銀河フェニックス物語 <恋愛編> 第八話 雪が生まれる場所で(3)
銀河フェニックス物語 総目次
第八話 雪の生まれる場所で (1) (2)
<恋愛編マガジン>
「わたしたちのこと知ってたの?」

「当たり前でしょ。ここは遠いけれど、情報過疎にならないようにちゃんと本社と連絡取ってるんだから。でも、直接顔を見ないと聞けない話もあるから、ティリーが来てくれてよかった。社内事情も教えてほしいし」
できる社員は違う。情報に向き合う姿勢が違う。わたしが事前に送ったブリ・アルの資料も読み込まれ、雪星の視点で疑問点がまとめてあった。
案内されたオフィスでも全員がフェイスガードをしていた。
「新型のウイルス感染症なんですって。微熱が出て体がだるくなるけど大したことはないのよ。でも、感染力が強いから熱が下がってから三日間は出勤停止って決まっててね。会社休めてラッキー、なんて話しているところよ」
あのアマンダが随分のんびりしている。
ロヤ支社は社員が二十人しかいない。支社長とアマンダ以外は現地採用だという。雰囲気が家族的で、よくある本社採用と現地採用の確執とは無縁な感じだ。
「本社に戻る気はないの?」
「ここの仕事は、本社にいた時の様な刺激は少ないけど、今の私にはちょうどいいのよ」
ちょうどいい、というのは本心だろうか。どこか投げやりな感じに聞こえた。
**
ティリーさんが支社にいる間、俺に仕事はない。のんびりフェニックス号の機体チェックをしていた時だった。
あいつから呼び出しメッセージが届いた。一般人を装って連邦事務局の窓口に並べという。無視してぇが、嫌な予感がする。雪が降る街へと繰り出す。
「補助金のご相談ですね。二番のお部屋へお入りください」
案内された部屋に入ると、最高機能のフェイスガードを付けた将軍家の跡取りが机の前に座っていた。
「あんた、事務職員に降格されたのかよ」
今回、連邦軍の仕事はなかったはずだ。なのに、どうしてアーサーがここにいる?

「お前の申請に不正使用がないかチェックにきたんだ」
「は?」
「というのは冗談だ」
無意識のうちに銃を向けていた。

「早く用件を言えっ」
「今、このロヤ星で流行している感染症のことは知っているな」
「会社が三日間休める便利な風邪だろ」
「連邦保健機構がパンデミックの警戒レベルとしてフェーズ1に認定した」
「フェーズ1じゃ、あんたが出てくるほどの話じゃねぇだろが」
「このウイルスが致死率の高い強毒性に変異する恐れがある。その場合、一気にフェーズが最高値まで上がることが想定される。対応をロヤ星政府と詰めることになった」
面倒な話はとにかく深入りしないに限る。
「いやあ、あんた珍しく親切だな。情報サンキュー。災害派遣は軍本体のお仕事だろ。俺は関係ねぇからフェーズが上がる前にとっととティリーさんと退散するよ。じゃあな」
「ここからはロヤ星の大統領にも伝えていない機密だ。このウイルスは人為的に作られていることが判明した」
俺はこの部屋から急いで出るべきだ。なのにアーサーの言葉がカウボーイの投げ縄のように俺を捕まえる。予感はあった。あいつが親切で俺を呼ぶはずがねぇ。
「……生物兵器、っつうことかよ」
腹の底から大きなため息が出た。
ティリーさんと一緒の時になんでだよ。厄病神って奴は俺じゃなくてティリーさんに付いてるんじゃねぇのか。
(4)へ続く
いいなと思ったら応援しよう!
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」