銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (23)
・第一話のまとめ読み①(1)~(10) ②(11)~(20)
・ 永世中立星の叛乱 (21) (22)
夜が明けた。
ティリーはほとんど眠れなかった。
今日は二ノ丸にあるガーディア社の本社で詰めの交渉がある。
怪我をしたレイターは大丈夫だろうか。レイターを置いて、出かけなくては。
朝食を取ろうとリビングに入ると、テレビからニュースが流れていた。
『千ノ丸地域で発生した国民議会を求める学生デモは、警官隊と衝突し四人の死者がでました』
千ノ丸地域は地方のドーム都市だ。火炎瓶を投げる若者の姿が映っていた。
ラールシータの治安がこんなに悪いなんてガイドブックに書いてなかった。
「この星の何かが狂ってきているんです」と言ったガロン技師長の話を思い出す。
「おはよ。ティリーさん」
驚いたことにキッチンに、レイターが立っていた。

「レイター、起きてきて大丈夫なの?」
「きょうは本社だろ、九時に出るからな。これ食べるかい? アーサーが持って来たんだ」
笑顔で冷蔵庫からプリンを取り出すレイターはいつもと変わらない。
「けがは?」
「何のことかな?」
そう言ってレイターはにやりと笑った。昨日のことは悪い夢のようだ。
プリンのふたを開けながらレイターが言った。
「ティリーさんに一つ頼みがある」
緊張する。何だろう。
「昨日のことフレッドに言わねぇで欲しいんだ」
「どうして?」
「かっこ悪いから」
「何言ってるの?」
レイターの真意がつかめなくていらだつ。

「うそ。あいつうるせぇから面倒なんだ。それから会社にも」
「報告するなってこと? あなた銃で撃たれたのよ!」
「撃たれたんじゃねぇ、かすっただけだ」
念を押すようにゆっくりと彼は言った。
「あくまで俺のプライベート上の出来事、仕事は関係ねぇ」
「あなたが撃たれたのは私のせいよ」
「違うさ。俺がドジったんだ」
「だって、銃を持っていたらあなたは撃たれなかった。そうでしょ」
「さてね」
レイターは手慣れた様子でプリンを皿にひっくり返す。
「・・・銃を持っていたらあなたは撃たれる前に相手を撃った」
「まあ、そうだろうな」
と言いながらスプーンでプリンをすくって口に運ぶ。
「お、うめぇぞ」

その日常の様子と話している内容の重さがかけ離れている。
「それでいいの? 私の星では銃を持っているだけで違法なのよ。銃がなければ撃つ人も撃たれる人もいないのに・・・」
「残念だがここはあんたの星とは違う」
「わかってるわよ、そんなこと!!」
涙がこぼれそうになった。
「早く食べねぇと遅刻するぞ」
*
レイターと並んで船を出た。
空港ステーションから上りライナーで二ノ丸駅へ向かう。通勤時間帯なのかライナーが混んでいた。
レイターとは一言も交わさなかった。今レイターは銃を持っているのだろうか。怖くて聞けない。
二ノ丸駅の中央口でフレッド先輩と合流した。
きのうはスーツ姿の人しか見かけなかったビジネス街の二ノ丸。
なのにきょうは学生とみられる普段着の若い人たちであふれている。
「集会に参加する方は二番出口です」
赤い腕章をした人が誘導していた。
二番出口にガーディア社はある。嫌な予感がする。熱気を帯びた人の流れと共に歩いていく。
二番出口を出ると、十階建てのガーディア社の前に「国民議会の開催要求」「一律税の導入反対」と書かれた横断幕を持った学生たちが座り込んでいた。 (24)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」