり公費(税金)で負担します。
設置場所・設置数については、公職選挙法に基づいて各都道府県の選挙管理委員会が決めています。
③ 設置数と費用
今回のような国政選挙の場合、全国での設置数は概ね30万ヶ所以上と言われています。
その費用につては詳細なデータはありませんでしたが、少し古い毎日新聞の記事(2022年6月26日)には以下のような記述があります・・・
「国によると今回の参院選では掲示場の設置で約47億6000万円、ポスターの作製で約4億7000万円がかかると見込まれている。合わせて約52億3000万円となる」
一回国政選挙を行うと、掲示板設置関連だけで50億円以上の公費(税金)が使われるのは間違いなさそう、ということが判りました。
④ 設置場所と実態
もちろん掲示板設置によって、国民にその費用対効果が還元されているのなら良いのですが・・・
ということで、狭いエリアではありますが、実際に掲示場を数十ヶ所手分けして調べることに。そのときの写真の一部です・・・

(僕も何度かウリ坊たちの親子連れを見かけました)そんな場所にも設置


朝の授業が始まる前、学生たちがたくさん歩いていましたが、
掲示板のポスターを見た学生はゼロでした。
一人だけ掲示板の前で立ち止まりましたが、靴ひもを直していました。

その人たちも掲示板を無視して行きすぎました
(昼間に)調べた神戸市内の数十ヶ所では残念ながら、立ち止まって掲示板を見た人は、確認できませんでした。
もちろん、さらに人が多い繁華街などでは様子が違うかもしれません。
これらは、数人でやった調査です。
でも、少なくとも上記写真のような場所に置くのはやめて、注目度の高いところに移転するとか、設置をやめるとか、見直した方が良いのでは?
と言うか、そもそも僕たちチームがやったような調査や効果測定を、お役所(選挙管理委員会や総務省)はやっているのだろうか?
と、疑問はさらに深まり・・・
⑤ 総務省、選挙管理委員会への聞き込み(電話)調査
ならば直接聞いた方が早いということで、電話をかけて聞いてみました。
総務省の担当部局<自治行政局選挙部>だったと思いますが・・・
「我々のところは基本的に各都道府県の選挙管理員会が公職選挙法に則って運営されているかの管理監督なので、現地調査はやっておらず効果測定もやっておりません。詳しくは選挙管理委員会にお尋ねください」、と言われました(想定内)。
その選挙管理委員会にも電話しました。
僕たちが行った調査結果や写真のような実態を話した上で、いろいろ聞いてみました。
親切に受け答えしてくれたのですが、要約しますと・・・
「設置数と設置場所については我々が決定しています。ただし独断で決めるのではなく、公職選挙法と施行令に基づいて、投票区ごとの有権者数や面積を基準にして定めています」「原則として市民の方々の見やすい場所にしています」とも。
また設置場所の「現地の実態調査はやっていません」との回答でした。
設置数や設置場所の検討や見直しは?
「基本的に過去の設置場所を継続しています。ただ、設置場所の所有者の方や市民の方からここに置くのはやめて欲しい、といったクレームや要望には極力応えるようにしています」と。
つまり、法律や規定に則ってきちんと設置数・設置場所その他諸々を決めて、管理運営している。実態調査はしておらず、一部の問題ヶ所を除いて、過去のリストを使って設置している、というのが実態でした。
3.調査の結果わかったこと
前例踏襲
お役所の方々は、一生懸命国民・市民のために働かれていることは承知しています。
が、これはあくまで僕個人の感想ですが、現地調査や聞き込み調査をした限りにおいて、そしてこの選挙掲示板の設置に限って言えば、よく言われる「お役所の前例踏襲主義」が “丸っと” 当てはまる気がします。
前例踏襲が全て悪いとは思いませんが、少なくとも実態調査や費用対効果測定をやって(結果を市民に公開した)うえで、前例踏襲していただきたいなと思いました。
そして、選挙掲示板設置についてたまたま調べた結果わかった、お役所の前例踏襲型のお仕事というのは、いわば氷山の一角であり、氷山の下にも同様の事柄が多くあって、更にその氷山もたくさんあるのでは?という疑念がふつふつと湧いてきました。
その根っこにあるのは僕らの「血税」ですから、深刻でリアルな話しです。

