銀河フェニックス物語<出会い編> 第十一話(6) S1を制す者は星空を制す
<第十一話のあらすじ>
S1プライムに合わせて新型船「プラッタ」の発表会が開催される。パンフレットを運んでいたティリーはレイターに手伝ってほしいと頼むが、警護中だと断られた。(1)~(5)
「こんなところで一体誰が狙うっていうのよ!」
と、ふいに腕が軽くなった。
目の前にエースが立っていた。

「大変そうだね。手伝うよ」
わたしが持っていたパンフレットの半分以上をすでにエースは抱えていた。
あせって声が震える。
「あ、あの大丈夫です。運べますから」
「僕もブースへ向かうところなんだ、一緒に行こう」
「はい」
さすが貴公子だ。
レイターが手伝ってくれなくて良かった。レイターに感謝したい。
幸せだ。
「足が無重力になってやがる」
後ろからついてくるレイターのつぶやきなんて耳に入らない。
わたしの隣にエースがいる。
レイターは無視。二人だけの世界に酔いしれる。
*
発表会のブースは準備が整っていた。
わたしとエースが受付へ到着するとジェニファーが飛んできた。
「エースったら、どこへ行っていたの? 探したわ。衣装の最終確認をしましょ。ティリーさんも一緒に」
「は、はい」
控え室でエースとスタイリストが打合せを始めると、ジェニファーはわたしを化粧室へ連れ出した。
「あなた、一体どういうつもりなの?」

腕を組んだジェニファーが怖い顔で私を見下ろす。
「え?」
どういうつもり、と言われても何のことだかわからない。
「エースにパンフレットを運ばせるなんて何様だと思ってるのよ?」
「それは専務が」
「エースのせいにするわけ!」
バンっと化粧台を叩いた。
ジェニファーの目がつりあがっている。
「いえ、そうじゃなくて・・・」
「言い訳はいらないわ! あなた、勘違いしてるんじゃない?」
わたしの話を聞くつもりはまるで無いらしい。
たたみかけるように言葉を投げつけてくる。
「あなたエースが好きなんでしょ。見てればわかるわ。エースは優しいわ。あなたが助けてって言えば手伝ってくれるでしょうけど、そんな手は二度と使わないことね。媚びたような目をしたって無駄よ。あなたじゃエースどころか誰も落ちないわ。大体、エースに取り入ろうなんざ十年早いのよ。ガキのくせに」
言葉の波状攻撃にあっけにとられた。
「ジェニファー」
エースの声がした。
「はぁ~い。今いきま~っす」
まるで別人のような声を出すとジェニファーはカツカツとヒールの音を立てて化粧室を出ていった。
今のは一体何だったの?
後にはジェニファーの残り香が漂っていた。
同じ空気を吸うのも嫌だ。息を止めながらわたしは化粧室を後にした。
* *
レイターは警備本部に顔を出しクリスに声をかけた。
「なあ、黒蛇のスナイパー情報が欲しいんだけど」

「ほいほい、スナイパーはこいつらだ」
クリスがデータ検索をかけると二人の顔写真が浮かび上がった。
どちらのイニシャルもT・Tとは違う。
「こんだけ?」
「後は、確認のとれていない人物が一人」
「T・Tかい?」
レイターの言葉にヒル警部が反応した。
「お前T・Tのこと知っているのか?」
「んぱ。知らないから聞いてる」
「我々警察もT・Tというコードネームしか把握していない。雇われスナイパーで男だ。直近では黒蛇の対立マフィアの幹部五人が殺られている。殺人罪で手配中だ」
「使ってる銃は?」
「RP12のレーザーだ」
「ふ~ん。随分軽い銃だな」
「眉間を一発で撃ちぬく腕がある」
「サンキュ」
それだけわかれば十分だ。レイターは警備本部を出ていった。
ヒル警部がクリスにたずねる。
「サーキットに銃は持ち込めんぞ。彼は何を根拠にスナイパーを疑っているんだ?」
「知らんが、レイターの情報収集力を侮っちゃいかんのよ」
「得た情報は警察と共有するのが筋だろうが」
「無理だな。あいつ、子どもの頃から警察のこと嫌ってる、というかハナから信用して無いのさ」 (7)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」