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心残りのクレープ|しゃぶ葉とひとり向き合った昼下がり

「クレープ食べるの忘れてた」

そう思い出したのは、ひとりしゃぶ葉から帰ってきて心地良いお昼寝から目覚めたときだった。時計を見ると16時。もうお会計も済ませた。いくらランチは時間無制限だからと記されてても、今更お店に戻ったところで「はい、どうぞ」と食べさせてもらえるわけがない。


クレープはビュッフェコーナーの右端、サラダバーの側に置かれていた。「デザートコーナーと正反対の位置ってなんか作りづらいな」と思ってたくらいだし、確かに存在は確認した。

お皿を持ちながら、サラダを取るかどうか悩んでた時、若いお姉さんがクレープに生クリームをデコレーションしていて、その隣では別のお姉さんがワッフルメーカーに生地を流し込んでいた。振り返った時は手作りプリンの作り方がPOPに書かれていて、まだ空のお皿を持ったまましばらく眺めてた。

クレープやワッフルは生地を広げて焼いて、巻いて、盛ってと、大変さはあるけど、見てるぶんには楽しそうだった。そのひと手間込みで食べるからおいしいんやろなと思いながら、アイスのレバーを下げていた。

食べ放題のアイスはなんでこんな魅力的なんだろう。きれいに巻けたときほど、その日は勝った気になる。


そうこうしているうちに、テーブルにはお肉が届けられていた。薄くスライスされた透明感あるお肉は見るからにおいしそうだ。赤箸を手に取り、お肉をすくう。だしへ浸かったそばから白く変わっていくのを見てるうちに、クレープのことは頭から消えていた。

しゃぶしゃぶされたお肉をごまだれにつけ、ザーサイ刻みをたっぷりのせ、彩りも意識してもみじおろしをかける。

まずひとくち食べてみると、ごまだれの甘さのあとに、ザーサイの塩気が来る。もみじおろしまで乗せたせいか爽やかな酸味とごまだれのコクがほどよく絡みあい、ツウっぽいにもほどがある。

家だとまず大根なんておろさない。冷蔵庫にあるのを知ってたとしても、まるで大根なんてないような素振りで行動する。食べ放題だからこそ、こういうアレンジが楽しめるなとひとり幸せを噛み締めていた。

ところが、食べ進めていくうちにめんどくさいスイッチが発動した。

アイスを取りに行ったついでに、薬味も貰ってくればいいもののサボる。誰かに咎められるわけでもないのに「素材の味がやっぱり一番やろ」なんて言い訳を並べながら肉と向かい合っていた。


〆のわかめご飯を取りに行ったとき、幼稚園児くらいの子がわたあめを作っていた。棒だけでなく手までも糸が絡まっているのに、なんのためらいもなく回し続けてる姿は、もう綿あめより本人の方が巻かれてるようだった。その姿を微笑ましく見てたとき、左端にクレープが積み重なっていたのも見ていたはずなのに、娘と一緒に祭でプリキュアのわたあめを買ってた頃のことを思い出していた。

最後のお肉を食べ終えたとき、タブレットには『オリジナルパフェの作り方』が放送されてた。うなじからはじんわりと汗の感覚があったし、しゃぶしゃぶで温まった身体を早く冷やしたいという生々しさに満ちていて、パフェを食べたいという衝動が抑えきれなくなっていた。

ところが、いくら探したところでパフェのお皿が見つからない。アイスの小皿は何枚も並んでいるのに、それらしい深さのある皿だけが見当たらない。もしかしたら別で注文するものなんやろか、と思うと面倒になってきた。

そうなると気持ちは早い。いつものようにアイスのレバーを下げていた。5度目ともなると迷いもない。白く巻かれていく先端を見ながら、「まぁ今日はこれでええか」という気持ちへと落ちついていた。

テーブルへ戻るころには、パフェのこともクレープのことも、すっかり頭から抜けていた。家に帰って横になったのが最後......目が覚めたときには16時。頭の中に浮かんだのはそれだった。

「クレープ食べるの忘れてた」

どうしたもんかと調べてみたら、みんな『ドリンクグラス』で作ってた。

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