銀河フェニックス物語<出会い編> 第十一話(24) S1を制す者は星空を制す
<十一話のあらすじ>
エースの代わりにS1に出場したレイターはトップでゴールした。アーサーが探している汚職リストは金庫に保管中の優勝賞品に張り付けてあった。(1)~(23)
地下金庫へ向かう階段を駆けおりながらレイターはネクタイを締め直した。
暑苦しいが仕方ねぇ。警備の奴らは身なりにうるさい。

金庫室の前に到着した。入構証を通して中に入る。
レベルAの超弩級警備だが、今、俺は内部の人間だ。
「異常無いか?」
「はっ」
大型銃を手にした『銀総』の警備員が俺に敬礼する。
ちょうど、トロフィーなどの賞品が金庫からエレベーター内へ移されているところだった。
このエレベーターは表彰式のステージへ直行する。
『これより表彰式を行います』
金庫脇に吊るされたモニターから司会者の声が聞こえた。
エースの顔がアップで映っていた。
この映像でステージの進行状況がわかるようになっている。
「アルファダイヤは?」
「こちらです」
ちょうど金庫から取り出されたダイヤがエレベーター内に運ばれた。
紫のビロードの台の上に鎮座している。
直径三センチという大きなダイヤは薄いピンク色の輝きを放っていた。
「確認する」
白い手袋をはめて手に取る。
クリスから連絡が入っているから誰も俺を止めない。
ネックレスのためのチェーンがついていた。
重いな。純金か。
ダイヤをひっくり返すと、情報通りに透明なフィルムが貼られていた。
警備員に気付かれない様に素早くフィルムをはがしダイヤを元の位置に戻す。
あっけないほど簡単な作業だった。
エレベーターから出た俺は素知らぬ顔で指示を出す。
「窃盗団はステージ上で狙うことも考えられる。気をつけてくれ」
「わかりました」
制服を着た二人の警備員は緊張した面持ちで賞品と共にエレベーターに乗り込んだ。
*
金庫室の外の廊下へ出ると俺は無線でアーサーを呼んだ。
「アーサー。任務終了だ。リストは転送した。後は勝手にやってくれ」
「お疲れだった。こちらもあと少しでアリオロンのアジトがわれそうだ」

「ったくほんとに疲れたぞ、割り増し料金にしろよ」
金庫室へ戻る。
ふぅ。一息入れよう。
椅子に座ってモニターを見ると俺は思わず笑った。
ティリーさんが賞品を受け取るレースクイーンを担当していた。
ミニスカートが似合っていてかわいい。
受け取る仕草がぎこちなくて素人感丸出しだ。
おかげでエースの左手の不自然さがごまかせている。
『続いて、副賞のアルファダイヤが贈られます』
ダイヤを狙うなら勝手に狙え。
もうあの宝石に相場以上の価値はない。
エースがアルファダイアを手にした。
ティリーさんに手渡すために後ろを向く。
次の瞬間、俺は血の気が一気に引き、モニターに向かって叫んでいた。
「エース! あの野郎何しやがる!! ティリーさんが危ねぇじゃねえかよ」
ステージへの直行エレベーターはもう降りてこない。
くっそぉ。
俺は金庫室を飛び出すと二段とばしで階段を駆けあがった。
* *
ティリーは現実感の無い世界へ迷い込んだようだった。
自分が無敗の貴公子と一緒にS1の表彰台のステージにいる。

こんなこと妄想したことすらなかった。
ひっきりなしにたかれるマスコミのフラッシュに酔いそうになる。
エースはトロフィーを右手で高々と上げて優勝のポーズを決めている。堂々としていて左手を怪我をしているとはとても思えない。
トロフィーを受け取りワゴンに乗せる。
重たくてよろめきそうになる。エースはよくこれを片手でかかげたなと感心する。
「続いて、副賞のアルファダイヤモンドが贈られます」
50カラットのダイヤは、ピンク色に輝いていた。
エースはあのダイヤをどうするのだろう。
自分ではつけないだろうから、飾っておくのか、誰かにプレゼントするのか。
ダイヤを手にしたエースがわたしの方を向いてにっこりと笑った。
アルファダイヤを受け取ろうと手を差し出すと、エースは不自然な動きをした。
ネックレスのチェーンを広げて右手と左手に持つとわたしの頭上へとかかげた。
呆気にとられて見上げるわたしの目の前でゆらゆらと巨大なダイヤが揺れる。
そして、彼はダイヤをわたしの首にかけた。
信じられない。
エースのファンに殺される。 (25)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」