銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (1)
「『厄病神』の宇宙船・・・」
はぁああ。わたしは肩を落としてため息をついた。
新入社員のわたしだって知っている。その船で出かけると契約が成立しないという噂を。今回、初めての出張なのに。
一緒に営業部に配属された同期のベルがわたしの肩をたたいてはげましてくれた。
「船は『厄病神』だけど、トップセールスマンのフレッド先輩と一緒なんでしょ。ティリーがうらやましいよ」
フレッド・バーガー先輩は、営業部一の腕利きで、成約率は百パーセントと言われている。その手腕を間近に見られるのは勉強になるのだけれど。
「『成約率百パーセント』が勝つか、『厄病神』が勝つか見ものだね」
ベルは呑気なことを言っている。厄病神に勝ってもらっては困るのだ。
わたしは業界トップの宇宙船メーカー『クロノス社』で働くアンタレス人、ティリー・マイルド。

高倍率を勝ち抜いて就職が決まり、地方のアンタレス星系から銀河連邦中心部のソラ系へと出てきた。
*
「よろしくお願いします」
一緒に出張へ向かうフレッド先輩に挨拶をする。
トップ営業マンの先輩は、まるでビジネス誌のモデルのようだ。
栗毛色の髪の毛は乱れ一つない。ストライプの入った三つ揃いのスーツは見るからにお値段もお高そう。

「みだしなみは大切だよ、ティリー君。“服は心を映す鏡”だからね」
「はい」
と返事をして心配になった。わたしが着ているのは学生時代に買った何の特徴も無いスーツだ。
二人で社内の駐機場へ向かうと『厄病神』の船が停まっていた。銀色のボディに「フェニックス号」と書かれた星系外航行用の中型船。
それにしても、この船うちの社の宇宙船じゃない。普通はクロノス製の船で出かけるのに。
『厄病神』がフリーランスの操縦士、兼ボディガードでクロノスの社員ではないとは聞いているけれど。
「先輩、この船どこのメーカーのものなんですか?」
わたしの問いにフレッド先輩は眉をひそめた。
「僕も知らないんだよ。拾ったらしいんだが、クロノスと競合する会社の船ではないからいいということになっているんだ」
宇宙船を拾う? 意味がわからない。
船の入り口に立つと、ドアが開いた。と、そこに背の高い『厄病神』が立っていた。
「おいフレッド、辺境まで三日で行きてぇなら先に言えよ。あんた何年この仕事やってんだよ」
随分言葉遣いの悪い人だ。詰問調でフレッド先輩に迫ってきた。
「き、君の船なら大丈夫と思ったからさ」
「ふむ。ま、そうだな。なんと言っても俺は『銀河一の操縦士』だからな」

ぼさぼさの金髪。シャツは第二ボタンまではだけて、ネクタイはゆるゆるだ。”服は心を映す鏡”というフレッド先輩の言葉を借りると、『厄病神』からはだらしなさがにじみ出ている。
彼とわたしの目があった。
「およ、学生さん? ハイスクールの制服が似合ってるねぇ」
そう言いながら『厄病神』はわたしの手を握った。
「違います。失礼じゃないですか!」
思いっきり手を振り払ってしまった。『厄病神』はにやりと笑い、
「冗談だよ。ティリー・マイルドさん。俺はレイター・フェニックス。ようこそフェニックス号へ」
と、わたしを船に招き入れた。
第一印象からして最悪。
さすが『厄病神』だ。
わたしは十六歳。
アンタレスでは十六歳で成人する。でも、ソラ系の十六歳はほとんどがハイスクールの学生だ。
この間もお客様からアルバイトの学生と間違えられた。”服は心を映す鏡”と言う言葉がわが身に降りかかってきた。
もうちょっと大人っぽいスーツにすればよかった。少し後悔した。 (2)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」