銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (41)
・第一話のまとめ読み①~(10) ②~(20) ③~(30) ④~(40)
神殿の集中電算室に向かってオルダイは走っていた。

俺の前にドロテ、後ろにレイター。
近衛兵もバカではない。
俺たちの目的地がわかったようだ。集中電算室に近づくにつれ警備がきつくなってきた。
電算室の前に近衛兵五人が銃を構えて立っていた。
背後のレイターから声がした。
「俺が奴らの気を引く。あんたら、部屋開けてくれ」
言うが早いかレイターは飛び出した。
めちゃくちゃだ、あいつ。
近衛兵に小型爆弾を投げつけた。
バンッ
小規模爆発で近衛兵が後退する。
レイターが正確に近衛兵の右胸を撃つ。
その隙にドロテが生体認証でドアを開けた。
俺とレイターが滑り込む。
「わたしはここで追っ手を防ぎます」
「すまぬ、ドロテ」
集中電算室の内側から鍵をかけた。
暗い電算室の中は空気がひんやりしている。
ここにある情報処理電算機は巨大なパイプオルガンのようだ。
床から天井まで突き抜けた円柱がいくつも走り、ところどころ光が点滅している。
その手前にコントロール用のキーボードと椅子が置かれていた。
キーボードを操作しながらトライムス少佐に渡された連邦軍の非接触型データ収集機アルボードを本体に近づける。
カード状の本体に十五という数字が浮かび上がった。
「十五秒でデータを抜いたら、すぐに出るぞ」
レイターに声をかけた。
「待てよオルダイ。折角ここまできたんだ。もっと面白いことしようぜ」
こいつ何を言い出すのか。
「重力制御装置をいただくのさ」
そう言ってレイターはにやりと笑った。

「な、何?」
「と言ってもやることは同じさ。アルボードを差し込んで制御装置の管理パスワードを変更するだけだからな」
俺はあわてた。
「や、止めろ。重力制御装置はこの星の生命維持装置なんだぞ。間違ったらこの星は終わりだ。トライムス少佐になんて報告するんだ」
「別に俺はアーサーの下で働いてるわけじゃねぇ。俺の判断で作戦なんてどうとでも変えられる。ここだな」
レイターは手早く二段目のキーボードに貼られていた封印のシールをレーザーナイフで切り取った。
そして、俺が止める間もなく抜き取ったアルボードをその横へ差し込んだ。
* *
フェニックス号のリビングでティリーは不安に襲われていた。
レイターは出かけたまま戻ってこない。もうすぐお昼だ。状況がよくないのだろうか。
隣でフレッド先輩は検索を続けていた。
「ティリー君、これを見てくれ」

先輩が示すモニターには臨時便のお知らせが出ていた。
「十四時にタラ系行きの臨時避難便が西の二十五番ゲートから出るらしい。タラの政府が交渉したようだ。十四時というとあと二時間か。よし、この船に乗ろう」
「先輩、レイターはこの船にいるようにって・・・」
わたしの言葉を先輩は強い口調で遮った。
「君も知っているだろう。彼は『厄病神』だ。一緒にいて帰れる保証はない。それに彼は今我々を守るという職務を放棄している」
「そういうわけじゃ・・・」
「いいかい、僕たちは出張でたまたま暴動に巻き込まれてしまった、こういう時ビジネスマンは自分の判断で身を守らなくてはいけないんだ。本社へ一刻も早く無事帰ることが我々の仕事なんだよ。タラまで出られれば三日で本社に着ける。僕は行くよ。君はここで一人で待っているかい?」
「い、いえ」
一人になるのは怖い。

先輩は有能なビジネスマンなのだ。先輩の言うことを聞いていれば間違いはない。
「じゃあ一緒に行こう」
「お待ちください」
マザーが引き留めた。
「僕たちが外へ出るのを止めることはできないよ。監禁罪に問われてもいいのかい」
フレッド先輩の言葉にマザーはドアを開けた。
最小限の荷物を詰めたスーツケースを持ってわたしたちは西ゲートへと向かった。 (42)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」