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三宅香帆は「批評界のB'z」である。(ゲンロン『いま批評は存在できるのか』の感想)

『いま批評は存在できるのか』の感想。

「三宅香帆の仕事は批評なのか否か」的な論争、B'zはロックか否か、みたいな話って考えていい?

この本は、ゲンロン主催の座談会の書き起こしを核にしている。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で新書大賞を受賞した三宅香帆さん、『批評の歩き方』の編者である松田樹さん、その執筆者の1人である森田透青さんという、93年~95年生まれの若手批評家3人が登壇したイベントである。

三宅さんの登壇後記。

「『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は将来残らない本だと思いますよ」
なんて、こんな失礼なことを他人に言われたのは批評のイベントだけである。

『いま批評は存在できるのか』

うん。失礼だな。一応、座談会からその部分を引用する。

三宅 (中略)ビジネスマンこそが「いま自分たちはなにをしているのか」を言語化してくれるものとして批評の言葉を必要としている。そんなひとたちに届く批評を、わたしは書きたいと考えています。

森脇  おっしゃることはとてもよくわかります。ただ、すこし辛辣な言い方をすると、ぼくは三宅さんの著作のなかで 50 年後も読まれている本は正直そんなに多くないと思っています。

『いま批評は存在できるのか』

森脇さんいわく「自分の文章が未来につながっていくための最低条件として、なにかの問題提起が必要」で「『なぜ働』はたしかに同時代の読者にはとてもよく読まれているけれど、問題提起とその解決自体はどこかあたりまえのことでしかなく、弱い」ので、未来では「批評ではなく資料として読まれる」にとどまる、のだそうだ。

松田さんもおおむね同調して、「三宅さんがせっかく鋭い指摘をしても、読者はそれに納得させられたり共感したりするだけで終わってしまい、言及される作品が持つ複雑さや別の書き手が有する問題関心のほうに向かない」と指摘し、「即効性の薬のよう」と言っている。

ざっくり言うと、2人とも、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は批評ではない、と言っている。

言いたいことはわからんでもないが、個人的には同意しかねた。というか、悪手すぎる。

B'zのたとえ話に戻る。

もちろん「B'zをロックとは認めない」という意見はあっていいんだよ。でも、それが「普遍的な基準」かのような語り口になってはいけない。そんなことしたら誰もついてこない。男子2人はそのへんが無警戒すぎた。

それに対して、批評界の「覇王になる」と宣言した三宅さんの潔さばかりが際立った。

三宅香帆さんは批評界のB'zです。いまB'zはロックじゃないとか言い出すヤツがいたら誰も相手にしないように、三宅香帆の仕事は批評じゃないなんて発言はダサくてできなくなる時代がすぐ来ますよ。

いや、あくまで批評の話をしてるんだから、別のたとえも考えてみよう。

たとえば松田さん森脇さんは『ミュージックマガジン』で、三宅香帆さんは『関ジャム』、とでも言ったほうがしっくりくるか?

『関ジャム』はバラエティ番組だから批評じゃない、なんてことはない。同じように、ビジネス書であり批評でもある、という本は存在しうるはず。文体ってそんなに重要?

一読して、小説には純文学と大衆文学という棲み分けが(一応は)あるように、批評も「純批評」と「大衆批評」に分けたら? ってちょっと思ったよ。そこに単純な優劣はないわけだから。

純文学も、綿矢りさ・金原ひとみ以後、ギョーカイとしてはパッとしなかったように思う。でも10年代半ばから『火花』や『コンビニ人間』など芥川賞受賞作のベストセラー化は珍しくなくなった。「純批評」的なものも再び芽吹く可能性はあるんじゃないか。

大森望さん、豊崎由美さんの『文学賞メッタ斬り』じゃないが、やっぱり業界ゴシップ的な話は面白い。批評業界ゴシップを楽しむだけじゃなくて、ちゃんと批評そのものを読もう。『批評の歩き方』と『娘が母を殺すには?』、読もうと思います。

B'zが「圧倒的なセールスを誇っているのにギョーカイからなぜか認められていない存在」の例として持ち出されていることにピンとこない人はこれ読んでね。

あとこれも。B'zがハードロックを「ラーメン化」したように、いかなるジャンルでも、批判を浴びながらも大衆に向き合う人たちを私はリスペクトしたい。

というわけで、三宅さんのスタンスは全面支持したい。

ただ、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』に関しては、「批評か否か」とかいう論点とは別に、ツッコミどころがいろいろあると思っている。それに、「労働のために読書が必要な時代はもうやってこない」と結論付けて過剰に絶望してるところなんか、悪い意味で批評家っぽかった。

森脇さんも松田さんも、批判するならもっとほかに言うことあるだろと思ってしまったよ。

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