連日満席が落とし穴の始まり/他人の不幸は蜜の味 #9
充実したかに思えた演劇の落とし穴
やる気とは裏腹に、空回りしていたボクを不憫に思ってくれたんだろう。
女性の先輩がボクに声をかけてくれた。
「このサークルじゃなくても演劇は出来るよ。他の劇団だけど、私も参加させてもらっているから一緒に行ってみる?」
サークルの先輩達に腹が立ってはいた。
でも、他で演劇を続けるアテもなかったボクには天の救いだった。
ただし、連れて行ってくれた劇団は、ボクのやりたかった人を笑わせたり楽しませるよりも、魅せる劇団だった。
とはいえ、そこのメンバーには、サークルのOBも居て、脚本もしっかりしていたので、ど素人同然のボクには得るモノも大きかった。
この劇団の公演にも出演させていただいたが、お客さんも連日満員で、何より充実感がハンパじゃなかった。
観てもらえるお客さんが沢山来てもらえると嬉しい。
演劇やるならこうでなくちゃ意味ないなという想いも強くなる。
ここでの公演が縁となって、他の劇団にも呼ばれるようになった。
おかげでいくつもの公演に出演させていただく機会が得られたのは大きかった。
ボクは他の劇団に参加している最中、大学で所属したサークルの公演には一切参加しなかった。
サークルでは、ボク以外にも先輩達のやり方に意見する人も増えていた。
メンバー内の揉め事が増え、それが嫌でサークルを辞めてしまう人が続出した。
気がつけば、ボクらの学年で女の子は一人残らず辞めてしまい、男だけの状況になっていた。
この頃には先輩達とも分かり合えるのではないかと思い、もう一度話し合いを設けた。
だが、ボクらの関係性は全く変わることもなく、平行線のままだった。
そこで、自分と賛同するメンバーだけで公演を開催することにした。
男7人の役者を固定し、女の子は出演しないことにした。
シンプルに残ってるのが男しかいなかった。
結果として男のみの劇団だったので、観に来てくれるお客さんのターゲットを女の子に絞ることも出来た。
この時のメンバーには、今では映画の助監督になっている友達や、音響の仕事に就いた後輩、舞台監督になった人も居る。
今では当たり前の演出の一つだが、一緒にやっていたメンバーのおかげで、舞台の場面が変わるタイミングで映像を流したりも加えた。
自分たちで初公演を迎える前はどうなることかと不安もあったが、連日満員で初公演を終えることが出来た。
その後、バンドでいうところの対バンみたいな演劇のフェスティバルにも、大学生ながら参加した。
簡単に言うと、決められた期間中に参加するいくつもの劇団の公演中にチケットを1枚買う。
すると、フェスティバルに参加している他の劇団の公演もタダで観られるのだ。
自分たちが集客した以外のお客さんが来てくれるメリットがある。
デメリットは、お客さんを取られることもあることだ。
特に賞金が出るとかではなかった。
ただ、ボクらとしては得るものが大きかった。
参加した演劇フェスティバルでは大学生にして賞をいただくことも出来た。
おかげさまで、他の劇団を観に来ていた人たちが、ボクらの公演も観にきてくれるようになり、集客も倍増した。
ボクは、この演劇以外も色んなサークルに所属して、そっちの友達も来てくれるようになり、そのまた友達が友達や知り合いを連れて来てくれたりもした。
少しずつではあったが、このまま演劇で将来は生計を立てるんだという気持ちがボクには芽生え始めてきていた。
ヒトタラヲ
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