銀河フェニックス物語 <会社員編> 起業家の夢は宇宙に輝く(2)
スチュワートはパーティ会場でレイターに勧められた添加剤を使うようアラン・ガランに伝えた。
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・起業家の夢は宇宙に輝く(1)
あの若者の言う通りだった。
添加剤のカルボナを使ったら、エンジンの調子が一気に上がった。次のレースで俺の船は決勝に進出し、初めて十位に入った。
「さすがオーナーです」
レースの打ち上げでメカニックたちに褒められた。
「クロノスの営業マンに勧められたんだ」

俺の言葉にみんなが笑った。冗談だと思っている。
あいつに礼を言うか。
もう一度会ってみたい。
メリーアンにアポイントを入れさせる。
「レイター・フェニックス様からメッセージを預かっております。『カルボナよかったろ、おめでとう』だそうです」

面白い奴だ。
レイターとは高級別荘地のパル星にある俺の別荘で会うことにした。

*
あいつは、クロノス社の最高級ランクのスピーダに乗って現れた。
一目でわかる。操縦が上手い。着陸も鮮やかだ。
社用船ではなく自家用船だ。まだ若いのに高額なスピーダに乗っているというのは、金持ちの坊ちゃんなのか。
だが、着ているものは金がかかっていない。一応、仕事という意識があるのかスーツ姿だが、相変わらずネクタイをゆるめただらしない恰好だ。
「お前、何歳だ?」
「十八だけど」
少年の範疇だな。免許取り立てか。
金持ちという俺の見立ては間違っていなかったようだ。将軍家に居候しているという。

「すげぇなあんたの船たち。いい趣味してるぜ」
俺は現在、十二隻所有している。普段使いからコレクションまで。政府がないこの星は税金がかからない。宇宙船を置いておくのに最適だ。
「なあなあ、船、見せてくれよ」
こいつ、まるで子どもだな。船から視線が離れない。まあ、俺の自慢のコレクションだ。ここまで素直に喜ばれると、うれしくなる。
俺は子どものころから宇宙船が好きで、銀河最高峰のレースS1に夢中になった。だから、まとまった金が手に入ったところでS1チームを買った。
子供のころの夢を実現したといえば聞こえはいいが、手にした瞬間から責任が伴う。楽しいことばかりじゃない。
駐機場を案内してやる。
「おお、すげぇ。この旧型ってオークションで手に入れたんだろ。二年前に出てたのあんたが落としてたのか」
「よく知ってるな」
「俺はプロだぜ」
こいつ宇宙船メーカーの営業というよりお宅だ。船の情報を細かいことまでペラペラとよくしゃべる。おしゃべりな男だ。嫌な感じはしない。引きずられてつい俺も話してしまう。コミュニケーション能力が高いな。
俺はクロノスの小型船を持っている。そろそろ買い替えてもいい頃だ。
「カルボナの件は助かった。お礼に小型船を買おうかと思ってな」
「どこの?」
面白いことを聞く。
「どこの? 君はクロノスの営業だろ」
「小型船の買い替えならあんたにはクロノスはお勧めしねぇよ。飛ばしの面白味が足りねぇ」

「ほう」
「あのクラスはギーラル社のパタンナのがあんたに合うと思う。ちょっと操縦してみてくれよ」
俺はレイターを助手席に乗せてクロノスの小型船を動かした。少し飛ばしたところで、レイターが話しかけてきた。
「あんた、操縦上手いじゃん。思った通りだ。パタンナならノーマルのセッティングでもあんたに合う」
変な奴だ、ライバル社のパタンナの長所を力説し始めた。それにしても、こいつの観察眼はすごいな。俺は誘ってみた。
「うちのS1の機体見るか?」
「え? いいの? 見たい、見たい」
うるさいほどの大はしゃぎだ。
俺は、そのまま第三衛星にあるうちのチームの拠点へと向かった。
*
俺は攻めるのが好きだ。面白いものはすぐ取り入れる。
だが、執着はしない。事業の数字はシビアに計算する。損切りが得意と言われている。そんな俺が切れないでいるのがS1チームだ。
小惑星帯に近い第三衛星を俺は安値で購入し、ファクトリーを建てた。きょうの打ち合わせは午後からだ。まだ誰も来ていない。
駐機場に停めてあるS1の機体を見ると、レイターは駆け寄り興奮しながらしゃべりだした。
「あんたのチームは船に愛があるから、俺、好きなんだ。レギュレーションの隙を突くってとこもすんげぇ好き。やっぱメカニックの才能が違うよ。クロノスのS1機はいいんだけど、完成しちゃってて、俺が操縦しててもわくわく感が少ないんだよね」
俺は驚いた。
「お前、S1機乗れるのか?」
「当たり前だろ。俺は銀河一の操縦士だぜ」
無名の銀河一か。大言壮語は嫌いじゃない。俺も散々ビッグマウスと呼ばれてきた。
「クロノスは、営業部員にもS1機を操縦させるのか?」
「俺、テスト部に出入りしてんだ」
それで、こいつは色々と詳しいのか。俺はあることを思いついた。 (3)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」