「曖昧な言葉を定義する」ということ:なぜ重要で、どう実践するか?
日常のコミュニケーションや仕事において、「言ったはずなのに伝わらない」「認識がズレる」といった経験はありませんか?その原因の一つに、言葉の「曖昧さ」が挙げられます。ここでは、スパルタン言語化で学んだ「言葉の定義」の重要性と、その実践方法について書きます。
「言葉の定義」の重要性
私が「良い言語化」 と定義しているのは、「目的が明確で、抽象度が目的に合致しており、網羅性があり、魂が乗っている文章化」です。この中で、「言葉の定義」は、特に「抽象度が目的に合致している」部分や、「網羅性」と深く関連しています。
言葉の定義が曖昧だと、聞き手にとって「何が分からないかすら分からない」状態に陥りやすいのです。例えば、良い言語化を定義する際、「分かりやすく整理する」とすると、曖昧なまま言い換えているだけであり、情報量が増えていないためあまり意味がありません。わかりやすい、という言葉は人によって違うためです。
言葉を明確に定義することは、以下の点で不可欠なスキルとされています:
情報量を減らさずに、矛盾なく、文章量を減らすこと(抽象化)
細部や詳細を具体的に理解すること(具体化)


これは、相手に「何かをして欲しい」と伝える際(資料全般の基本的な目的)に、伝える側は分かりやすく言語化し、伝えられる側は正確に解釈するために不可欠なスキルです。解釈もまた、具体化の一種と考えています。
「具体化」としての言葉の定義
曖昧な言葉を定義することは、「具体化(抽象度を下げること)」の行為です。これは、高い抽象度の概念を、人が理解できるレベルにまで落とし込む作業を指します。
具体化の方法としては、主に以下のものが挙げられます。
因数分解(数値化、言葉/関係の定義)
例えば、「良い言語化とは何か?」という問いに対し、「目的が明確で、抽象度が目的に合致しており、網羅性があり、魂が乗っている文章化」 と因数分解して定義することが可能です。
「採用力」 を「応募数 × 応募からの内定率」のように数式化することも、因数分解の一例です。
因数分解において特に重要なのは、「MECE(漏れなくダブりなく)」であることです。軸を切って考えることで、情報が漏れたり重複したりすることなく、網羅的で分かりやすい定義や分解が可能になります。
MECEについては別記事に詳しく書きました。
具体例の提示
「技術を”ちゃんと”理解して使って欲しい」 といった曖昧な言葉に対し、アンチパターン(Chat GPTにコードを書かせて、よく分からんが動く状態) を例示することで、具体化を図ることができます。
具体例) ハンチョウとその部下の会話

例えば、この何気ない会話ですが、ハンチョウ(右)に対して部下(左)のコメントについて抽象度がズレていることがわかりませんか?
ハンチョウは「ここの」あんみつがうまい、と言っているのに対して、部下はあんみつ全般を指してうまいと言っています。
ハンチョウは、より具体的なその店のあんみつの話をしているのに、部下は全てのあんみつの話をしておりより抽象的です。抽象度がズレています。
まあ、日常会話の話なので大した話ではないわけですが、これが仕事となるとそのズレが致命的になることもあります(以下はChatGPTが作ってきた致命的なズレの一例です)。
PM:「次のリリースで“チャット機能”入れよう。ユーザー同士でやり取りできればバズるはず!」
エンジニア:「了解です、Slack みたいにリアルタイムでメンション飛ばせる感じですね」
PM:「いやいや、そこまで本格的じゃなくて“コメント欄”程度だよ?」
抽象度が揃わないまま開発が進み、出来上がったのはフル機能のチャットシステム。
サーバーコストは跳ね上がり、リリースも2か月遅延。あとで振り返ると「“チャット”の定義を3分で合わせておけば良かったよね……」というオチ。
「目的」と「コンテクスト」が定義を左右する
言葉の定義は、その言葉が使われる「目的」と「コンテクスト(文脈)」に大きく依存します。
例えば、「採用力」の数値化を考える場合、その目的が「社内の採用力向上」なのか、「他社との比較」なのかによって、適切な数式や要素が変わってきます。
また、プロジェクトの目的を最初に明確にしないと、具体的なタスクの実行中に「なぜこれを行っているのか」という目的とのズレが生じる可能性があります。とあるプロジェクトの事例では、当初「ユーザーにある機能を提供してLTVを上げる」という目的が、経営側の「単機能での売上作り」「新機能の実験場」「商品送客場」「新機能立ち上げのモデルケース作成」という、より上位かつ網羅的な目的とズレていて、企画が曖昧なまま進もうとしていました。ズレたままだと経営側が意図しないアウトプットとなる可能性があり、そうなると手戻りや企画の停止といったことが起きます。
このように、相手(特に上位者)の目的を理解し、それに合わせて言葉を定義し、抽象度を調整することが、タスクを正確に実行し、期待されるアウトプットを出す上で非常に重要です。これにより、上位者が判断できるレベルまで情報量を減らしつつ、網羅性を担保した形で情報を提示することが可能になります。
まとめ
「言葉の定義」は、単なる辞書的な意味付け以上の、コミュニケーションと問題解決の核心をなすスキルです。
曖昧な言葉に直面した際は、以下の点を明確にし、実践してみてください。
「何のための定義か(目的)」
「誰に伝えるか」
「どのようなコンテクストか」
その上で、因数分解や具体例の提示といった方法 を用いて、MECEな視点 で掘り下げてみてください。これにより、お互いの認識のズレを防ぎ、より効果的なコミュニケーションを実現できるはずです。
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