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一冊!宣言 第二回 もう、誰かのせいにしない

もう、誰かのせいにしない

株式会社一冊 代表・三島邦弘

もっとも注力しなければいけない仕事に十分なエネルギーと時間を傾けることなしに、書店業も出版業も成り立つことはない。
ところが、出版業界では長年、自分たちの生業の土台を外部化しており、それが当たり前だったように思えます。外部化というのは、主体が自分たち(書店、出版社)にないことを意味します。

一冊!宣言|一冊!取引所 公式note 
https://note.com/1satsu_torihiki/n/n0560d16939f2

前回、このように書きました。
つまりここで言う外部化は、「主体の放棄」と言い換えられます。
書店、出版社、それぞれの本業において、本来、絶対に手放してはいけない仕事の一部を外部に委ねてしまっている。
そうした事態が長年、放置されつづけたように感じてなりません。

具体的にどういうことか?

たとえば、私は19年間、出版社を運営してきたなかで、何度も町の本屋がたちゆかなくなる場面にたちあってきました。そして、次のような言葉を耳にしてきました。
「取次がもうちょっと守ってくれたら・・・」
「マージンをよくしてくれと幾度となく頼んだが、取次は変わらなかった」
あるいは、出版社の方からは、
「取次の仕入れがきつくなってね。全然、仕入れてもらえない。初版の部数を大幅に減らさざるをえない。そしたら原価率がきつくなるしね」。

自分たちの本業が自分たちの意のままにならない。
書店、出版社いずれにおいても、自分たちの努力ではどうにもならない事態が起こっている。
自分たちの努力、つまり、営業努力の結果たちゆかないのであれば、納得がいく。
けれど、営業努力のしようがないところで、自分たちの仕事の成否が決まる。すくなくとも、廃業や初版部数の決定といった重大事を、自らの責任下で決することができない。
これは一大事ではないか。
私は、長年そのように感じてきました。
これが、先ほど「書店、出版社、それぞれの本業において、本来、絶対に手放してはいけない仕事の一部を外部に委ねてしまっている」と指摘したひとつの例です。もちろん、一例にすぎませんが。

念のため補記します。
私は、けっして取次を否定したいわけではありません。
むしろ逆です。
現在の出版界において、取次はなくては困ります。健全に機能してもらわないと、たいへん困る。
だからこそ、書店、出版社の取次依存体質を変えないといけないと考えます。
言い方を変えれば、取次にあまりにも多くの役割をもたせすぎてきた。取次側から言うと、もちすぎてきた。
好循環のときはそれでもよかったわけです。が、返品率40%が常態化(約30年・・・)してからは、三者の関係性は、取次にとっては負担、重みに。書店、出版社は「外部化」「主体の放棄」状態になっていた。
とはいえ、凄まじく大きな組織です。すぐに変わるのは容易ではない。
であれば、現状、「重荷」になっている部分を、すこしでも別のインフラがすくいあげる必要がある。
一冊!取引所は、取次が担いすぎてきた仕事の一部を、現代の感覚にアップデートしたかたちですくいあげる役割をめざしています。

それによって、書店、出版社の本業が健全となる。その一助になればと願いつづけています。

では、本業が健全となるとはどういうことか?
その一歩目は、これに尽きると考えています。
「うまくいかなかったことを、誰かのせいにしない」

仕事の主体が自分たちにあれば、他者のせいにすることはありません。
うまくいったことは自分たちの努力のみならず周りの協力の賜物です。が、うまくいかなかったことまで「外部化」するのは健全とは言いがたい。
その健全とは言いがたい状態が、これまでだったと言えます。
言葉を変えれば、分業と外部化はちがう。そういうことでしょう。
書店、取次、出版社、それぞれの専門を活かしあい、それぞれの本業が最大効率でまわり、最大の成果が生まれる。分業体制の理想はこうだと思います。
ところが、実際には、本業の一部を分業先に「外部化」してしまう事態が起き、主体を失ってしまっている。

その状態から脱却する。
一冊!取引所は、そうした意思をもってたちあげたのは確かです。
それは、直取引による出版社運営をしてきたなかで、実践してきた実感にもとづきます。
あえて数字をあげてみます。
業界全体の数字は、過去30年で売上を60%落としています。
私が代表を務めるミシマ社のばあい、12、3年前と現在を比較すると、約二倍の売上を達成できました。出版点数を倍にしたわけではなく。
その要因はいくつもありますが、大きなものとして次のふたつが挙げられます。

1) 書店と直取引による営業をおこなってきたこと
2) この間、取次と口座をもたない書店が年、数百の勢いたちあがっており、(「書店激減」のニュースとは逆に)卸先がどんどん増えていること

業界全体が先に指摘した「健全さを失う」なか、直取引による手応えは確かなものとして感じてきました。
それは、業界全体が構造による問題で健全さを失っているものの、書店、出版社の「現場」は健全に機能している。その証左と言えます。
並行して、「現場」しかないような書店がどんどん増えています。前回も書いたように、一冊!取引書に参加する書店1,900のうち、約半数の900が取次と口座をもたない小売店です。

「共有地」を掲げる一冊!取引所で現在、私が代表を務めているのは、ミシマ社で得た知見やノウハウを広く使ってもらい、出版界の健全化のため、ささやかな一助になればという思いがあるからです。
(ですので、それがひと通り実現すれば、私自身は、この取り組みを別の方にバトンを託したく思っています)

現場は健全に機能している。
再生の鍵は、現場にしかない。
業界のなかで、もっとも活力のあるところから再生の緒(いとぐち)を探るのは、当然の理。

こうした捉え方が、一冊!取引所を運営する土台となっています。

では、現場とは何か? 現場では何が起きているか?
次回は、そのことについて書きたく思います。



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