銀河フェニックス物語<出会い編> 第五話(1/25) 今度はハイジャックですって?!
第一話 永世中立星の叛乱 第二話 緑の森の闇の向こうに 第三話 レースを観るならココと言われて 第四話 朱に交わって赤くなって
アラ星系に入ったところで操縦席の『厄病神』がつぶやいた。
「一般船はアラツーの着陸許可が下りにくくなってんな」
「え?」
焦ることを平然とした顔でこの人は言う。
惑星アラツーで先方との打ち合わせが入っているのはきょうの午後二時。今、着陸許可が出ないと間に合わない。
やっぱりこの宇宙船、フェニックス号で来たからだ。ティリーは頭を抱えた。
『厄病神』の船で出かけると契約が失敗すると言うジンクスがある。
わたしもこれまで大規模デモに巻き込まれたり、環境テロに襲われたり、散々な目に遭ってきた。
泣きそうになりながら『厄病神』のレイターの顔を見た。

「大丈夫さ、そんな顔しなくても。路線船使えばすぐ入れっから」
そう言ってレイターはアラツーの隣の惑星、アラワンへとフェニックス号の針路を変更した。
*
アラワンはすぐに入星着陸許可が下りた。
「こっから路線船に乗ればアラツーまで二十分さ」
レイターの言葉を聞いて安心した。これなら打ち合わせに余裕を持って間に合う。
*
宇宙港の駐機場にフェニックス号を置いて、隣の路線船乗り場へと向かう。
レイターが取ってくれた乗船券を見てびっくりした。銀色に光るプラチナカードだ。生まれて始めて見た。
恐る恐るたずねる。
「これってプラチナカードよね?」
「ああ『カシオペア』の乗船券さ」

「カシオペアァ?!」
『カシオペア』と言えばセレブリティ御用達の超豪華客船だ。金と暇のある人が銀河一周旅行に使う船。
わたしはあわてた。
「一体チケットいくらなのよ?」
「あん? どうせ会社の金だろ」
「ちょ、ちょっと待って」
会社が規定した出張料金を超えたら自分でもたなくちゃいけない。
「豪華客船は楽しいぜ」
レイターはうれしそうに笑った。
わたしだって豪華客船に憧れはあるけれど、出張でニ十分乗るために大金をはたくつもりはない。
「他の便を探してちょうだい」
「こんな機会そうねぇぜ、いいのかい?」
「構いません。カシオペアはまたの機会で結構です」
またの機会があるのかどうかはわからないけれど、とにかく今日は仕事なのだ。
「ふ~ん。二時に間に合うのはこれしかねぇんだけど」
「え?」
絶句した。遅刻したら状況はさらに悪くなる。
「厄病神のせいだ」
わたしは肩を落とした。レイターのせいじゃないけど、レイターのせいだ。
「大丈夫だよ」
のんきなレイターの顔を見たら腹が立ってきた。
「何が大丈夫なのよ! 出張に豪華客船使いました、って会社に説明するのはわたしなのよ」
「だって必要経費だろ」
確かに必要経費だ。しかし最近、経費削減がうるさいのだ。
「この船しか先方に間に合わないって証明書類を路線会社からもらっておかなくちゃ」
はあ、めんどくさい。わたしはため息をついた。
「そんなもんいらねぇよ」
レイターはわたしの顔を見てニヤリと笑った。
「星系内移動の三等座席は普通料金だぜ」
「え?」
チケットをあらためてみると三等座席と記してあった。
全身の力が一気に抜けた。そういうことは早く言ってよ。物を知らないわたしが悪いとはいえ、大騒ぎしたのがバカみたいだ。
レイターは楽しそうな顔をしている。
この人わざと言わなかったんだ。わたしがあわてるのを見て喜んでいたのだ。
「あなたってサイテーの厄病神よ」
「ティリーさんは怒った顔もかわいいねぇ」
もう相手にする気も失せた。
*
長距離用大型船のカシオペアを見上げる。大きい。これだけの船を動かすのは大変だろう。
「一体この船でどのくらいの人が働いているのかしら?」
わたしの疑問にレイターが答えた。
「長距離航海船は労働条件が悪いからほとんど人型のスタッフロボットさ。人間は船長と航海士とCAが多少乗ってるだけだぜ」
タラップから客船の中へと入る。
「ご利用ありがとうございます」
かしこまった制服を着たカシオペアの乗員は三等座席のわたしたちにもうやうやしく頭を下げた。人間かロボットかよくわからない。 (2)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」