M5StackChan「改造沼」に入る前の楽しみ方ガイド
5/21にXにこのポストをしたところ、意外に反響があったので、ちょっと解説してみます!
#スタックチャン 界隈は高度な改造例が多くて面白い一方、初心者は「どこから?」となりがち。
— 富永道也|デジタル推進委員|台湾×AI (@4989er) May 20, 2026
最初から改造沼でなくても大丈夫。
まずは“話す・飾る・育てる”から。
そんな地図を作ってみました。 #StackChan pic.twitter.com/6UQ98brwVY
M5StackChanを手に入れると、まず最初に思うことがあります。
「これ、結局なにから始めればいいんだ?」
AIと会話できる。
見た目もかわいい。
3Dプリンタで外装を作れる。
LEGOやブロックで飾れる。
ファームウェアもいじれる。
生成AIと組み合わせれば、机の上の小さな相棒にもなる。
さらに、IoTや音声認識、LLM、サーボ制御、セキュリティの教材としても使える。
できることが多すぎるのです。
だからこそ、初心者ほど戸惑いやすい。
「すごそう」なのはわかる。
でも、どこから触ればいいのかわからない。
気づけば、GitHub、3Dプリンタ、ファームウェア、APIキー、ローカルLLM、サーバー連携……と、いきなり深いところを見てしまい、手が止まってしまう。
そこで今回は、M5StackChanをこれから楽しむ人向けに、改造沼に入る前の楽しみ方ガイドとして整理してみます。
これは高度な改造マニュアルではありません。
むしろその手前の、
「自分はどの入口から入ると楽しめそうか?」
を見つけるための地図です。
M5StackChanは「完成品」ではなく「育てるロボット」

M5StackChanの面白さは、単にAIと会話できるロボットという点だけではありません。
むしろ本質は、自分で育てる余地が大きいことにあります。
買った状態のままでも遊べる。
でも、少し設定を変えると性格が変わる。
外装を変えると別のキャラクターになる。
LEGOや小物を付けると机の上の存在感が変わる。
通信やソースコードを見始めると、AIロボットというよりIoT教材に見えてくる。
つまりM5StackChanは、
愛でる対象
飾る対象
話し相手
工作素材
AI実験台
IoT教材
セキュリティ教材
発信ネタ
という複数の顔を持っています。
だから、最初から「正解の楽しみ方」を探す必要はありません。
むしろ、自分の興味に近い入口から入ればいいのです。
Lv.0:まずは話しかけて遊ぶ

最初の入口は、やはり「話しかける」です。
難しい設定や改造をしなくても、まずは机の上に置いて、挨拶してみる。
質問してみる。
ちょっとした雑談をしてみる。
これだけでも、かなり面白いです。
特に生成AIに慣れている人ほど、画面の中のチャットとは違う感覚に気づくと思います。
テキストで返ってくるAIと、目の前の小さなロボットが声で返してくるAIは、体験としてまったく違います。
たとえば、
朝の一言を言ってもらう
作業前に励ましてもらう
中国語や台湾華語の練習相手にする
StackChanに今日の予定を話してみる
くだらない質問をして反応を見る
このあたりは、初心者でもすぐに楽しめます。
最初はこれで十分です。
「改造しなければ楽しめない」と思う必要はありません。
Lv.1:見た目を変えて「うちの子」にする

次に入りやすいのが、見た目のカスタムです。
M5StackChanは、見た目がシンプルだからこそ、少し何かを足すだけで印象が変わります。
たとえば、
名前シールを貼る
小さな名札を付ける
アクリルスタンド風にする
LEGOで背面ユニットを作る
通信アンテナ風パーツを付ける
3Dプリンタでヘルメットや装甲を作る
台座を作って展示する
この段階は、プログラミングができなくても楽しめます。
特にLEGOやTechnic系のパーツは、試行錯誤しやすいのが良いところです。
失敗しても外せばいい。
気に入らなければ組み替えればいい。
ネジ止めや接着の前に、まずは仮組みで遊べる。
3Dプリンタに進む前の段階としても、LEGOはかなり相性が良いと思います。
いきなり完璧な外装を作ろうとしなくていい。
まずは「アンテナを付けたら通信ロボットっぽいな」とか、「名札を付けたら研究所の助手みたいだな」くらいでいいのです。
ここで大切なのは、完成度よりも愛着です。
少し手を入れた瞬間に、それは単なる製品ではなく、自分のStackChanになります。
Lv.2:Personality設定で性格を作る

