小説:フルマラソンを5時間で走る約束をしてしまった(18) 最終章
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エピローグ
5月になり、僕は相変わらずヤワタビニルの本社勤務で、玲子さんは大阪支社のままだ。遠距離恋愛はしばらく続くが、それももう少しだ。結婚を機に9月から玲子さんは東京本社に戻ってくる。きっと支社長に顔をぐいと近づけて「なんとかなりませんかー?」と可愛く迫ったに違いない。
「明弘、8月の結婚式、俺も呼ぶよね。」
味噌ラーメンの最後のスープを飲み干すと、徹也が言った。
「お前、あんだけ邪魔しといて、結婚式でるってか。」
「友達じゃん。」
「でも、玲子さんが何て言うかなあ。」
「じゃあ決まり。もう許可とってある。」
「うわー、いつの間に···。」
「ショッカー3人とも出席ね。あー楽しみ。」
「式ぶち壊す気?」
「ショッカーの衣装は持ってくよ。玲子さんも『望むところだ。』って言ってたし。」
「また叩きのめされろ!言っとくけど、天狗とウクレレも出席予定だ。」
「ああ、あの二人、いいキャラしてたよねえ···友達になってもらおっと。」
「勝手にしろ。」
「でもな明弘、ワルモノってな、意外とハマるぞ。」そう言って、徹也は最後の餃子に箸を伸ばした。はいはい、お前は爽やかに悪役もこなせる素晴らしい人材だよ。
「ただいまー。」
「お帰りいーっ!明弘くん、今日は走る?僕たちと遊ぶ?」今日もミクラスは饒舌だ。
「うーん、どうしようかなあ。今日は走ろうかな。」
「だよね。最近走ってないもんね。今のままじゃあ玲子さんに追いつかないよ。」
「追いつくのは一生無理だと思う。」
「でも、この部屋もあと3ヶ月だね。」ウインダムがぼそっと言った。
「そうだね、みんなは楽しみ?」
「僕たちあんまり外出しないし、どこでも問題ないよ。でも僕たち専用の部屋は欲しいな。」
そうだそうだ、部屋は必要だ。会議室と応接室も要求しようと、あちこちから声が飛ぶ。
「わかってる。今度は6畳だから、少し広くなるよ。」
「窓の位置は?僕たち直射日光苦手だよ、色褪せてくるから。」突然ジャミラが真面目に言った。おいおい、お前は日光が大好きな怪獣だろうが。でも彼の言う事も一理ある。
「おー、そこはチェックしてなかった。今度確認するよ。カーテンもつけるね。」
「新しい友達、もっと作ってね。今度は僕たちサイズのやつね。」ベル星人が喋り出す。
僕の机には、ガンダム玲子さんとショッカーのフィギアがある。あの時の画像からデータを起こして3Dプリンターで形成し、細かな修正をを加えて着色したものだ。ポーズを決める玲子さんとうろたえる徹也、そして倒れこんだ1号。我ながら素晴らしい出来栄えだ。だけど怪獣たちにはちょっと評判がよくないのだ。玲子さんガンダムをジオラマに置くと、縮尺が違うから怪獣の世界観が崩れてしまうのだ。だから玲子さんは机上に置いて怪獣はジオラマの上と、棲み分けている。
そうそう、玲子さんがかば子だってことがどうしても信じられなかった僕は、その後友達に手配してもらい1年3組の入学写真を見ることになる。そこには、明らかに周りとレベルの違う可愛らしい女の子がにーっと笑っていて、それは間違いなく玲子さんのミニチュアだ。まさに奇跡のようなかわい子ちゃんは「かば子」とあだ名がついたために「かば子」になり、僕たちは「かば子」だから可愛いはずがないと錯覚していたとしか思われない。小学生の思考システムもまた、怪獣より謎だ。1年3組の写真に衝撃を受けた僕は、試しにセブンに「カバトラセブン」と命名し、しばらくそう呼んで遊んでみたもののどう見てもそれはカバには見えず、しまいにセブンが泣き出し怪獣たちからクレームが来たのでやめた。
部屋の鍵をかけて、駅前商店街に向かって走り出す。走り出した頃は改装中だった荒川スポーツセンターも、今は完成して灯りがついている。街のあちこちに「オリンピック·パラリンピック」のポスターが並んでいて、もうすぐ世界から多くの選手や観客がやってくる。そして僕は千住の町ともお別れだ。新居は川崎なのでここに来ることも少なくなるだろう。でも僕はこれからも「千住歓走会」のメンバーだ。できるだけ土曜日には汐入公園で走ろう。たまにはみどりさんのところで飲んで行こう。ジャンボパンも買いに来よう。
狭い商店街を抜けて南千住駅に着くと、駅の向こうにスカイツリーが見える。汐入公園で何度も目にしたはずのスカイツリーがなぜか今日はピンクに光って特別に美しく、僕は画像を玲子さんに送信した。
(おわり)
えっ? あなた 最後まで読んじゃったんですか?
こんなバカバカしいお話を?
ごめんなさい
ちょっと時間の無駄遣いしちゃいましたね
でも 人生ハズレを引くことも多々あります
めげずに笑い飛ばして 次 行きましょ
(書いてるお前がいちばん時間を無駄遣いしてるだろ)
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