「何かあったら連絡ください」が伝わらない理由〜具体例でわかった、“伝わる伝え方”のコツ〜
在宅支援の現場では、「何かあったら連絡してくださいね」と声をかけることがよくあります。
でも実際には、必要なときに連絡がもらえないというケース、少なくありません。
ある独居の利用者さん。
訪問看護のスタッフが、「何でもいいから、体調がおかしかったら連絡してね」と丁寧に伝えていたのですが…
高熱が出ても、呼吸が苦しくても、一切の連絡がなかったんです。
■「何でもいいから」は、実は“何も伝えていない”のと同じ?
本人に理由を聞くと、こんな答えが返ってきました。
「だって、我慢すれば治るかと思って…」
「こんなことで連絡したら迷惑なんじゃないかって…」
ここに、重要なポイントがあります。
私たちは支援者として「気軽に相談してほしい」と思っていても、
本人には「相談していいこと・悪いこと」の基準が伝わっていないんです。
■行動を引き出す「具体例」の力
このとき、私は訪問看護師と一緒に、次のように“連絡の目安”を具体的に伝えました。
• 熱が37.5℃以上あったら、すぐ連絡してください
• いつもよりふらつきが強い、転びそうなときは、連絡を
• ごはんが半分以上食べられない日が続いたら、連絡してほしいです
• トイレに行くのが大変で、我慢してしまうようなら、それも相談してください
• 何かあったときに「自分では判断がつかない」と感じたら、それも連絡のサインです
すると、次の週から、必要なときにちゃんと電話をもらえるようになりました。
■人は「曖昧な言葉」に行動しづらい
心理学では、「曖昧性回避」という考え方があります。
人は、判断基準があいまいな状況では、行動を起こすことを先延ばしにしやすいのです。
だからこそ、支援者側が“具体的な基準”を伝えてあげることが、安心して行動を起こすきっかけになります。
■支援者にできる、ちょっとした工夫
「何でも相談していいですよ」
その言葉を、もっと届く形にするために、以下のような工夫をしてみましょう。
• 数字や回数を入れて伝える
例:熱が○度以上、○回以上吐いたら、など
• 本人のよくある症状に沿って伝える
例:「またあのときみたいに起き上がれない感じがあったら」
• 「迷ったときも、連絡していいです」と一言添える
これだけでも、利用者さんや家族が「動きやすくなる」んです。
■まとめ:伝わる言葉は、“行動のイメージ”ができる言葉
支援の現場で本当に大切なのは、「言ったつもり」ではなく、「伝わって、行動してもらえるかどうか」です。
「困ったら連絡ください」だけでは、相手には伝わりません。
どうなったら、何をしていいのか?
それを具体的な例で伝えることが、安心と行動の後押しになります。
小さな工夫ですが、現場では大きな効果を発揮します。
