銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (22)
・第一話のまとめ読み①(1)~(10) ②(11)~(20)
・永世中立星の叛乱 (21)
「アリオロンの検査場を調べてこい、って言うあんたに言われた仕事はこれで終わり。で、相談があるんだけど」
レイターがニヤリと笑った。嫌な予感がする。
こいつの相談というのはロクなことがない。
しかも企んでいる時の顔をしている。
レイターは、昨日私が突き返した請求書を取り出した。
「これ、払ってくんねぇかな」
何を言いだすつもりだ。
「損させねぇよ。新型艦の情報流出先教えるから」
「なっ。どこに流出していたんだ?」
「だから、これ頼みます」
「くっ」
私の失態だ。
アリオロンの検査場を調べろではなく、情報流出先を調べろと指示すべきだった。
こいつは他人の言葉尻を捉えることにかけては天才だ。
レイターの差し出す請求書を引ったくるように受け取る。レイターがウインクしながら答えた。
「契約成立。情報の漏洩先はラール王室だ」

ラール王室だと。
確かにあり得る。船の情報を全て握っているのだから。
レイターがタブレットを操作する。
艦の3D映像が浮かび上がった。
「奴ら王室警備艇を造ってんだ。『ラールゼット』って言うらしい。外見は違うが中身は連邦軍の新型艦そのものだ。もう、出来上がってるから一日あれば動かせるな」
よく調べてある。
設計図が映し出された。この『ラールゼット』は完全に我が軍新型艦のコピーだ。
「ふむ。このところ、地方の学生デモが過激になってきた。都市部へ飛び火する動きがでてきているから、政情不安に備えてということか」
「ガーディア社はクロノスはじめ連邦系の仕事を全て断ってんだ。情報を抜くだけ抜いてアリオロンにつくつもりさ」
レイターの読みは私と同じだ。
「あんた、七十二ノ丸の駅前公園に住んでる浮浪者グループの情報持ってるか。あいつら軍の警護武術を使いやがる。多分、ライロットはその集団と接触しようとしたんだ」
ほう。
「興味深い情報だな。お前を動かして調べたいところだが・・・」
私はレイターをにらみつけて言った。
「怪我をしたお前の代わりに私が囮になることになった」
「くくっ。将軍家の跡取り息子が囮となりゃ、色々と釣れそうだな」
愉快そうにレイターが笑う。
誰のせいだと思っているのか。
「私は囮とは言ったが、丸腰で撃たれろという指示はしていない」

レイターが目を逸らした。
「撃たれたんじゃねぇ。かすっただけだ」
ああ言えばこう言うのは昔から変わらない。
「なぜ銃を携帯しなかった?」
「あんたにゃ関係ねえよ」
「原因は・・・ティリーさんか?」
「なっ?!」
「図星だな」
「うるせぇ! 俺のやり方についちゃあ、あんたにとやかく、うっ・・」
大声を出したせいで傷に響いたのだろう。レイターは脇腹をおさえてうずくまった。
「口出し、される、筋合いは・・・ねぇ」
レイターの体を支えて静かに寝かせる。珍しく抵抗もしない。
「その身体で、銃を持たずにどうする気だ。相手はライロットだぞ」
「一晩寝ればなんとかなるさ。傷は浅い」
相変わらず頑固な奴だ。これ以上私が何を言っても聞かないだろう。
「これ、ティリーさんと一緒に食べてくれ」
洋菓子店の紙袋を机の上に置いた。
「何だ?」
「プリンだ」
怪我で食欲がなくても、レイターは好物のプリンなら残さず食べる。
それにしても、こいつ、銃を持たずに行動する気か。
怪我をした身体で、『暗殺協定』が発動しているというのに。
父上、いや将軍に経過報告はできないな。 (23)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」