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銀河フェニックス物語<出会い編> 第十一話(23) S1を制す者は星空を制す

 <第十一話のあらすじ>
 デジタル機能が使えないアクセス反射圏を飛行中、レイターは岩石弾の攻撃を受けた。事故が発生したという連絡がクロノスのピットに入った。()~(22

 『闇の制御室』の中で男たちはモニターを凝視していた。

 レース番組はアクセス反射圏の出口を中継で映している。 
『中で事故があったということですが大丈夫でしょうか? 圏内にはクロノスのエース、ギーラルのオクダ、あと周回遅れの船のあわせて三機がいます』

 小太りの男がにやりと笑った。
「『作戦B』は成功だ。エースを撃ち落したな。傭兵の『処分屋』はさすがだ」
「岩石弾を使わせたので、事故として扱われるはずです」
「無敗の貴公子め、手こずらせおって。あとは、ギーラルが優勝するのを待つだけだ」

 パリパリっとモニターの画面にノイズのような光が走り、アクセス反射圏の出口から船が飛び出してきた。

 その中継映像を見た瞬間、二人は無言になった。
 クロノスの、エースのプラッタだ。

『エースがアクセス反射圏を抜けてきました。今こちらに入ってきた情報によりますと、周回遅れの船が小惑星に激突し事故を起こしたもようです』

「バ、バカな。『処分屋』がレーサーごときにやられるはずはない」
 モニターに向かって叫ぶ男の隣で痩せた男もさすがに焦りを感じた。
「現実を直視しましょう。クロノス社は一位で間もなくゴールします。『作戦B』は失敗しました」 
 だが、まだ終わっていない。
「次は『作戦C』です。アルファダイヤの奪還、もしくは破壊のため軍への協力を要請してください」
「わかった、連絡を入れよう」
 小太りの男はルト星軍の司令部に秘密回線をつないだ。


* *

 レイターが操縦するプラッタがルトワンの直線滑走路に着陸。
 観客が総立ちになって小旗を振る中、一位でフィニッシュした。

『優勝はクロノスです。無敗の貴公子、エース・ギリアムが、今、八万人の観衆の前でゴールを切りました。船は一旦ピットへ入ります』

 ピットの奥で素早くレイターとエースが入れ替わる。
 エースが頭を下げた。
「レイター。ありがとう。すまなかった」
「礼はいらねぇ。賞金は忘れるなよ」

n27見上げるレースやや口開く怒り逆

 レイターがヘルメットを手渡す。中に何かが入っている。遠隔装置だった。
「五年前のことも謝っておきたい」
「はぁ?」
「君が会社を辞めたことだ」
「あのなあ、メロンの親父にも言ったけど昔のことなんて俺はどうでもいいんだ」

「だが君は僕に対して怒っているじゃないか」
「ああ、怒ってるさ。せっかくティリーさんと二人っきりで出張へ行くはずだったのによお。ったく、あんたのせいで・・・」
「君、ティリー君のことを」
「フン」
 連邦軍の仕事のないアブダ星系で、のんびりティリーさんとS1プライムを楽しむという俺の計画は、こいつのせいでぶち壊しだ。

 レイターは更衣室に入ると素早くスーツに着替えた。
 モニターにはウイニングランをしているエースの姿が写っている。

 番組の解説が聞こえた。
『無敗の貴公子はまた今年もやりましたねえ。この記録はいつまで続くんでしうか』
「勝手に言ってろ」

 さて、アリオロンはどうでてくるか。
 汚職リストが張り付いた優勝商品のアルファダイヤは会場地下の金庫に厳重に保管されている。 

 あいつらダイヤを狙ってくるな。

 とりあえずクリスに知らせるか。銀河総合警備の無線に接続する。
「クリス聞こえるか」
「どうした?」
「賞品のアルファダイヤを狙っている窃盗団がいる」
「何っ!」

「俺は今から地下の金庫へ向かう。あんたは警察と連携して警備を強化してくれ」
「わかった」

* *

 レイターはすごい。銀河一の操縦士だ。
 ティリーはエースのウイニングランを生で見ながら、感動に震えていた。

「ティリー君」
 背後からわたしを呼ぶ声がする。振り向くとメロン監督が立っていた。
「君に頼みがある」
「はい、何でしょうか」
「ジェニファーの代わりに、表彰式でエースの賞品の受け取りを手伝ってもらいたいんだ」
「え??」

n11ティリー驚く

 思いもよらない言葉だった。

 レースクイーンのジェニファーは表彰台に上ったエースの後ろに立ち、次々と渡されるトロフィーや花束をワゴンへ運ぶ担当だった。
「他にもレースクイーンはいるじゃないですか」

 監督は声を落として言った。
「エースが腕を怪我していることは社員である君以外知らないんだ。うまくフォローして欲しいんだよ」
 エースがけがをしていることがわかったら、そして選手登録していないレイターが身代わりで操縦したことがばれたら、優勝取り消しどころか失格になってしまう。

 これは大事な仕事だ。
「わかりました」
 
 ジェニファーの動線は頭に入っているけれど緊張する。
 レースクイーンの予備のスーツが渡された。

 こんなミニ丈のスカートなんて履いたことがない。恥ずかしい。
 しかもウエストがきつい。
 よくこんなスカートをジェニファーは履いていたなと感心する。

 救いは制服っぽい上着があって、露出が少ないことだ。
 ジェニファーは上着を着ないで舞台に上がる予定だったけど、わたしには無理。      (24)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」