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銀河フェニックス物語 <恋愛編>  第八話 雪の生まれる場所で(2)

銀河フェニックス物語 総目次
第八話 雪の生まれる場所で (1)
<恋愛編マガジン>

 フロントガラスはパイ投げでもされたように真っ白で、目視はできない。操縦席のレイターはモニターを見ながら飛ばしている。ゲームセンターのシミュレーション機と錯覚しそうだ。
 ある高度まで行ったところで、機体は急旋回した。身体がシートにぐっと押し付けられて、上下が一回転する。続いて右方向への急旋回、アクロバット飛行だけど怖くはない。遊園地のジェットコースター感覚。レイターはわたしがどの程度のGまで平気かよくわかっている。それにしても、これ、絶対テストコースから外れている。
 と思ったら、管制官の叫び声が耳に入った。目の前スレスレを管制塔が通り過ぎる。
「接近し過ぎよ!」
「ごあいさつ。ごあいさつ」
 レイターは歯を見せて笑った。わざとだ、この人。

 支社と直結する格納庫の前にブリ・アルは音もなく着陸した。風が強いのにぶれないのはブリ・アルが高性能なのか、操縦が上手いのか。機体が格納庫へとゆっくりと入っていく。雪が入り込まないよう二重扉になっていた。
「この機能が優秀なんだぜ」
 とレイターがスイッチを押すとブリ・アルに積もった雪が急速に溶け落ちた。ボディーの速乾性も売りの一つだ。

「室温は十八度か。ティリーさん。外へ出る前にマスクをつけな」
 とわたしに薄くて透明なフェイスガードを手渡した。
「マスク?」 
「今、ロヤタウンは変な風邪が流行ってんだ。気をつけた方がいい」
「ふ~ん、レイターはつけないの?」
「俺はいいんだ。銀河一の操縦士は風邪をひかねぇって言うだろ」
 
 ブリ・アルの周りにロヤ支社の人たちが集まってきた。同期のアマンダの姿もある。
 風邪が流行っているというのは一目見てわかった。全員が透明なフェイスガードを付けていた。

「ティリー、元気そうね」
 彼女に会うのは二年ぶりだ。昔と印象が変わった気がする。
「アマンダ、少し太ったんじゃない?」
「失礼ね、いきなりそれはないでしょ」
「ご、ごめん」
 確かに失礼だった。でも、悪い意味で言ったつもりじゃなかった。
 操縦席から降りてきたレイターがうれしそうにアマンダの手を握った。
「アマンダさんは、前より健康的でいい女になったなあ」

 それだ、わたしの言いたかったことは。以前より尖った雰囲気がない。

 本社の営業にいた時、アマンダはいつも忙しくしていて一緒に遊びに出掛けたことはない。わたしとは比べ物にならないほど優秀だった彼女は、地方勤続制度を志願して半年でロヤ星へ帰ってしまった。
 わたしの故郷アンタレスも辺境地域だから、地方出身のアマンダには親近感があった。地元で暮らすのは精神的にいいのかも知れない。

「厄病神さんも相変わらずね。女性には口が上手い」
 親し気なやりとりにちょっと驚く。
「アマンダとレイターって知りあいだったの?」
「何度か仕事でご一緒したわよ。厄病神は発動しなかったけど」
「そうだったんだ。知らなかった」
「レイターはここでも有名人よ。S1でエース社長の無敗記録をレイターが破りそうになった時は支社中が大騒ぎだったわ」

「ほんとは、破っちまいたかったんだけどな」
 レイターが口を尖らせる。
「私が知ってるティリーはエース社長が推しだったんだけれど、どうして推しのライバルとつきあってるわけ?」
 驚いて笑顔のアマンダを見つめた。レイターとつきあい始めたこと、彼女には話していなかったのに。
(3)へ続く


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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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