衝撃!小劇場演劇の世界/他人の不幸は蜜の味 #7
予想を裏切られた舞台の世界
そもそも演劇に対して、かなりの偏見があったのも事実だ。
オーバーなリアクションや、観ている客に向かって語りかけてくる日常ではありえない不自然な動きをするものを想像していた。
いざ公演が始まってみると、ボクが想像していたモノとは全く違った。
見ているこちらに役者が語りかけてもこないし、ボクの想定するオーバー過ぎるリアクションもなかった。
舞台としての設定はあったが、結果から言うと、ものすごく面白かった。
開始3分と経たないうちに、ボクの心は奪われていた。
「なんだこれ、ボクが思ってたのと全然違うじゃん」
これが、ボクが最初に観た演劇の感想だ。
舞台で演技をする役者さん、それに合わせた音響や照明にいたる全ての演出に魅了された。
そんな中でも、一番ボクの心を鷲掴みにされたシーンがあった。
一人の役者さんが、恐らくアドリブと思われる動きやセリフで、客をこれでもかと笑わせていた。
劇場内もゲラゲラと大きな笑い声が起こり、ボクも手を叩きながら声を出して笑っていた。
あっという間に公演は終わり、ボクは満足感と高揚感に包まれていた。
公演の中で出ていた役者の何人かは、サークルのOBだということを、連れて行ってくれた先輩が教えてくれた。
もしかしたら自分も、“あれだけの人を魅了するような人間になれるかも“と、思うと心が踊った。
加えてあの劇団のメンバーは、ボクの通う大学にある夜間のサークルと昼間のサークルのOBであることも教えてくれた。
「今日ほど面白くないかもしれないけど、今度は昼間の演劇サークルがやっている舞台も観に行こうよ」と、先輩が言ってくれた。
既に演劇に魅了されていたボクは、迷うことなく「観に行きたいです!」と、お願いした。
昼間のサークルとはいえ同じ大学の学生だ、どの程度の舞台が出来てるかも興味があった。
何ならボクら夜間の大学生と違って、基本的には現役や1浪とかの子が多いから、年下がやってんだろ?くらいの舐めた気持ちで行った。
結果から言ってしまうと、これまたものすごくおもしろかった。
驚いたのは、大学生のサークルにも関わらず、かなりのお客さんがいた。
それも、かなり幅広い層で、年配の方だったり、スーツを着た社会人の方だったり、同じ大学外と思われる人も結構居て、とにかくお客さんが多かった。
中でも一番驚いたのが、先日の劇団に役者として出ていた人が一人だけ出演していて、彼が現役の大学生だと知った時だった。
正確に言うと、その大学生は客演と呼ばれ、大学の演劇サークルに所属しつつ、他の劇団にゲストとして参加しているということだったが、その時点ではボクは分からなかった。
更に驚かされたのは、彼がボクと同じ入学したての一年生だと知った時だった。
のちに彼とは同じ舞台にも立つこととなるが、この時点ではボクとの差はかなり大きかった。
同じ大学の同じ一年生で、あちらは魅せる側で、こちらは魅せられる側のお客さんだと思うと、なんだか自分が惨めに感じた。
舞台を観終わり、一緒に行った人たちも興奮していたからか、自然と各々が感想を話し始める。
この間の劇団よりも、今観た昼間のサークルの方がおもしろかったという人もいるくらい、社会人劇団と遜色なかった。
特にこれといって高校に入ってから何の努力もしていないボクだが、舞台の役者になりたいなと思ったのはこの時だった。
ボクは夜間のサークルに入り、ここから演劇の世界にのめり込んでいくこととなる。
ヒトタラヲ
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