命の扉
「扉を担ってくれ。」
そう言われてから、私は扉としての役割を担っている。
それから随分時間が経つが、未だにこの役割に慣れないでいる。
毎日毎日、365日欠かさず人が訪れる。
高齢者が多い。
私をノックして、私を通すか、引き返させるかを決断するのが私の役割だ。
扉を開けるか、閉めたままにするかの判断が私の役割である。
訪れた者がノックする時、残されたものの表情が浮かぶ。
私にも心がある。
だからこそ、本当は、ずっと扉は閉めていたい。
けれどもそうはいかないのだ。
こちら側からあちら側への流れを止めてしまうと、あちら側からこちら側へ、命の逆流をしてしまうことがある。
要するに、地獄と天国と現世が混在してしまう。
そうなってしまうと、秩序も何にもなくなってしまう。
だから私はこの役割を全うする必要がある。
しかし、毎日心が痛む。
残された者の顔が浮かばなければ、もっと楽だというのに。
おかげで、この役割を担ったあの日から、命の重さを忘れられないでいる。
ー数千年後ー
それから随分と時間が経ち、地球が爆発した。
私は否応なく扉を開きっぱなしにされた。
こちら側から、あちら側へ、ものすごい量の命が流れていく。
私の許容量もすぐに超えた。
薄れゆく意識の中、あちら側に広がる世界の声が聞こえる。
そこには、天国とか地獄とか現世とか関係なく、再会の喜びで溢れた、新しい世界が広がっていた。
fin
こちらのお題で書きました!【扉】
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