銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第二話 花咲く理論武装(3)
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「そういうことか」
レイターは頭の中の霧が晴れるようにすっきりした。
最新の宙航理論。
いくら読んでもわからなかったところが、フローラの説明を聞いたら一発で理解できた。
「あんた、すごいな」
レイターに誉められると、フローラは恥ずかしそうにうつむいた。
「そんなことありません。お兄さまならもっと・・・」

「いや、アーサーの奴より、あんたの説明の方がよくわかる。ほんと天才だよ」
* *
フローラがレイターの部屋に入るのは初めてだった。
フローラは一歩足を踏み入れて驚いた。
こんなに散らかった部屋を見るのは、生まれて初めてだ。プラモデルや本、マンガ、ゲーム機、工具、洋服などが机からはみ出して、床の上にごちゃごちゃに置いてある。どこに座っていいのかわからない。
もちろん世界には、散らかった部屋なぞ無数に存在し、汚部屋という名称で呼ばれていることも知っている。だが、この月の御屋敷の中で、そのような場所を見ることになるとは、信じられなかった。
この家のことは、将軍家女中頭のバブさんが取り仕切っていて、どの部屋も整理整頓がきちんとなされている。
父も兄も無用な物は持たないし、部屋が片づいていないことなど、あり得ない。

「この部屋のお掃除は、どうしているんですか?」
聞かずにはいられない。
「あん? 俺がしてるよ。最初はバブの野郎と毎日戦争してたけど、あいつがこの部屋に介入しないことで、不可侵平和条約を結んだんだ」
「バブさんが降伏したということ?」
驚くわたしに、レイターがにやりと笑った。
「戦勝国なしさ。俺も、俺の物をほかの部屋に侵入させない、って条件を飲まさせられた」

確かに食堂や居間に、レイター個人の物は置かれていない。
座ることのできる場所が、ベッドの上にしかなかった。
そのベッドの上にも、雑多に物が置かれている。
隙間を縫うように、レイターは寝っ転がり、わたしはベッドの端に腰掛けた。
この部屋は、不思議な空間だった。
こんなに散らかっているのに、なぜか落ち着く。
そして、思った以上に機能的だった。最新の論文、ペーパータブレット、筆記具、ポケットコンピューター、どれもレイターが寝たまま取れるところに置いてあって、わたしが説明に必要な物は、すぐに出てきた。
整頓はされていないけれど、この人の頭の中では整理されているのだ。
*
わたしが見たことのないようなものが、この部屋にはいろいろあった。
宝石のように緑色に光る小さな石が、机の上に無造作に置いてあった。

「きれいな石ですね」
「ああ、アマ星の石。アレックの艦で出かけた時に拾ったんだ」
レイターはお兄さまと一緒に、戦艦アレクサンドリア号に乗船していた。
アマ星は銀河辺境の星。
文献で読んだことがある。アマ星の鉱石は、こんなところにあってはならない。
「これ、天然記念物ですよね?」
「よく知ってるね。闇だと結構高値が付くんだ。金に困ったら売ろうと思って」
「それはいけません。許可を得ていなければ希少金属取引法の五十六条四項違反にあたります」
「へぇ、あんたもアーサーみたいに、法律全部暗記してんだ」
感心した顔をされた。
どう答えればいいのだろう。
「居間に『銀河六法』が置いてあるので・・・」
わたしは答えにならない答えをしたが、レイターはそれで納得したようだった。
それよりも、この違法行為を見逃していいものだろうか。 (4)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」