銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (12)
・第一話 初回はこちらから
永世中立星の叛乱 (11)
白衣を着た男性は検査技術部の技師長だった。優秀なのだろう、まだ若い。
「ガロンと申します。我々技術者の目から見ても、クロノスさんの船はいつも安定した製品で感心しています」

優しそうな雰囲気の人だ。自社の製品を誉められるとやっぱり嬉しい。
アドゥールさんが厳秘と書かれた資料を手にして言った。
「正式発表はまだですが、今期の検査は例年通り御社の製品に5S-Lが認定されます。ご安心下さい」
アドゥールさんは声も落ち着いていて、同性のわたしが見ても素敵だった。
「後ほど、ガロン技師長が地下にある高重力検査場をご案内いたしますね。検査状況をご確認ください」
「ありがとうございます」
フレッド先輩が頭を下げた。ここまではうまくいっている。
問題はこの後、来期の件。
フレッド先輩が切り出した。
「来期の検査の件ですが、例年通りの予約をお願いいたします」
アディールさんは、目を伏せた。嫌な予感がする。
「通信でお伝えした通り、来期の予約はできかねます」
「それは、どの様な理由ですか?」
フレッド先輩がたずねる。
「理由もお伝えできません」
「金額面でご不満でも」
「いえ、そう言う訳ではありません。御社だけでなく、全体的に検査の受注を控えることになりました。ラールの御心のままに」

「それは、ラール王室からの指示と言うことですか」
「そう、考えていただいて結構です。私たちにとってラールの指示は絶対です」
アドゥールさんは絶対という言葉に力を入れた。ラールシータは独裁の星だ。
ガーディア社は王弟が社長で、社長秘書室というのはラール王室と繋がった部署。
ここまではっきり断られたらどうすればいいのだろう。
成約率百パーセントを誇るフレッド先輩もさすがに苦しい表情をみせている。
三日かけてここまで来て、このまま「はい、そうですか」とソラ系へ帰る訳にはいかない。
フレッド先輩は時間を稼ぐ作戦に出た。
「いったん持ち帰らせていただけますか。本社と相談いたします。その上で、あらためてお話させていただきたい」
「答えは変わりませんがよろしいですか」
明日、今度はドーム市内の中心部にあるガーディア社の本社で打ち合わせを持つことになった。
*
この後は、高重力検査の確認。
「地下検査場に入るにあたり、こちらのカードにサインをお願いします」
白衣を着たガロン技師長がわたしたち一人一人に首から下げるIDカードを手渡した。
「地下に入ったら、このカードを絶対に身体から離さないで下さい。識別重力制御の個別キーになってますから。誤ってカードを外すと十Gに襲われます。最悪の場合、命を落とす恐れがあります」
地下検査場内は十Gで、この小さなカードが一人ずつ一Gに重力制御するのだという。
カードに「ガーディア社の責任は問いません」という文字が浮かんだ。カード本体が誓約書になっていた。少し緊張する。
「俺のサインは高いぜ」

レイターがバカなことを言っている。
気を取り直してサインをし、首から下げる。
カードをセンサーにかざすとセキュリティゲートのフラップが開いた。
「フラップの開かない区域へ入ったら十Gにつぶされますから注意してください」
このカードがセキュリティシステムの役割を果たしていた。 (13)へ続く
・第一話から第十五話まで連載をまとめた読みやすいマガジン
・イラスト集のマガジン
いいなと思ったら応援しよう!
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」