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一皮向けた、あのクレーム対応

家電量販店で働いていた頃の話だ。
僕は24歳か25歳で、マネージャーに抜擢された直後だった。

店長から逃げ場が無い環境に置かれ、部下や業務委託の店員が起こす問題をすべて請け負っていた。
マネージャーとして売上の管理も行う。
家電量販店に存在する仕事のほとんどを担当しているかのごとく、毎日が本当に大変だった。

でも、なぜだろう?嫌じゃなかった。

僕の後ろには店長がいる。
僕でどうにもできない時は店長がいる。
だから思いっきりやるだけだ!そんな勢いのみで毎日の出来事に向き合っていた。

イカツイおっさんがキレ散らかしていた

ある日、イカツイ風貌のおっさんが、店員の女性と業務委託の男性に大声で切れ散らかしていた。
内容としては、携帯電話か光回線だかで、お客様の手元にすべてが揃う日時がはっきりしないというもの。
まぁ他の会社内でも処理があるので、その会社次第なところはあるような話だ。

接客態度などは見ていないのでわからないが、処理内容自体に時に落ち度は無い。
でもキレ散らかしている。

そこに無線が入る。
「T-Penさんお願いします。」

まぁくるだろうなーっと思っていたが、やはり来た。

まずは、責任者として顔を出し、状況を把握し、お客様の要望と、何にキレているのかを理解することに務めた。

ただ、僕は大声が本当に苦手だ。
いつもより思考が鈍る。
ただ、大声にビビっている姿を見せるわけにはいかない。
心をグッと強く持ち、終始笑顔を作る。

結局、お客様は「何月何日の何時に開通するのか?」が知りたい。
店舗側としては、他社も絡む話なので、はっきりとした日時なんて約束できない。〇〇頃とかしか言えない。

このギャップが平行線で、お客様も譲らない。
僕らに出来ることなんてない。

1時間くらい経っただろうか。
お客様が「この時間どうしてくれるんだ!?」っと方向が変わってきた。

僕は、店舗ではどうにもできないことは説明した上で、僕が他社に電話をかけまくってPushし続けるという提案をした。
正直、そんなことしても何も変わらない。
ただ、お客様の味方として動きますよっと伝わる何かしらの行動が必要だった。

そしたらお客様の空気が変わる。

「毎朝、◯時にどうなったか報告しろ!」
「開通するまで毎日だ!」
っと言い出した。

僕は笑顔で了解し、よくわからない対応が始まった。

開通はうまくいけば2日後には出来る。
つまり、運が良ければ明日の朝と明後日の朝でこの対応は終わる。

夜も眠れなかった

お客様が帰ったあと、現状を店長に報告し、僕は早速他社に電話をかけた。まぁどんなに説明しても、特別対応などしてくれるはずがない。
いや、むしろ特別対応などしてはいけない。
それは頭では理解している。
でも、僕は解放されたかった。
頼み込む。
他社の回答は変わらない。

何も進まないという事実を受け取り、翌朝の報告に対してポジティブな情報が無いまま、ただただ電話をかける時間を待つしかなかった。

正直、夜も眠れない。
遅刻もできない。
数々のプレッシャーが僕を包んでいた。

翌朝、僕は遅刻することなく電話をかける時間に店舗にいた。
電話をかける。
朝からお客様は電話口でキレ散らかしてくる。
僕は謝るしかない。
今日も他社に電話はする。
本気でどうにかしようと伝える。
でも、きっと何も変わらないだろう。
そんな気持ちで罵倒を受けながら電話を切る。

そんな僕を見て店長が「どうした?」っと聞いてきた。

僕はハッキリとは言わないが、店長変わって欲しいというようなニュアンスの弱音を吐いた。

店長の表情は変わらず僕にこう言った。

「オレが変わっていいのか?」

その時、僕の中で何かが揺れた

この人を出したら僕はもう戦えなくなるかもしれない。
まだ戦える。

僕は店長に
「いえ、弱気になりましたが、僕がやります。」
そう伝えて、他社への電話を開始した。

特に状況は変わらない。でも、電話をかける。

合間に別のお客様の製品の初期不良のクレームが入る。
それも対応する。
そして、また他社に電話をかける。

結果、何も変わらず、翌朝の2回目の電話をかけることとなる。

胸張って電話かけてみろや

翌朝、電話の前に行った時、また店長が話しかけてきた。

「びびってんの?」
「おまえは今できることを精一杯やったんじゃねーの?」
「胸張って電話かけてみろや!」

まぁこの店長も声でかいし、強面だし、よくよく考えたら僕は毎日この人と話している。

僕は笑顔で
「うっす!」
っと言って電話をかけた。

お客様が電話に出る。
僕の中で緊張が走る。

しかし、2回目の内容は拍子抜けだった。

電話口でお客様が
「つながったよーーいやー兄ちゃんありがとうな!!」
「これからも兄ちゃんに色々頼るわ!!」
「ありがとうなー」
ガチャ。

なんか上機嫌だった。
正直、もう来ないでくれとは思ったが、これで僕のクレーム対応が一つ終わった。

僕は店長に
「終わりました!」
っとハイタッチの構え!

店長も笑いながらハイタッチ!
「頑張ったな!」
「で、この売り場の売上今月大丈夫か?」
っともう次の話に。

僕は、このクレーム対応で、一皮向けたというか、逃げなかったっという大きな経験をすることができた。

ちなみに、このお客様は、乾電池を買う時ですら僕を呼ぶようになった。
そして、その後はもう売り場でキレ散らかすことはなかった。
相変わらず声はデカかったけど。

僕の知らないところで

この物語には後日談がある。

僕が他社に必死になって電話している時、どうやら僕の知らないところで店長も他社のちょっとえらいひとに電話をかけてくれていたらしい。

もちろん、店長が言ったからと言って、他社の対応が変わるわけではないと思うが、僕と一緒に知らないところで戦ってくれていた。

僕は、芯のある、尊敬すべき大人に、出会い、厳しく育ててもらえたことが振り返ると多い。
この店長もそんな大人の一人だ。

今後も素敵な人に背中を押してもらうこともあるだろう。
その中で、僕自身もそんな大人になって、僕が誰かの背中を押していこうと思う。


ちなみに、この店長との出会いは過去記事に書いています。


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