銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (11)
・第一話の初回スタート版はこちらから
翌日、エアカーの助手席でティリーは緊張していた。
運転席にレイター、後部座席にフレッド先輩。わたしたちを乗せたエアカーはまもなく市内のドームから外へ出る。
重力制御されたチューブ道路に入った。
エアカーのナビゲーションシステムからマザーの声がした。
「重力フィールドから離脱します」
フロントガラスがガスで真っ白になる。
濃霧のような白いガスを通り抜けるとわたしは思わず目を見張った。

「すごい。何もない」
チューブ道路の外には平らな茶色い大地がどこまでも続いていた。遥か先の地平線まで見渡せる。
「気をつけな。このチューブの外は十Gの高重力だ。あっと言う間にぺちゃんこだぜ、って今もぺちゃんこだっけ」
笑いながらレイターはわたしの方を見た。ほんとに失礼だ。
「それ、わたしのこと言ってるの?」
「レイター、やめたまえ。ティリー君に失礼だ」
「へいへい」
レイターと違ってフレッド先輩はちゃんとわたしをパートナーとして見てくれている。わたしは嬉しくなった。
*
チューブ道路はそのまま巨大な平屋建ての建物につながっていた。
壁に大きくガーディア社の名前が描かれている。目的地の高重力検査場だ。
検査場内は重力制御されていた。
駐車場にエアカーを停めて受付に向かう。受付にラール八世の肖像画が飾られていた。
その隣に同じ大きさの肖像画が並べてあった。グレーの髪のスーツ姿の男性。

絵を見ながらレイターが言った。
「さて、誰でしよう?」
また、試されてる。この肖像画、資料に載っていたことは覚えている。
レイターがニヤリと笑った。
「学生さんはしっかりお勉強しろよ。ここの社長さ。教皇ラール八世の弟ガーディ社長」
「あ、そうだ」
思い出した。ここの会社の社長は王弟だった。
受付を済ませると奥の部屋へと案内された。
レイターがボディガードとしてついてきた。厄病神にはついて来て欲しくないのに。
部屋へ入ると、白衣を着た男性と、スーツ姿の女性が立っていた。

「クロノス宇宙船会社の方ですね。社長秘書室のアドゥールです」
女性が握手の手を差し出した。きれいな人だ。
ストレートの髪が首筋の辺りできれいに切りそろえられていて隙がない。それでいて女性らしい柔らかな雰囲気もまとっている。
落ち着いた色のスーツを颯爽と着こなしていて、仕事ができる人、という感じ。
“服は心を映す鏡”と言う言葉を思い出した。
「レイター・フェニックスです。よろしく」

どうしてレイターが嬉しそうにアドゥールさんの手を握っているのか。
わたしのことはぺちゃんこ呼ばわりするのに、腹立たしい。
「どうかしましたか?」
アドゥールさんがわたしを見つめた。
まずい、わたしのいらだった気持ちが先方に伝わってしまった。厄病神のせいだ。
「いやあ、貴女が美しいから、ヤキモチ焼いているんですよ」
あなた、と言う丁寧な言葉をレイターの口から始めて聞いた。 (12)へ続く
・第一話から第十五話まで連載をまとめたマガジン
・イラスト集のマガジン
いいなと思ったら応援しよう!
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」