外見の次に面白いのが、中身のキャラクター化です。
生成AIを使う以上、StackChanは「どんな性格で話すか」によって体験が大きく変わります。
たとえば、同じStackChanでも、
丁寧な秘書
元気な後輩
台湾華語を教えてくれる先生
ちょっと毒舌な相棒
セキュリティに詳しいミニ助手
毎朝励ましてくれる小さな友人
のように、設定次第で印象が変わります。
ここでいきなりAPI連携やローカルLLMに行く必要はありません。
まずはPersonalityの文章を調整するだけでも、十分に「AIカスタム」です。
たとえば台湾華語の練習相手にしたいなら、
「基本は日本語で話してください。ただし、簡単な台湾華語の単語や短いフレーズを混ぜて、必要に応じて日本語で意味を説明してください」
のように設定すると、いきなり全部中国語で話されて困る、という事態を避けられます。
AIは、設定の書き方でかなり挙動が変わります。
これは単なる遊びではなく、プロンプト設計の練習にもなります。
Lv.3:教材として仕組みを学ぶ

M5StackChanは、かわいい見た目をしていますが、中身はかなり学びが多いデバイスです。
音声を拾う。
サーバーに送る。
AIが応答を生成する。
音声で返す。
画面に表情を出す。
サーボで動く。
カメラやセンサーも関係してくる。
この流れを追うだけでも、AI時代のIoT教材としてかなり優秀です。
学べるテーマは多岐にわたります。
ESP32系マイコン
Wi-Fi通信
音声認識
音声合成
LLMとの連携
サーボ制御
カメラ利用
NFC
スマホアプリ連携
ファームウェア更新
GitHub上のソースコードの読み方
IoT機器のセキュリティ
ここで重要なのは、全部を一気に理解しようとしないことです。
最初は、
「この子は、どこに通信しているのだろう?」
「音声はどこで処理されているのだろう?」
「サーボはどのタイミングで動いているのだろう?」
「ファームウェアを書き換えるとはどういうことだろう?」
という素朴な疑問からで十分です。
かわいいロボットをきっかけに、IoTやAIの裏側を少しずつ知っていく。
これがM5StackChanの大きな魅力です。
Lv.4:いよいよ改造沼へ

ここまで来ると、いよいよ本格的な改造に入りたくなります。
たとえば、
OpenAI APIにつなぐ
Geminiにつなぐ
Difyと連携する
自前サーバーを中継する
ローカルLLMと会話させる
2台のStackChan同士を会話させる
スマートホームと連携する
カメラ入力を使った機能を作る
独自の人格や記憶機能を持たせる
公式ファームを読んで自分向けに改造する
こうなると、かなり楽しい反面、難易度も一気に上がります。
APIキー、通信、サーバー、ファームウェア、ビルド環境、ライブラリ、認証、料金、セキュリティ。
考えることが急に増えます。
だから初心者に対しては、最初からここを目指さなくてもいいと思います。
むしろ、
まず話しかける
見た目を変える
性格を変える
仕組みを調べる
必要になったら改造する
という順番の方が、長く楽しめます。
改造沼は、逃げません。
焦って飛び込まなくても、机の上で毎日少しずつ触っているうちに、自然と「ここを変えたい」が出てきます。
そのタイミングで入ればいいのです。
初心者向け・楽しみ方マップ

