銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十三話(4) 宇宙に花火が打ち上がる
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男は手にした黒いものを、舞台に向けて投げつけようとしている。
と、右手をあげたその状態で、男の身体が固まったかのように動きを止めた。
男の背後から、制服を着た警備員が押さえ込んでいる。レイターだ!
レイターは男の口と腕を締め付けて、音もなく通路へと引きずりだした。あっという間の出来事だった。
やっぱり、レイターは『厄病神』だ。
警察官が駆けつけ、男は交通大臣に向けて靴を投げつけようとした傷害未遂の現行犯で逮捕された。
交通大臣は舞台上で頭を下げて訴えた。
「え~、宇宙航空法改正案にはいろいろなご意見がございますが、何卒、ご理解の程、よろしくお願いいたします」
*
シンポジウムの後、エース専務を宿泊先のホテルに送り届けると、わたしとフェルナンドさんはSSショーの会場へと戻った。
ちょうどそこへ不審者逮捕の手続きを終えたレイターが入ってきた。
「流石ですね」
フェルナンドさんがレイターに声をかける。
シンポジウムが無事に終わったのはレイターのおかげだ。
「あいつ動きが不自然だったから、見張ってたんだ」
お手柄のはずなのに、何となくレイターの声が沈んでいる。
「どうしたの?」
「あん?」
「さえない顔してるわね」
「クリスに手当を断られた。靴ぐらい投げさせてやれば良かった、と思ってさ」

「は? 何言ってるの」
「俺も宙航法の改正にゃ反対なんだよ。速度制限を増やそうって話だからな」
大臣が「スピード出すならレース場へ」と言っていたことを思い出した。
「でも、どうせレイターは速度制限なんて無視してるじゃない」

「無視してねぇよ! 捕まらねぇようにどれだけ苦労してると思ってんだ。ああぁめんどくせぇ。それだけじゃねぇ。この改正案は問題ばっかしだ」
そう言ってレイターは頭を抱えた。
レイターのような飛ばし屋の人たちにとって、交通大臣に靴を投げつけたいぐらい、困った法律改正ということのようだ。
フェルナンドさんがほっとした顔をした。
「レイターさんが改正反対派のリーダーじゃなくてよかったです。大臣を暗殺したりしないで下さいよ」
フェルナンドさんの冗談は笑えなかった。
「大臣の暗殺なんてケチなことしたって意味ねぇんだよ。俺ならもっとうまくやるさ」
暗殺をケチなこと、って言ってのけるレイターの感覚は相変わらずよくわからない。
*
明日の打ち合わせが終わり、わたしたち三人は一緒に関係者用出口から外へ出た。
夜の駐車場には、見るからに柄の悪そうな人たちがたむろしていた。ひと目で暴走族とわかる。
SSショーにはこういう人たちもたくさん来ている。
あまり関わりたくない。と思ったところへ、数人がわたしたちに近づいててきた。
逆立った髪に、鋲のついた服。
ナイフや鎖をわざと見えるように持っている。嫌な感じだ。
「『裏将軍』ちょっと顔貸して欲しいんだ」
「あん?」
レイターが間の抜けた声を出す。
『裏将軍』は飛ばし屋時代のレイターの呼び名だ。
「利子つけて返してくれるんだろな」
レイターったら、バカなことを言ってる場合じゃない。空気が緊迫している。相手は六人いた。
フェルナンドさんが、かばうようにすっとわたしの前に立った。 (5)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」