銀河フェニックス物語<出会い編> 第十一話(4) S1を制す者は星空を制す
<第十一話のあらすじ>
S1プライムの担当になったティリーは憧れのレーサー無敗の貴公子と初めて話をして浮かれていた。(1)~(3)
「何にたにた笑ってんだ気持ち悪りぃ」
いつもならむかつくレイターの言葉も軽く受け流す余裕がある。
「エースは天才なのよね、十二歳の頃からコースで操縦してて・・・」
「俺は九つの頃から操縦してたぜ」

レイターのことなんて聞いていない。
「十八歳でデビューして以来レースで負けたことが無いってすごいわよね」
「俺だって、バトルで負けたこと一度も無ぇよ」
レイターの操縦がうまいことは知っている。でも、言ってやりたい。
「レーシング免許持って無いくせに」
「あんなのは時間と金の無駄。サーキットでしか使えねぇんだから」
「サーキットで飛ばせない人には何も言う資格はありません」
「うるせぇ」
ああ、楽しい、気分がいい。
自称『銀河一の操縦士』のレイターも、プロのレーサーそれも『無敗の貴公子』の前じゃ形無しだ。
レイターの機嫌が悪い理由が分かる気がした。
*
道の反対側から見覚えのある人が歩いてきた。
黒い長髪を後ろで束ねた長身の男性。連邦軍将軍家の御曹司アーサー・トライムス少佐だ。

こんなところで会うなんて意外だ。
アーサーさんもわたし達に気がついたようだ。
「こんにちわ」
挨拶をかわすと、レイターの不機嫌な顔が更に曇った。
アーサーさんはいかにも観光客というラフな格好だ。チェックのシャツが似合っている。
「お休みなんですか?」
「ええ、S1プライムのチケットを友人からもらったので観戦にきたんです。ティリーさんはお仕事ですか?」
「そうなんです。でも、今回はおいしい仕事なんです」
また、顔が笑ってしまう。
誰かに聞いてもらいたい。
「実は、わたし弊社のエース・ギリアムのファンなんですけど、仕事のおかげで生のエースに会えて、テレビで見るより素敵な人で、仕事やっててよかったって今、とっても幸せなんです」

「それは良かったですね」
他人から良かったと言われると喜びの実感が一層膨らんだような気がした。
「それじゃあ、また」
と、アーサーさんは去って行った。レイターとは一言も交わさなかった。
*
嫌な予感しかしねぇな。
すれ違い様にアーサーの奴、こんなもの手渡しやがって。
レイターは薄いコイン型の小型無線機をポケットにしまった。
俺の仕事はティリーさんの警護。連邦軍の話は聞いてねぇぞ。
フェニックス号に戻るとレイターは自分の部屋のベッドに腰かけた。
無線機の真ん中についていた受信機を耳の中に貼り付ける。
コインを腕時計にはめてジョグボタンを回す。
地元警察のヒル警部の声が聞こえてきた。
「黒蛇についてつかめたか?」
「進展はありません」
警察無線では大した話はでてねぇな。

さらにジョグを回し特命諜報部のデジタルバンドに合わせた。
ピッと小さな電子音の後、アーサーの声が耳の奥に聞こえた。
「おまえに、頼みたいことがある」
「ったくよお、あんたがS1プライムの観戦とは笑っちゃうね。もう少しマシな嘘がつけねぇのかよ」
「嘘じゃないぞ。S1プライムの観戦に来たんだ」
「はっ?」
「冗談だ」
「・・・先に言っとくが俺の仕事はティリーさんの警護」
「エースの警護もだろ」
「わかってるなら話は早い。俺は忙しいんだ」
「ティリーさんはエース・ギリアムのファンだったんだな」
アーサーの言葉がレイターの感情のツボを刺激した。不機嫌さが一気に増幅する。
「・・・切るぞ」 (5)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」