鯖の助のサバ弁当|有吉のひと言で、誰かが篠崎まで走らなあかん
有吉弘行が「最高にうまい」と言ったサバ弁当を買いに『鯖の助』へ向かった。
メニューを見るとハンバーグ弁当があった。サバの気分で来たのに、ハンバーグは勝ちにくるから困ったもんだ。それでも今日は、有吉がサバと言った以上サバ弁当を買うしかなかった。
せっかく篠崎まで来たし、天気も良かったので、近くの江戸川を見ながら食べようかとも考えたけど、それをやると味の評価が狂う。川風も青空も春の光も、全部まとめて「うまい」に加点される。なにより骨の処理が面倒だ。
お家に帰り、袋からサバ弁当を取り出すとサバはたしかに大きい。
味は......うん。まぁ、こんなもんかと思いつつ、食べながら気になったのは、別のことだった。
ADがわざわざ篠崎まで買いに行ってるんやろなと......。

「ちっ」
ナビが「到着まで55分」と言った。弁当ひとつで出る距離ではないと思ったが、助手席どころか、文句を言う相手もいない。
「大学まで出て、なんでサバ弁当をパシらされなあかんねん」
信号待ちのたびに独り言だけ増える。しかも指定されたのは、配達しない店だった。
「せめて配達してくれる店を選べや」
サバ一枚のために14号を走る。隅田川を越えたあたりから、有吉さん本人より「うまい」と言った一言の強さに腹が立ってきた。
帰り道、渡された弁当はまだ熱く、蓋を浮かせると助手席から匂いが上がる。たしかに、うまそうだった。
帰りのナビは1時間8分になっていた。
「ちっ」

食べてる間、妄想が止まらない。
せっかく勉強して頭のえらい大学に入り、高い倍率をくぐり抜けて就活し、やっとの思いでテレビ局に入ったのに、サバ弁当を買いに行かされるだけのADを想像すると、サバの骨が喉に刺さったくらいで文句を言うのも失礼だ。
いつもは頭は残すけど、今日は食べなきゃいけないと感じた。
苦いな......やっぱ頭は残すべきだったと後悔した時、今度は店主の顔が頭に浮かんだ。

札束を数えてる間、笑顔が止まらなかった。
開店前から列ができていた。一人、二人、そのあとも店の前に人が残る。
「ラジオ聴きました」
会計のたびに言われ、軽く頭を下げるが今日は網の上が空かない。焼いて返して、また並べる。サバの脂が落ちると火が強くなり、換気扇は回っているのに、煙は店の外へ押し出されていった。
紹介してくれたのはありがたい。
ただ、今日はいつもより煙たかった。
列の最後尾が見えなくなるころ、ご飯を詰める手より先に別のことを考えていた。
......この煙、通報されたらどうしよ。

店主からしたら、ウハウハやろ。ピーク時に店の前を通った時、かなりの人が並んでた。煙がモクモクと立ち上がり、その匂いだけで米が食えそうだなと思いながら横切った。
それもあって、13時28分。昼の閉店前ギリギリの時間に買いに行ったら、ひとりしか並んでなかった。並んでまで買ってたらもっと味の評価は下がっただろう。
サバ弁当900円......先日、スーパーで買った半額のみりん干しは、それだけで米3杯食えたことを思い出した。
◀️ 前話はこちら:基本のペペロンチーノ🧄
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