めんどくさいけど、かわいい|愛のサインは全力監視💞
リンは、愛し方が少し不器用な犬である。
家の中ではストーカー。外出前にはソワソワし、夜になると巡回パトロールを始める。誰かがトイレに立つたびに、耳がぴくりと動く。風呂に入れば、出てくるまで気配を探る。寝返りを打てば、部屋を移動する。人間なら完全に職務質問案件だが、犬なので「かわいい」で済んでいる。
犬はずるい。
最初の頃は、手がかかる子だと思っていた。部屋を出るたびに鳴き、玄関に向かえば世界の終わりみたいな顔をする。パパとしては、コンビニへ行くだけである。リンにとっては、どうやら今生の別れらしい。人間と犬では、時間の単位が違うのだろう。こちらの五分は、リンの中では大河ドラマ一話分くらいあるのだ。
だが、不思議なもので、毎日そんなことを繰り返しているうちに、こちらも慣れてくる。誰かがトイレに行くたびにドラマが始まる家。それが、我が家の日常になった。
💞 めんどくさい=愛のサイン
めんどくさいという言葉は、なかなか便利である。文句にもなるし、愛情表現にもなる。人間社会でも、めんどくさい人ほど気になってしまうことがある。素直に「好き」と言えばいいものを、遠回しに不機嫌になったり、試すような態度を取ったりする。厄介である。厄介なのに、なぜか放っておけない。
リンもそれに近い。離れたくない気持ちを、言葉では伝えられない。だから鳴く。見張る。追いかける。距離を取った場所から、じっとこちらを見る。抱っこは嫌いなのに、視界から消えるのは許さない。なかなか勝手な女である。
けれど、その勝手さに、こちらはだんだんはまっていく。
🫶 手がかかる子ほど、かわいい
もちろん、ココもかわいい。ココは甘え方がわかりやすい。パパの股の間で寝るし、顔をぺろぺろなめるし、好きな相手には全力で近づいていく。愛情表現が直球である。たまに布団の上で吐くが、それも含めて直球である。
一方のリンは、抱っこを嫌がる。ぺろぺろもしない。一定の距離を保ちながら、ただ監視する。愛情表現としては、だいぶ遠回りである。だが、その遠回りが愛しい。人は犬ほど察するのが得意ではない。だからこそ、リンみたいに不器用でも全力で気持ちを出してくれる存在に、弱いのだ。
🎬 完治なんて求めてない。それがリンの個性だから。
分離不安は、今も完全には治っていない。外出前には警戒するし、夜の巡回も続いている。それでも、以前よりかは落ち着いた。世界の終わりみたいに泣き叫ぶことは減り、待つ時間も伸びた。最近では、パパの足元で安心したように眠ることもある。
あの頃のリンは、ずっと家族を見張っていた。今のリンは、見張りながら眠っている。
それは小さな変化だが、我が家にとっては大きな奇跡である。
リンの鳴き声も、監視も、夜の巡回も、今では生活音のひとつになった。面倒だと思ったものが、いつの間にか日常になり、日常になったものが、やがて愛着になる。
🩷 愛って、面倒くさいくらいがちょうどいい
めんどくさいけど、かわいい。
それがリンであり、誰かを愛するということも、それに似ている。完璧だから好きになるのではない。手がかかるから、目が離せない。目が離せないから特別になる。
今日もリンは、離れた場所からこちらを見ている。
監視ではない。愛の確認作業である。
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