銀河フェニックス物語<出会い編> 第十一話(5) S1を制す者は星空を制す
<第十一話のあらすじ>
S1プライムの担当となったティリーとレイターとルト星を訪れた。特命諜報部のアーサーからこっそり小型無線機を渡されたレイターはむっとしながら連絡を入れた。(1)~(4)
「まあ待て」
アーサーが本件を切り出した。
「S1誘致に絡む汚職疑惑が浮上している。ルト星系からS1委員会の複数の委員へ金が流れたというものだ」
S1委員会はみなし公的機関で金が動けば贈収賄罪が成立する。
「そいつは警察のお仕事だろ」

「そう、銀河警察が捜査していた。先週、収賄側委員のリストを入手したと内偵捜査員から連絡が入った。だがリストを本庁に渡す前に殺された」
「ふ~ん、誰に?」
「ルト星政府だ。S1プライムを成功させ名を売ることがこの星系の外交政策の第一目標だ。そのため汚職リストの流出を必死になって妨害している」
「こんな小せぇ星の政府なんざどうにでもなるだろうが」
「ルト星は必死だと言っただろ。どうしてここに私がいると思う?」
「嫌な予感がしてきた」
「ルト星政府は捜査を妨害するために反連邦のアリオロンと手を組んだんだ」
「はあ? アリオロンも物好きだな、こんなちんけな汚職事件に首つっこむなんて」
アリオロンと銀河連邦は戦争中だが、ここは前線でも何でもねぇ。
「アリオロンが欲しがっているのは新開発船の技術データ」
「残業スパイかよ」
「そうだ」
「ま、天下のS1プライムの真っ最中だからな。開催星系の協力があればいくらでも機密情報が抜けるってか」
「我々の任務は汚職リストの回収だ」
「われわれ?」
わざと聞き返すレイターをアーサーは無視した。
「銀河警察の内偵捜査員はリストをフィルム化してS1プライムのサーキット内に隠したと言い残して死んだ」
サーキットってどれだけ広いと思ってるんだ。
「諜報部員を捜索に当たらせたいが、サーキットへの立入通行証の入手に手間取っている。ルト星政府の目が厳しくてね」
レイターはベッドの上にある自分の通行証に目をやった。
「偶然にもお前は正規のパスを持っている」
「俺は忙しいっつったろ」
「わかっている。バンドをKの二百五十六に合わせてみろ。我々が傍受した無線がセーブしてある」
「あん?」
アーサーの通信は切れた。
*
レイターはジョグを回してKバンドに合わせた。ぼそぼそとした声がかろうじて聞こえる。耳を澄ます。

「エースがスターティング・グリッドに出てきたところを狙う」
レイターの目が細くなる。こいつは黒蛇のやりとりだ。
「とにかく一発でエースを仕留めろ。そして何よりも捕まるな。我々黒蛇の手によることがばれたら賭博自体が成立しなくなる」
「わかっている。これまでに俺が失敗したことがあったか」
「期待しているぞ、T・T」
無線はそこで切れていた。
T・T、聞いたことのねぇコードネームだな。地元のスナイパーか。
チッ。アーサーに借りを作っちまった。
* *
さあ、今日は新型船プラッタの発表会だ。
ティリーは自分に気合いをいれた。

クロノス社本体にとってはレースよりきょうの発表会のほうが本番だ。
マスコミや業界関係者を招待してのお披露目。
プラッタを好意的にメディアに取り上げてもらうため広報部と連携して作業にあたる。
サーキットの隣にあるコンベンションホールがその会場だ。
「よっこいしょ」
思わず声に出してしまった。
プラッタのパンフレットを持ち上げる。
タブレットペーパーは数がまとまると結構重たい。ブースまで運ばなくちゃいけないと思うとうんざりした。
「ほい」
レイターはドアを開けると手ぶらでついてきた。
「これ、運ぶの手伝ってくれないかしら?」
訴えかけるような目でレイターを見る。
「俺はあんたの召使じゃねぇ。ボディーガードだ」
「わかってるけど少しぐらいいいじゃない」
「手が塞がるとあんたを守れねぇだろが」
ああ、むかつく。 (6)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」