銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十話(1) 修理のお礼は料理です
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フェニックス号で見る宇宙船レースは、映像も音も臨場感たっぷりで素晴らしい。
ティリーは満足していた。

きょうのS1も最高だった。
わたしの憧れ『無敗の貴公子』エース・ギリアムは危なげなく優勝した。
レイターが応援するプライベーターのチーム・スチュワートは相変わらずの六位で、レイターが不満げな顔でふてくされているのはいつものこと。
フェニックス号でレースを観る、という穴場情報を教えてくれたジョン先輩は、最近ここへ顔を出さない。おそらく週末は、彼女のサブリナとデートをしているのだ。

「きょうはこれで帰るわ」
わたしは席を立った。
「飯、食ってかねぇのか」
フェニックス号でレースを見た後、そのまま夕ご飯をいただいて帰るというのが定番なのだけれど。
「きょう、電気屋さんがうちへ来るの」
「電気屋?」
「壁面モニターの調子が悪いのよね」
先月あたりから、時々映像が乱れるようになった。
忙しかったから、だましだまし使っていたのだけれど、ついに、わたしが楽しみにしているレースチャンネルにまでノイズが走るようになって来た。
美しいエースの顔がゆがむのは許せない。

あわてて電気屋さんに連絡を入れたところ、きょうの夕方、修理に来てくれることになった。
「俺がみてやったのに」
とレイターが言った。
この人は器用で、町の電気屋さんで修理できるものなら直せないものはないのだろう。
でも、わたしははっきりと断った。
「結構です。いくらぼったくられるか、わかったもんじゃないもの」
*
レイターが自宅まで送ってくれた。
というか、わたしが夕食を一緒に食べないと聞いて、外で食べることを考えたようだ。
家の前でレイターと別れようとした時、ポストに赤いライトが光っていることに気がついた。
伝言サービスに言付けが残っている。
「何だろう?」
バッグから携帯通信機を取り出し、転送再生ボタンを押すと男性の声が流れた。
『本日、急にうかがえなくなりました。ご都合のよろしい日を再度設定してください。イイノエレクトニック』
「ええっつ!」
わたしは思わず大きな声を出してしまった。
どういうこと。こんな急なキャンセルってあり?
普通は直接連絡してくるでしょうが。
携帯通信機を操作したわたしは、頭を抱えた。
三件、メッセージと着信履歴が残っていた。
イイノエレクトニックからだった。
失敗した。レースに夢中で気づかなかった。
はあ、ため息をついた。
来週は仕事が忙しくてまとまった時間が取れない。しばらく、壊れたモニターで我慢しなければならない。
レースチャンネルに映るエースの顔にノイズが走ることを想像すると、気分が落ち込んだ。
「俺がみてやろか?」
レイターが横に立っていた。
「いくらで?」
レイターはにやりと笑った。

「ティリーさんの手料理でいいぜ」
現金の要求じゃないんだ。何かたくらんでる可能性はある。
でも、言葉通りだったらラッキーだ。
ちょうどきょうの夕ご飯には、クイックレシピで作ったポトフが用意してある。
電気屋さんが来るから外で食べられないと思って、作っておいたのだ。しかも作り置きをしようと思って多めに・・・。
「ポトフだけど」
「OK、OK」
レイターは二つ返事だった。
これで、テレビが直れば安いものだ。
ノイズの走るレースチャンネルを見ながらイライラすることもない。正直助かる。
「じゃあ、お願いしよっかな」 (2)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」