銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十三話(3) 宇宙に花火が打ち上がる
・銀河フェニックス物語 総目次
・第三十三話まとめ読み版 (1)(2)
クリスはわざと心配げな顔で言った。
「初日のシンポジウムには、パネラーとしてエースも呼ばれているんだ。ティリーさんが爆破事件に巻き込まれないといいが・・・」
「ったく、俺に何して欲しいんだ?」
「警備を手伝って欲しいんだよ」
「俺は休暇中だ、っつったろ」
「銀河連邦の交通大臣と地元ネル星系の皇太子が出席するから、報酬は首脳級扱いだ。即金で支払われる。どうだ」
首脳級扱い、という言葉にレイターが反応する。
「ちっ、しょうがねぇな」

レイターは肩をすくめ、渋々了承した。
「いやあ、お前がいてくれてほんと助かったよ。じゃ」
* *
ティリーは二人の様子を見ていた。
クリスさんが手を振って嬉しそうに帰っていく。レイターは不機嫌そうな顔で肩をすくめた。
どうやら、レイターが警備チームに入ることになったようだ。休暇を楽しみにしていたのに、と同情する。
レイターはボディーガードとして腕がいいのは確かだ。
けれど、厄病神だ。

大丈夫だろうか。不安になる。
それにしても、レイターと思わぬ場所で会ったおかげで、普通に会話ができてよかった。ほっとしている自分に気がついた。
*
SSショーが開幕した。
初日から、大盛況だ。入場のためにネル星系ではあちこちで宇宙船渋滞が起きているとニュースが伝えていた。
わたしたちは会場の衛星内に滞在しているから、渋滞による遅刻の心配はない。エース専務は会場近くの高級ホテル。わたしとフェルナンドさんは、空港に停めているプレジデント号が宿泊先だ。
エースが出席するオープニングセレモニーは、コンベンションセンターの大ホールで開催される。わたしはスタッフパスを身に着けて会場へ足を踏み入れた。
一般客の入場が始まったホールには、マスコミのカメラもたくさん来ている。手荷物チェックなど警備が厳重だ。
入口付近で人の流れを誘導する男性を見た瞬間、胸がドキッとなった。
制服姿のレイターが立っていた。

ちゃんと髪の毛をまとめて、ネクタイをきちんと締めて、背筋がぴんと伸びている。『よそいきレイター』だ。
「お疲れさま」
仕事の邪魔にならないように声をかける。
「ったく俺は、休暇中なんだ」
レイターは突然警備に入ったにしては随分と手慣れていて、来場者に丁寧な対応をしていた。
初めて『よそいきレイター』を見た時、驚いたことを思い出す。
あれは、永世中立星の大統領夫人の警護だった。それから、アレンカトゥーナ展覧会の警備の時も、別人のようだった。
舞台の袖がわたしの待機場所だ。
客席の様子もモニターでウオッチできる。
視線がつい、モニターに映るよそいきレイターに吸い寄せられてしまう。
隣で待機しているフェルナンドさんに話しかけた。
「レイター、ってこういう警備の仕事もちゃんとできるんですね。普段、わたしのボディガードの時はずっとだらけてるのに」
「レイターさんは、短期のアルバイトでしょっちゅう首脳級会議の警護とか入れてますからね。ボディーガード協会のランク3Aですから、報酬がいいんですよ。今回のバイト代もおそらく一週間で一千万リルは下らないでしょうね」

「一千万リル?」
わたしの年収の倍以上だ。レイターが嫌そうな顔をしながらも、仕事を受けた理由に納得した。
*
SSショーの開幕を告げる派手な3D映像が、カウントダウンを始めた。各社一押しの宇宙船がホールを飛び回っているように見える。
「スリー、ツー、ワン。スペースシップショー、オープニングイベントのスタートです!」
司会者の声を合図に、エース専務とネル星の皇太子と連邦政府の交通大臣の三人が舞台に登場し、パネラーとして座った。
大ホールは満席だ。舞台の袖でシンポジウムを聞く。
エースの話は面白かった。
S1レースの裏話にとどまらず、今後の宇宙船業界の動向まで話は多岐にわたり、業界トップの経営者なのだということを実感する。

レーサーを続けながら、大学で経営学を専攻し卒業。
会社役員とレーサーの二足の草鞋を履きながら、S1では無敗を守り通している。並みの精神力じゃない。
さすが、わたしの憧れの人。
宇宙船好きの皇太子は、エースの話に興味深く耳を傾けていた。
年配の交通大臣は、次の連邦評議会に提案される宇宙航空法の改正案について、長々と説明を始めた。「スピードを出すならレース場で」と当たり前の発言を繰り返していて、退屈だ。
と、その時。
「宙航法改正反対!」
客席にいた男が、大声をあげて立ち上がった。 (4)へ続く
・第一話からの連載をまとめたマガジン
・イラスト集のマガジン
いいなと思ったら応援しよう!
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」