銀河フェニックス物語 <会社員編> 起業家の夢は宇宙に輝く(3)
レイターがS1機を操縦できると聞いたスチュワートは驚くと同時にあることを思いついた。
・銀河フェニックス物語 総目次
・起業家の夢は宇宙に輝く(1)(2)
「パイロットが来るまで、テストコースで乗ってみてもいいぞ」

「まじ? ヤッホー」
あいつはバク転宙返りをして喜んだ。身軽な奴だ。
「俺に合わせて、セッティング変更してもいいか?」
「構わんが壊すなよ」
「壊すわけねぇじゃん。整備士の免許も持ってんだ」
「クロノスで取ったのか?」
「いやいや、俺、ハイスクール中退して整備工場でバイトしてたんだ」
筋金入りのお宅だ。あまり本格的にいじられるのも困るな。
と心配するほどのことはなかった。
操縦席のパネルを二、三か所プッシュする程度の変更だ。翼の角度が少し変わる。
「小惑星にぶつけるなよ」
「俺は銀河一の操縦士だ、っつったろ」

あいつは俺に笑顔でピースサインを向けた。
銀河一の操縦士。
少年よ大志を抱け、といったところか。まあ飛ばしを見てやろう。憧れへのサービスは大人がしてやれる社会貢献だ。
一応ラップを測ってやるか。
「コースを三周して帰って来い」
「了解」
機体が宇宙空間へ飛び出す。扱いが難しいS1機を苦も無く操っている。クロノスで相当乗っているな。
あいつは、おどけてクルリと機体を宙返りさせ、ピタリとスタート地点に停めた。ずいぶん精緻な操縦だ。
スタートランプが消えて船が飛び出した。
なっ、俺は驚いた。
初っ端から何という加速だ。
さっき自家用船で見せた丁寧な飛ばしとは全然違う。
俺のS1機がまるで違う。まるで生まれ変わったようだ。あいつ一体どんな魔法をかけたんだ。
足音がした。
チーフメカニックのアラン・ガランがピットに入ってきた。アラン・ガランは真面目だ。いつも一番乗りでやってくる。
驚いた顔でモニターに見入っている。
「は、速い。スチュワートさん、一体どういうことですか?」

俺に聞かれても困る。アラン・ガランの左足が震えだした。
コーナリングも小惑星帯もギリギリ絶妙のライン。どう見ても競技レースの経験者だな。ジュニアチームにいたのだろうか。『無敗の貴公子』並みの飛ばしだ。
クロノスではこれだけの腕前でもレース部ではなくテスト部なのか。
一周目のラップがでた。
コースの最高タイムを上回った。
うちのパイロットのコルバより圧倒的に速いし上手い。
俺は感じる。このタイムは更に更新される。
レイターは様子を見ながら飛ばしている。初めて飛ぶコース、初めて飛ぶ機体なのだ。二周目から本気で来る。
アラン・ガランが驚いた声を出した。
「パワーバンドが五に設定されている」
パワーバンドが五だと。そんな小さな目盛りでうちの船が飛ばせるのか。普段は十、一番いけて八だったはずだ。
「一つ間違ったら船が壊れます。スチュワートさん、止めさせて下さい」
船の壊れるリスクとレイターの飛ばしを見たい好奇心が葛藤する。
その時だった。入口から大声が聞こえた。
「だ、誰が操縦してるんだ?」

パイロットのコルバだった。
いつもより早く来たな。
メカニックのアラン・ガランが俺に詰め寄る。
「やっぱり、コルバが操縦しているんじゃないんですね。何なんですかあの操縦は、あり得ない」
コルバには、レイターの飛ばしは見せたくないな。
コルバは元戦闘機乗りで腕は悪くないが、今伸び悩んでいる。自信を喪失する可能性がある。
俺は無線機でレイターに指示した。
「二周で降りろ」
「チッ、何だよこれからだったのに」
二周目は俺が思った通りタイムを更に伸ばしていた。
「アラン・ガラン。分析を進めてくれ」
機体が戻ってきた。
俺とコルバは駐機場へ向かう。
レイターは船から降りるとヘルメットを取り片手をあげた。
「よ、コルバ、お久し」

その瞬間、パイロットのコルバが叫びながら駆け寄った。
「レ、レイター?!」
二人は知り合いなのか?
「ほんとにレイターなのか? 大きくなってるぞ。僕より背が高いじゃないか」
「あんたは変わんねぇなあ」
笑顔で肩を叩き合う様子は知り合いどころじゃない。かなり親しい。まるで家族の再会だ。 (4)へ続く
・第一話からの連載をまとめたマガジン
・イラスト集のマガジン
いいなと思ったら応援しよう!
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」