銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (2)
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「失礼じゃないですか!」と怒るところが子どもだよな。
ティリーの後ろ姿を見ながらレイターは目を細めた。十六歳だもんな。
それにしてもアンタレス人特有の赤い瞳を大きく見開いて怒る姿は何とも言えずかわいい。
淡い黄緑色の髪の毛を少しだけ後ろで束ねて、リボン型のバレッタで止めた髪型も似合っている。
服は地味だがセンスは悪くねぇお嬢さんだ。
* *
この船、随分と変わっているわ。
ティリーは操縦席の前で足を止めた。

リビング、ダイニングそれにキッチンが操縦席とつながって一つの空間にある。
わたしは新人とは言え宇宙船メーカーの営業担当だ。船のことに多少は知識がある。
普通、操縦席は居住空間と分離する。これじゃあ、操縦席が付いた家みたいじゃない。
船の中ほどに船室が並んでいた。
わたしに割り当てられた個室にはスーツケースが運び込まれていた。ホテルのシングルの部屋といった感じ。バス、トイレがついている。仕事机と棚があり、備え付けのベッドは自動で壁に収納できる。
荷物を整理して一息入れようと丸い窓のブラインドを開けたら、外に大きく土星が見えた。びっくりした。うそ、もう宇宙空間にいる。
いつの間に重力圏抜けたの。出発するというアナウンスもなかった。
*
フェニックス号のリビングに顔を出すとフレッド先輩とレイターさんがソファーに座っていた。
「お袋さん、コーヒー頼む」

お袋さん、というのがこの船のメインコンピューターらしい。
レイターさんが頼むと、いい香りがして三人分のコーヒーが出てきた。ちゃんとカップが温めてある。ひとくち口にして驚いた。美味しい。
「困ったことがあったら、何でもお袋さんに頼みなよ」
レイターさんがわたしに言った。
「お袋さん・・・」
口にしてみたけど普段言い慣れていない言葉で呼びにくい。
「マザーと呼んでください」
女性の声がした。どこにスピーカーがあるのだろう。船全体から聞こえた気がした。
*
コーヒーを飲みながらレイターさんがフレッド先輩に詰め寄った。
「とにかく、特別手当を申請しろ」
わたしたちの出張先である辺境の惑星ラールシータまで通常航行だと一週間かかる。そこを三日で飛ぶので手当てを弾むように本社へ申請しろ、という話だった。
「わかったから、君はとにかく僕たちを目的地へ時間通りに連れて行ってくれ」

フレッド先輩も苛立っていた。
この初出張が慌ただしいのは身をもって感じている。
昨日、突然、部長に出張を命じられた。惑星ラールシータの取引先との間でトラブルが発生したのだ。
レイターさんがわたしに話しかけてきた。
「お嬢さん、ラールシータってどんな星か知ってる?」
出張が決まり、急いで資料を読み込んだ。
「高重力の巨大惑星です。十Gという高重力を利用した製品の生産や、実験、検査が主な産業です」
「よく、お勉強してるねぇ。で、何しに行くんだい?」
わたしのことを子ども扱いしている。
腹は立つけれど、ここはこらえて説明する。仕事は理解しておいてもらった方がいい。
「ラールシータにガーディア社という宇宙船の高重力耐久検査をする会社があるので、そこに、来期の予約をお願いに行くんです」
「ふ〜ん。そんなの通信で頼めばいいじゃん」
「通信では断られたんです」
「なんで?」
「それがわからないから、直接行くんです」 (3)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」