石【掌編小説】

地面が動いていることにも気づかずに、夢中で石拾いをしていました。
深い青のまん丸の石。
紫色の四角い石。
赤みを帯びた楕円の石。
深い緑の三角形が連なったような石。
もうすぐクリスマスなので、ツリーに飾ろうと思っていました。
でもそれは叶いませんでした。
いつの間にか地面が動いていて、気がついたときには、知らない人の家にいたからです。
そして拾った石もなくしてしまったようで、見つかりません。
その家の人たちは、みんな同じような服を着ていました。
君もここの一員だと言って、わたしにも同じ服をくれました。
わたしは歓迎されたのです。そう感じました。
自分の家への帰り方もわからないので、しばらくはここでお世話になろうと決めました。
この家の人たちは貧しいのか、家具などあまりありませんでした。
でも一日に3回、美味しいごはんをごちそうしてくれます。
そして今日はデザートにケーキが出ました。
わたしは少し変わっているらしく、今まで友だちがいませんでした。いつも一人でした。
でもここに来てからは、みんなとソフトボールをして遊んだり、散歩に行ったり、お仕事のお手伝いもさせてもらえるようになりました。
家の中に居るときは、部屋で本を読んだり、こうやって日記を書いたりして過ごしています。
でもときどき自分の家が恋しくなります。
帰り方を知っている人がいるかもしれないと思い、みんなに聞いて回りましたが、全員が、それはまだ無理だと言いました。
わたしは悲しくなりました。
一人落ち込んでいたら、みんなが慰めてくれました。
「AI 2O3さん、いつかは帰れますよ」
この家の人たちは、わたしのことを「AI 2O3さん」呼びます。
素敵な響きなので、これまで気にしていませんでしたが、どうして名前で呼んでもらえないのか理由を尋ねてみました。
すると、ここではショウコバンゴウで呼ばれるのが一般的だと言いました。
そしてこの家は、ケイムショというところだと教えてくれました。
よくわかりませんでしたが、キレイな石を拾うと罪になるそうです。
わたしが拾った石は、ホウセキという名前がついていて、それはお金を出して買わなければならないそうです。
知りませんでした。
地面が動いた話をしましたら、それはきっとクルマという乗り物で移動したときの記憶ではないか、と言われました。
わたしはきらきらとしたキレイな石が好きです。
それは罪なのでしょうか。
家に帰れないならせめて、キレイな石をまた拾いにいきたいとお願いしましたが、まだ懲りないのか、と今度は叱られてしまいました。
わたしはますます悲しくなり、大声で泣きながら何度もお願いしたように思います。
そのときまた地面が動きました。
気がついたら今度は狭い部屋の中に独りぼっちでした。
寒い夜でした。
部屋の上の方に小さな窓がありました。
そこからキレイな星空が見えたのです。
わたしは両手で三角形を作り、一番大きくて一番輝いている星の下に手を合わせました。
クリスマスツリーのようです。
わたしはきらきらとしたキレイな石の次に、この輝く星たちが好きになりました。
いつかこの星を拾いに行けますように。
メリークリスマス。
2020年12月25日 AI 2O3 / サフィルス
©️2020 ume15
お読みくださりありがとうございます。
AI 2O3は酸化アルミニウムの化学式、サフィルスはラテン語で「青」の意、です。
メリークリスマス 2021🎄
Instagram:@15ume15
