いつもの場所に座って|パパとママを見つめる特等席💺💞
リンには、いつもの場所がある。
パパのベッドの端っこである。
そこは、リビングにいるママも見えるし、自室で作業しているパパの背中も見える。家族全員を一度に確認できる、リンにとっての特等席なのだ。
側から見れば、ただのベッドの端である。寝るには狭いし、特別ふかふかしているわけでもない。しかも、パパの加齢臭つきである。もっといい場所はいくらでもありそうなものだ。
しかしリンにとっては、そこがいいらしい。
朝、パパが動けば顔を上げる。ママがリビングで食器を片づければ、耳がそちらを向く。誰かがトイレに立てば、目で追う。完全に家庭内警備員である。
一見すると、ただのストーカー犬だ。
けれどリンにとっては、それが安心の形である。リンは元保護犬で、分離不安がある。最初は五分の留守番すらできなかった。ドアが閉まるたびに、この世の終わりみたいに鳴いていた。
それが今では、パパの足元で寝息を立てるようになった。
これは、なかなか大きな変化である。
もちろん、夜間巡回パトロールは今も続いている。パパが寝返りを打てばママの部屋へ行き、ママが動けばまた戻ってくる。警備会社もびっくりの勤務態度だ。残業代を請求されたら払えない。
それでも、その背中は昔よりずっとやわらかくなった。リンは、少しずつ信じられるようになったのだ。
この家族は、自分を置いていかない。いなくなっても、また帰ってくる。声も足音も匂いも、この家の中にちゃんとある。
パパがキーボードを叩く音。
ママが食器を重ねる音。
娘が階段を上がってくる足音。
その全部が、リンにとってのお守りなのだろう。
ちなみに、ベッドの中央席はココが占拠している。
ココは堂々と真ん中で寝る。完全に自分のベッドだと思っている顔である。どかそうとすると怒る。パパのベッドなのに、パパが遠慮して端に寝るという不思議な現象が毎晩起きている。
ココの真ん中は、甘えの象徴。
リンの端っこは、見守りの象徴。
同じベッドでも、座る場所ひとつで性格まで見えてくるから面白い。
リンは近づきたい。でも、べったりはできない。甘えたいけど、抱っこは嫌。そばにいたい。けど、逃げ道は確保しておきたい。なんとも面倒くさい距離感である。けれど、その不器用さがリンだ。
好きな人の姿が見える場所。それが一番落ち着く場所なのは、人も犬も同じである。
今日もリンは、パパのベッドの端っこに座っている。
家族を監視しているのではない。
安心を見守っているのだ。
そしてパパは、その横でココに股を占拠されるのだ。
↩️ 前話はこちら:最終話|分離不安症は個性🥰
