銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十二話(1) キャスト交代でお食事を
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・<出会い編>第三十一話「恋の嫉妬と仕事の妬み」
本社で下りエレベーターに乗り込んだベルは、声を掛けられるまで全く気づかなかった。
「ベルさん、お帰りかい」
真横に立っていた姿勢のいい男性が、レイターだったとは。
「あら、レイターは仮装パーティ?」
「役員の警護だったからな」

ティリーが名付けた『よそいきレイター』だ。
髪の毛固めて、ネクタイをきっちりしめて、普段のだらしない格好とは大違いだ。
「きょうは、これであがりよ」
レイターと正面玄関から外へ出て並んで歩く。
会社の近くにオープンした、ビストロフレンチの前を通る。
いつも混んでいるのに、夕方早めの時間だからか人が並んでいない。
「夕飯、一緒に食べない?」
思いつきでレイターを誘った。
「いいねぇ」
*
席に座って正面から見ると、レイターは結構イケメンでかっこいい。
フェル兄には負けるけど。
「このワインはお値打ちだぜ、当たり年だ」
ソムリエみたいにワインも詳しい。
便利な人だ。
赤ワインをボトルで頼む。
グラスを傾けながら、レイターに聞いてみる。
「ねぇ、ティリーのこと、どう思ってるの?」

「あん?」
ヨマ星系で立てこもり事件にあってから、ティリーの様子がおかしい。レイターのことを意識してる。
「レイターのこと、どう思ってるの?」ってティリーに詰め寄ると「レイターには『愛しの君』がいるから」ってかわされた。
間違いない。
ティリーはレイターのことが好きなんだ。
不思議なことにそういう気持ちって、周りに見えてて本人だけ気づいてなかったりする。
女友だちとしては、お節介を焼きたい、と親切心がもたげてくる。親切心? 違うな、わたしがキューピッド役を面白がってる。
今度はレイターを攻めてみよう。
「『愛しの君』はもういないんでしょ。七年前に亡くなったって聞いたよ」
レイターが困った顔をしながら答えた。
「七年経とうが、俺は愛してんだ」
「今も?」
「今も」
「これからも?」
「これからも」
「一生?」
「一生」

レイターが『愛しの君』のことを本気で愛してることはわかる。
けど、困った表情をしているのは、ティリーのことも好きだからだ。
「じゃあ、どうして『俺のティリーさん』て、ちょっかいかけるわけ?」
「他の男と付き合って欲しくねぇから」
「何なのよ、それ」
「俺のわがままさ」
* *
ティリーさんを所有はしねぇ。
だが、他の誰にも所有されたくねぇ。俺の単なるわがまま。
クライアントの警護対象者。かつ宇宙船レースの観戦仲間、っていう現在のつかず離れずのこの距離間が、俺の中では絶妙のバランスをとっている。臨界点ギリギリだ。
この間、立てこもり犯から救出する際にティリーさんを抱きしめた。あまりにかわいくて、心が持っていかれそうになった。やばかった。

リアルな感触が、俺の幸せな記憶を上書きしそうになる。
いつまでも、このままでいるわけにはいかねぇことはわかってる。
ダチのロッキーに言われるまでもなく、問題を先送りしていることもわかってる。
それでも、ティリーさんに好きな人ができるまで、楽しませてもらいたい、っていう俺のささやかな願い。
ベルさんが、正しい指摘をする。
「レイター、あなたって何でも器用にこなせるのに、恋愛は不器用だよね」
「不特定多数の相手は得意だぜ」
「そういうこと言ってるからダメなのよ。ティリーは、レイターのこと好きなんだよ」

ベルさんは、思いっきり直球を投げてきた。
こんな剛速球。誰も打てねぇよ。
これ以上は危険水域だ。
「前にも言ったろ、俺は特定の女性とはつきあわねぇ主義なんだ」
バントのような、しょぼい答えを返す。これでこの話は終わりだ。 (2)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」