一方で、今回の調査でわかったのは、昔に比べればお役所も格段に市民にオープンで、問い合わせればきちんと回答してくれ、ホームページも充実させていて、市民の声を拾い上げる仕組みもしっかりと作ろうとしているという事実でした。
僕たち市民も、この選挙掲示板の案件に限らず、気づいたことや疑問に思うこと、改善して欲しいと思うことは、黙ってないでこのようなツールを使って、声を上げるてみることが大切かな、と思いました。
4.結論
「選挙公報」の到着早め、デジタル化を進めれば「選挙掲示板」の設置は不要。選挙ごとの税金50億円も節約できる。
① 掲示板設置の中止、もしくは見直しが必要
僕たちの限られた調査だけでも、明らかに費用対効果の薄い(もしくは全く期待できない)設置場所が多くあった事実は、公的機関(選挙管理委員会)による実態調査が必要であることを示しています。
そのうえで、掲示板設置の中止もしくは見直しが必要と考えました。
② 「選挙公報」 発行の前倒しと、ネット活用
選挙掲示板をなくす、もしくは設置数と設置場所を見直すうえで重要になってくるのが、「選挙公報」の存在です。選挙前になると自宅に届く候補者情報の新聞のような用紙です。

そもそも、選挙掲示板の存在理由は、候補者の名前や顔、所属政党などプロフィールを市民に公平に告知する、ことかと思います。
一方で、「選挙公報」には「選挙ポスター」とは比べものにならない(政策や政治信条など含む)詳細な情報が掲載されています。
ただ選挙掲示板は、衆・参議院選挙の場合、公示日から設置されますが、選挙公報は公職選挙法で「投票期日の2日前までに配布する」とされていて、期日前投票に行く場合、選挙公報が間に合わないケースがあります。
法律を変える必要がありますが、「選挙公報」到着を前倒しして、このような期日前投票に間に合わないケースを極力減らす努力が必要かと思います。
このような課題問題を考えるとき、ここでも「紙」に頼る日本の実態が透けて見えます。
そんな中でも、僕が住む神戸市では2年くらい前から「選挙公報のデジタル化」が進み「県選挙管理委員会のホームページ」で選挙公報を見ることができます。
今回の衆議院選挙では、選挙管理委員会のホームページで、下の写真のとおり公示日の翌日1月28日の夜には「選挙公報」がアップされました。
紙の「選挙公報」はおそらく、2月5日くらいに届くと思われます。
選挙掲示板設置に遅れること1日で選挙公報を見ることができたわけです。
これでも、毎回50億円以上の税金を使って「選挙掲示板」を設置する必要があるのでしょうか?

小選挙区・比例代表とも「選挙公報」がアップされています
5.世界では
僕たちチームが調べた結果わかったのは、日本のような掲示板や選挙カー、スピーカーから流れる候補者名の連呼、といった選挙スタイルは、世界では非常に珍しいという実態でした。
もちろん選挙制度が違うことが大きな要因ですが、例えばアメリカでは、市民と候補者の会話(質疑応答)が重視され、自宅への戸別訪問が許されています。また、ノルウェーやフィンランドでは、街頭に候補者たちが屋台のような小屋を作って、市民とコーヒーを飲みながら議論できるようになっています。やはりここでも候補者と市民の会話が大切にされています。
日本では現状、難しいとは思いますが、彼らの思想とか考え方、方向性には学ぶべきことがあるように思います。
日本も選挙制度そのものを、立候補者目線ではなく、市民サイドに立った(候補者の考え方や政策をより理解できる)仕組みに変える議論をすべき時がきているのではないかと、強く思いました。

最後までご覧いただき有難うございました!

