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銀河フェニックス物語 <恋愛編>  第八話 雪が生まれる場所で(1)

第七話 彼氏とわたしと非日常 (1)
<恋愛編マガジン>

 雪は嫌いじゃない。けれど、寒いのは苦手だから一年の四分の三が冬、と聞くと住みたい気はしない。向かっているのはそんな雪星だ。
 ソファーで寝転ぶレイターを見ると心配になる。『厄病神』の彼とフェニックス号で出張へ出かけると、仕事がうまくいかないというジンクスがある。
 そっと聞いてみる。
「厄病神は出てこないわよね?」
「ご安心あれ。裏任務は入ってねぇから」

 レイターがウインクした。よかった。会社のみんなは知らないけれど、彼がトラブルを引っ張ってくるのには訳がある。裏の任務がないということは『厄病神』はでてこない、ということだ。

 雪星仕様の小型試作機ブリ・アルを現地支社に引き渡すのが今回のわたしの仕事。
「ブリ・アルはすごいぜ。吹雪でも位置確認の誤差がほとんどねぇんだ」
「吹雪?」
 ブリザード・アルファのコンセプトは『雪星でも安全』ではあるけれど、吹雪での飛行は想定していない。風速がある一定値を超えれば飛行禁止命令が出るのだから。
「限界実験手伝ったのさ。そしたらホワイトアウトでも結構使えてさ。こいつ軍用機よりすごいぜ」
 吹雪でも飛ばせます、という、キャッチコピーはお客さまの興味を惹くだろうか。いや『銀河一の操縦士』が飛ばせても一般人が扱えるとは思えない。

 窓の外におろしたてのボールのように真っ白な惑星ロヤが近づいてきた。

「シートベルトをご着用下さ~い。重力圏へ突入いたしま~す」
 おちゃらけたレイターの声を聞きながらベルトを締める。フェニックス号は厚い雲に突入し、前方のメインモニターは白一色に塗りつぶされた。機体が小刻みに揺れている。気流の激しさがうかがわれる。
 雲を抜けても眼前は白一色だった。雪で視界がよくない。首都のロヤタウンは地表も建物も雪に覆われていた。
 入植当時は手軽にウインタースポーツが楽しめるリゾート星として人気があったというけれど、吹雪が止まない異常気象が発生して人足は遠のき、今では人口三十万人というさびれた小規模星だ。

 ロヤタウンの郊外にクロノスの支社がある。広大な空港駐機場を自社で構えられるのは辺境地域ならでは。
 到着と同時にブリ・アルのお披露目を兼ねて試験飛行をすることになっている。フェニックス号の後部格納庫で真っ赤ないちごを思わせるブリ・アルに乗り込んだ。

 屋外の甲板にせり上がると雪が激しくぶつかってきた。強風で機体が小刻みに振動する。
「こちらブリ・アル。これより予定のテストコースを飛行します」
「こちら管制。了解しました」
 機体が静かにフェニックス号から浮上した。
「ティリーさん。じゃ、行くぜ」
「うん」

 操縦桿を握ると、わたしの彼氏はかっこよくなる。ちらりと横顔を見る。
 管制室でロヤ支社の人たちがブリ・アルを見守っている。そこには同期のアマンダもいるはずだ。
(2)へ続く


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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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