銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第二話 花咲く理論武装(4)
・<出会い編>第一話からの連載をまとめたマガジン
・<ハイスクール編>マガジン
・<出会い編> 第二話 (1)(2)(3)
レイターとバブさんの間で不可侵平和条約が結ばれているとしても、ここは将軍家の管轄だということを、はっきりお伝えする必要がある。
「この部屋にアマ星の石があることは、問題だと思います。天然記念物保護法で定めている、持ち出しと所持の禁止に触れます」

「ふふふ」
レイターは不敵な笑みを見せた。
「あんたが警察に垂れ込まなきゃ、摘発はできない。事案が発覚しねぇから」
「そうです」
「ついでに言うと、持ち出しについては証拠がないから、俺が認めなければ立件は相当難しい。しかも、もうすぐ時効だ」
「そうですね」
「所持の現行犯については、逃れようがないとしても罰則がない」
「その通りです」
「じゃあ、何の問題もねぇじゃん」
そこに明白な違法行為が存在しているのに、問題がない、という結論は納得できない。
「あなたが、所持しているだけであれば発覚しないとしても、販売すれば問題は表面化します。すなわち、換金できないということです」
わたしにはこう切り返すのが精一杯だった。
レイターは口をとがらせた。
「う~む。あんた、アーサーと同じこと言うんだな」
「・・・」
お兄さまとレイターが、同じような会話をしていたとは。
お兄さまは、将軍家に迷惑がかからないのであれば、違法行為を容認する、という判断を下されたということだ。
文献から得る知識とは、まるで違うものがここにある。こうした議論ができるお兄さまが羨ましい。
価値観の相違。
善と悪、正と誤、白と黒、その間に無限のグレーの世界が広がっていた。
分数の三分の一のようだ。何処までいっても割り切れない。
循環小数の0.333333・・・は、3が無限に続く。
けれど、三分の一は存在する。
現実の世界には着地点がある。
他者との違いにより知的好奇心が刺激を受け、活性化する。
何と楽しいのだろう。
レイターはわたしの顔を見て笑った。
「楽しいな」
「え?」

「あんたと話してると」
こんな風に他人から言われたのは初めてだった。
そして、わたしと同じことを、この人が感じていたことが嬉しかった。
また、胸の鼓動が速くなる。
* *
「楽しいな、あんたと話してると」
つい本音が出た。
最初に出会った頃は、無口な娘だと思っていたが、話してみると打てば響く感覚がある。
彼女の頭の中には、百科事典のデータベースが全部入っているんだ。アーサーと同じように。
俺は、女の子と話をするのが大好きだ。
だが、フローラと話をするのは同じ「好き」でも種類が違う。
彼女は俺より頭がいい。
だから、俺にとって勉強になる、ってところが他の女の子と違うのかと思ってた。
でも、違う。そうじゃねぇ。

もっと深い感覚。
ずっと繋がっていたい心地よさと、熱のような衝動。
身体中の細胞が、フローラの方へ磁石で引っ張られていくようだ。
こいつは、もう意思で逆らうことはできねぇ。
* *
アーサーは落ち着かなかった。
フローラが元気だ。
以前はこんなに明るくおしゃべりする子じゃなかった。それ自体は喜ばしいことだが・・・。
「お兄さま聞いてくださる? レイターったら面白いの」
またレイターの話だ。
「お兄さま、宇宙船に関してはレイターは天才なのよ。あの発想にわたしたちでは太刀打ちできません」
フローラは不思議な考察をする。
「お兄さまの頭の中と、レイターのお部屋は同じなの」
あの散らかった部屋と私の頭を、一緒にしないで欲しい。

「お兄さまは、きちんと頭の中の物を引き出すことができるけれど、レイターはそれが苦手なの。だから、自分の目の見えるところに、全てを置いておこうとしている。可視化した結果、散らかっている様に見えるだけなの」
「見えるだけじゃない。現実に散らかっているよ」
「でも、レイターは工具とか、必ず同じ場所に戻しているのよ。あの散らかったように見える場所が、彼の定位置なの」
フローラに言われるまで意識していなかったが、確かにそうだ。
アレクサンドリア号に乗っていた時、あいつの宇宙航空概論テキストは、いつもベッドの同じ場所にあった。 最終回へ続く
・<出会い編>第一話からの連載をまとめたマガジン
・イラスト集のマガジン
いいなと思ったら応援しよう!
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」