⚪️掌編小説|鬼狩り
昨日から女の様子がおかしい。おそらく今夜だろう。
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人里離れた山間の一軒家だ。わざわざ訪ねる者などまずいない。だがこの冬はやけに多い。
年が明けて間もない月のない夜だった。旅装束の女がひとり家の門を叩いた。道に迷ったので一晩の宿を借りたいと言う。
その夜、女を抱いた。
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四つん這いになったまま身動きも取れず大きく背中で息をする女の肉がぶるぶると揺れる。薄く色づいた尻を鷲掴みにすれば獣のような吠え声をあげ、骨が軋むほど腰を打ちつけてやれば歓喜の涙を流す。際限を知らぬ女だ。
女の汗は白檀の香りがした。
二年続きの不作が元で、京では餓死者が後を絶ちません。どの家でも食い扶持を減らすため幼子は鬼に食わせております。わたくしのふたつになる子も鬼に喰われ、生き甲斐を無くしましたものですから郷里へ逃げ帰るところでございます。
またこの辺りは道に迷って行方知れずとなる者も多いと聞きます。ゆえにこうして情けを頂戴しました。誠にありがたいことでございます。
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女はそのまま居付いてしまった。
郷里に待つ者はおらんのか。老いた両親がおります。姉妹はおるか。姉がおりましたが昨年亡くなりました。そうか。
ともあれ良く働く女だった。飯を炊き風呂を沸かし、自生している芋を掘ってきたかと思えば、木の実や果実を採ってきて食卓に添えた。
昼の間は穏やかそうに見えた。だが夜にはひとりで泣くこともあった。どうしたのかと問えば、亡くした子を思うとお乳が張って痛いのですと言う。
乳房を掴んで乳頭をしごいてやると白い汁がぴゅうと噴いた。戯れにそれを舐めてやった。
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おれには左肩から右の横腹にかけて肉の抉れた深い傷がある。女は毎晩のようにおれの体を欲するが何よりその傷を愛したようだ。いつまでも飽くことなくその傷をぺろぺろと舐めた。
おまえに良く似た女を抱いたことがある。
さようですか。
女がおれの胸を噛んだ。おれは女の髪を掴んでのけ反らせ、笑いながら口づけをした。
舌は血の味がした。
思えば思うほど、あの女はおまえの姉のようだ。抱き飽きたので殺したのだ。
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女はいつもと変わりなかった。少なくとも表面上はそう見えた。いつもと同じ朝。いつもと同じ飯。おれは作業場に行き鉄を打ち、汗を流し、風呂に入った。そして精が尽きるまで女を抱いた。
赤い月が東の空から昇り始めるとおれの手足が痺れ始めた。身の丈六尺の女がおれを見下ろしている。さあ、いよいよだ。
おれは腹に飲み込んだ妖刀を吐き出して女の首を刎ねた。
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首は叫びながら鞠のように跳ねまわり、頭部を欠いた身体は狂ったように暴れた。噴き出した血飛沫はすべて妖刀が吸い尽くした。
おれは暴れる女の手首を縛り最後にもう一度犯した。このとき痺れが全身に及んだ。
女の首がゲラゲラと笑う。
赤い月と女の首がおれを見て笑っている。
(おわり)
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