銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話 (1) 恋の嫉妬と仕事の妬み
・第一話のスタート版
・第一話から連載をまとめたマガジン
・第三十話「修理のお礼は料理です」
フェニックス号に乗ったティリーは、気分が落ち着かなかった。
「わぁい、両手に花だぜ」

レイターは、わたしと後輩のサブリナの顔を交互に見て笑った。
わたしたちは、ヨマ星系の大手洗剤メーカー「コッペリ社」へ向かっている。
たまたま同じ時間に、別々にアポイントが入った。
サブリナが明るい声で挨拶する。
「レイターさん、厄病神が出てこない様に、よろしくお願いしま〜す」
今回、彼女は新型船七隻の契約を締結する。大きな仕事だ。厄病神の船には乗りたくなかっただろうな。
サブリナがわたしに話しかけた。
「ティリー先輩、わたし、仕事でフェニックス号に乗るの初めてなんです。いろいろ教えてくださいね」

「ホストコンピューターのマザーに聞けば何でもわかるわ」
ぶっきらぼうに答えてしまった。
「俺が、手取り足取り教えちゃうよ」
おちゃらけながらレイターが言った。
「荷物、整理してくる」
わたしは自分の船室へと向かった。
*
気持ちを落ち着けよう。
今回、後輩のサブリナは船の多数購入契約。
一方、わたしは、フレッド先輩に頼まれて、資料を受け取ってくるという雑用仕事。
サブリナは要領がいい。
元々、コッペリ社へはわたしたち営業企画課が、フレッド先輩を中心に新型船購入の話を持ち込んでいた。
ところが、先方の担当者が誤って隣の法人営業課に問い合わせをし、たまたま窓口となったサブリナが、トントンと話を進めてまとめてしまった。
わたしたち営業企画課は面白くない。陰では契約を横取りしたサブリナの悪口が飛びかっていた。サブリナは営業成績がいい。
はあぁ、ため息をつく。

サブリナはすぐ下の後輩。
わたしは彼女のメンターに選ばれ、入社当時、社内のことを教えた。明るくて、よく気が付くサブリナ。わたしは彼女が好きだった。
サブリナが初めて契約を取った時は本当にうれしくて、祝勝会を開き、彼女に夕食をおごった。
「ティリー先輩、ありがとうございます。先輩の様になれるようにわたし、頑張ります」と言われて喜び、そんなサブリナをかわいく思った。
けれど・・・。
サブリナが隣の課で月間賞を取ったあたりから、素直に喜べなくなった。
サブリナは変わらない。
「ティリー先輩のおかげです」と明るく話しかけてくる。
*
学生時代の出来事が頭に浮かんだ。思い出したくない記憶。
化学が苦手だと言うクラスメートに、わたしはテスト前、一生懸命教えた。
テストが終わってみたら彼女の化学の成績は、わたしより良かった。
たったそれだけの小さな話。
「ティリー、ありがとう」と礼を言う彼女に「今度はわたしに教えてね」と明るく笑顔で応えた。
けど、心の中は違った。
悔しさと恥ずかしさと苛立ちが入り乱れ、彼女がわたしをあざ笑っているように感じた。教室で彼女の顔を見るだけで気持ちが塞いだ。
そんな自分が嫌だった。彼女は何も悪くない。力が足りなかったのは自分だ。頭ではわかっている。
なのに、彼女が恨めしいという気持ちを振り払えない。
あのどす黒い感情。
誰にも知られたくない自分。しばらく忘れていたのに。 (2)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」