銀河フェニックス物語<出会い編> 第十一話(7) S1を制す者は星空を制す
<第十一話のあらすじ>
レースの前に新型船の発表会が開かれる。憧れのエースと仕事ができて喜ぶティリー。だが、レースクイーンのジェニファーに「勘違いしている」と罵倒された。(1)~(6)
三百人入るホールは満席だ。最後列にはテレビカメラが構えている。
舞台の袖にティリーは立っていた。
新型船プラッタの発表会が始まった。
司会のジェニファーにスポットライトが当たる。
「時間になりました。これより新型船プラッタの発表会を始めさせていただきます」
くやしいけれどボディコンシャスなスーツが似合っている。
小耳にはさんだところによるとジェニファーは女優志望らしい。マイクを持つ姿は堂に入っている。
「エース・ギリアムから皆様にご挨拶申し上げます」
エースがプラッタの前に立った。
「今回発売するプラッタは、とにかく飛ばしの反応がいいんです。これまでのスポーツ船にない手ごたえを僕は感じています」
かっこいいエースの後ろ姿を見ていたら泣きたくなってきた。

わたしはエースに取り入ろうなんてしていない。エースのことは好きだけど仕事は仕事として割り切ってのぞんでいる。
けれど、他の人もそんな風にわたしのことを見ているのだろうか。
ドキッとする。
確かに浮かれ過ぎていたかもしれない。
気を引き締めなくては。とにかく今は仕事に集中、集中。
「S1プライムでも僕は負けません。どうぞ新型船プラッタの飛ぶ姿を応援してください」
エースのあいさつが終わった。同時に、暗転。
ここで一旦エースは舞台の袖へ戻ってくる。
ダダンッツ。
わたしの後ろに立っていたレイターが真っ暗なステージへ向かって走り出した。
厄病神が何をする気?! 予定に無いわよ!
次の瞬間、
ガッシャァァーーーン。
ガラスの割れたような大音響がした。
あまりにリアルな物音に会場中が緊張感に包まれる。
何? 何が起きたの?
真っ暗な中、レイターがエースの肘を抱え引っ張るようにして戻ってきた。

呆然として次の指示を待っている音効担当者の前のスイッチをレイターは勝手に押した。
ジャーン。
予定通りの激しいアタック音楽が流れる。
それに合わせてジェニファーのナレーションが始まった。
「宇宙を疾走するプラッタ。その姿は絶対王者にこそふさわしい」
プラッタにスポットライトがあたる。
暗い空間にプラッタの姿が浮かび上がった。
プラッタをのせた台がゆっくりと回転しステージ上をカラフルな照明が照らし始める。
えっ? ステージの床がキラキラと輝いている。こんな仕掛けは知らされていない。
光っているものの正体に気づいて、わたしは息を飲んだ。
鏡の破片。
ミラーボールだ。
天井を見上げる。上から下がっていたミラーボールが落ちたのだ。
ちょうどエースが立っていた辺りだった。
*
「全く、どういう警備体制なんだ」
メロン監督が怒っている。
「面目ない」
『銀総』のクリスさんは大きな身体を折り畳むように頭を下げていた。
「とにかく発表会は滞り無く済んだんだからいいでしょう。今後の話をしましょう」
エースがなだめる。

発表会が終わり、警備担当者とクロノスの社員だけで会議が開かれていた。
ジェニファーはいない。ちょっとだけジェニファーに優越感を持つ。
わたしはこの席で初めてエースの命が狙われている事を知った。
黒蛇会という地元マフィアがS1賭博を成立させるためだという。許せない。
プラッタの発表会が終了した後、警察が現場検証に入り、落ちたミラーボールは遠隔捜査ではずれるように仕掛けられていたことがわかった。
事故ではなく明らかに人為的なものだった。
会議室は重苦しい空気が流れている。
わたしの隣に座っているレイターが伸びをしながらあくびをした。
「ふああぁ」
緊張感を持って臨んでちょうだい、と言いたい気持ちをこらえる。
発表会が対外的には問題無く済んだのはレイターが落ちてくるミラーボールからエースを守ったおかげだった。 (8)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」