銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十二話(2) キャスト交代でお食事を
・銀河フェニックス物語 総目次
・第三十二話 まとめ読み版 (1)
俺は運ばれてきたリエットを、焼き立てのバゲットに乗せて口に入れた。
きちんと丁寧に作られた味だな。
赤ワインとよく合う。
「でもさあ、どういうわけか、ティリーも一歩引いてるんだよね」

ベルさんは話を続けた。
どうやら俺を恋愛話のゲームに出塁させたいらしい。
「だろうな」
「どうして?」
「まじめに答えて欲しいかい?」
「もちろん」
あんまり食事中にしたい話じゃねぇが、しょうがねぇ。
「俺が人殺しだから」
「・・・・・・」
ベルさんが無言で俺を見つめる。
「俺は、ティリーさんの目の前で、人を撃ち殺したことがある」
ティリーさんの初めての出張。
俺は、狙撃犯を射殺した。

思いのほか、ベルさんは平然としていた。
「さすが厄病神だね。でも、理由があったんでしょ」
「そりゃそうさ。正当防衛さ。あっちが撃ったから俺も撃った」
ベルさんは、じいさんが皇宮警備の元長官、父親は連邦保安官だ。血なまぐさい話に慣れてるな。
「ティリーは、平和で真面目な星の出だからね」
出身星系のアンタレスでは、銃を所持することすら許されない。
メインディッシュの仔牛のソテーが、二人分運ばれてきた。
俺が切り分ける。
ナイフがいい具合に肉に入る。適度な焼き加減。少しだけにじむ血を見ながら、今度は俺がベルさんにボールを投げた。
「ベルさんは、もし、フェルナンドが目の前で人を殺したらどうする?」
「ど、ど、どうしてフェル兄の話が出てくるのよ」

フェルナンドはベルさんの従兄弟で、俺と同じボディガード協会ランク3Aの同業者。先日、ティリーさん含め4人で食事に出かけた。
「あんた、フェルナンドのこと好きなんだろ?」
直球ストレートでお返しだ。
「なんでわかったの?」
わからないと思っている方が不思議だ。ベルさんの顔が赤くなった。かわいい。
俺はベルさんの皿にソテーを取り分ける。
「そりゃわかるさ。恋する瞳が輝いてる」
ベルさんが、俺を見て答えた。
「フェル兄は、意味なく人を殺したりしないよ」
「俺だってしねぇよ」
と返したが、俺は殺し屋だ。フェルナンドとは違う。
「わたしは受け入れるよ。フェル兄のこと信じているから」
フォークに刺した肉を口に入れてゆっくりと噛む。塩加減も固さも文句のつけどころがないソテー。
フェルナンドがうらやましいな。
俺は、いじわるな質問がしたくなった。
「フェルナンドが隠し事してたらどうする?」

「構わないよ。わたしに隠すことに理由があるんだから、仕方ないよ」
すごいな、ベルさんは。
俺は素直に感動した。フェルナンドに聞かせてやりてぇ。
もし、ティリーさんが、俺にここまで全幅の信頼を置いてくれたら・・・。
何、妄想してるんだ俺は。浮かんだ考えを即座に打ち消す。
連邦軍の特命諜報部員は、家族にもその所属を隠して活動する。
俺に家族はいねぇ。
フローラが死んで、もう誰も愛することもないし、家族を持つこともない。
強いて言えば、将軍家が家族代わりだ。
こんな俺は諜報部員に適任だ。
「お前、父上のために働かないか?」
特命諜報部の隠密班を受け持つことになったアーサーの申し出を、俺は悩むことなく受け入れた。

これまでに俺は、何人殺しただろう。
もともと褒められた育ちじゃねぇし、戦地でも随分と活躍して、暗殺協定にも躊躇しなかった。
こんなことは、ティリーさんに明かせねぇ。
銃も軍隊も嫌ってるティリーさんと俺が、つきあえるわけがねぇんだよ。
俺は特定の女性とはつきあわねぇ。
そのことを了解した上での、深い仲の女友だちはいる。
いつ死んでもいい楽しい毎日。それ以上、俺が人生に求めるものは何もねぇ。 (3)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」