$$
\small \def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{|l|l|l|} \hline
\textsf{\textbf{興味の方向}} & \textsf{\textbf{最初にやること}} & \textsf{\textbf{向いている楽しみ方}} \\ \hline
\textsf{かわいいものが好き} & \textsf{まず会話してみる} & \textsf{相棒化、毎日の挨拶、癒やし} \\ \hline
\textsf{工作が好き} & \textsf{LEGOや小物を付ける} & \textsf{外装カスタム、名札、アンテナ} \\ \hline
\textsf{3Dプリンタに興味がある} & \textsf{小さな外装パーツから作る} & \textsf{装甲、台座、ヘルメット} \\ \hline
\textsf{AIが好き} & \textsf{Personalityを変える} & \textsf{性格づけ、語学練習、LLM比較} \\ \hline
\textsf{語学が好き} & \textsf{日本語+台湾華語設定にする} & \textsf{会話練習、発音練習、単語学習} \\ \hline
\textsf{技術が好き} & \textsf{ソースコードや通信を見る} & \textsf{IoT教材、AI連携、サーボ制御} \\ \hline
\textsf{セキュリティが気になる} & \textsf{通信先や権限を確認する} & \textsf{安全な使い方、持ち込みリスク確認} \\ \hline
\textsf{発信したい} & \textsf{遊んだ記録を残す} & \textsf{note、X、画像生成、検証記事} \\ \hline
\end{array}
$$
このように整理すると、自分の入口が見つけやすくなります。
「プログラミングできないから無理」ではありません。
「3Dプリンタがないから無理」でもありません。
「APIがわからないから楽しめない」でもありません。
入口はいくつもあります。
壊さないための意識も大事

楽しむうえで、もう一つ大切なのが「壊さない」ことです。
ロボット的な見た目をしていると、つい手で動かしたくなります。
外装を付けたくなります。
サーボに負荷をかけたくなります。
ファームウェアもどんどん書き換えたくなります。
でも、小さなデバイスである以上、物理的な無理は禁物です。
サーボを無理に動かさない
重すぎる外装を付けない
ケーブルやコネクタに負担をかけない
いきなり非公式ファームだけに頼らない
不具合時は公式ファームに戻せる状態を作っておく
会社や外出先に持ち込む場合はカメラ・マイクの扱いに注意する
特にAIロボットは、かわいい見た目でもカメラやマイクを備えたIoT機器です。
自宅で遊ぶときと、会社やイベントに持ち込むときでは、注意点が変わります。
「かわいいから大丈夫」ではなく、かわいいからこそ、周囲に不安を与えない使い方を考える必要があります。
このあたりも、M5StackChanを教材として見ると、とても良い学びになります。
M5StackChanは、AI時代の電子工作入門かもしれない

昔の電子工作は、LEDを光らせたり、モーターを回したりするところから始まることが多かったと思います。
もちろん、それは今でも大事です。
でも今は、そこに生成AIが加わりました。
ただ光るだけではない。
ただ動くだけではない。
話しかけると答える。
性格を持たせられる。
言語を変えられる。
サーバーとつながる。
クラウドAIとも、ローカルLLMとも、将来的には連携できる。
M5StackChanは、そういう意味で、AI時代の電子工作入門としてかなり面白い存在だと思います。
しかも、入口がやわらかい。
かわいい。
机に置ける。
会話できる。
外装を変えられる。
発信ネタにもなる。
その一方で、深掘りすれば、通信、AI、ファームウェア、IoT、セキュリティまで学べる。
この浅さと深さの同居が、M5StackChanの魅力です。
まとめ:最初から沼に飛び込まなくていい

M5StackChanは、本当にいろいろできます。
3Dプリンタで見た目をロボットっぽくする。
LEGOで背面装備を作る。
生成AIでパートナーにする。
台湾華語の練習相手にする。
教材として通信やコードを調べる。
高度な人はAPI連携やローカルLLMまで進める。
でも、初心者が最初から全部をやろうとすると、たぶん迷います。
だからまずは、こう考えるとよいと思います。
M5StackChanは、改造する前から楽しめる。
そして、楽しんでいるうちに自然と改造したくなる。
その順番でいいのです。
最初は、話しかけるだけでいい。
次に、名前を付けるだけでいい。
その次に、LEGOで小さなアンテナを付けるだけでいい。
少し慣れたら、Personalityを変えてみる。
さらに興味が出たら、通信やソースコードを見てみる。
改造沼は、その先にあります。
焦らなくていい。
まずは机の上に置いて、毎日少しずつ「うちの子」にしていく。
それが、M5StackChanのいちばん自然な楽しみ方なのかもしれません。
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