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曖昧さを排除する武器、MECE: 軸で切るコミュニケーション術

前回は、日常のコミュニケーションにおいて「言葉の定義」がいかに重要かについて書きました。曖昧な言葉を具体的に定義することで、私たちの認識のズレを防ぎ、より効果的なコミュニケーションを実現できるという内容でしたね。

今回は、その「言葉の定義」をさらに深掘りする上で、不可欠な概念である「MECE(ミーシー)」について掘り下げていきたいと思います。「スパルタン言語化」において、MECEがいかに重要視されているか、そしてそれがなぜあなたの「言語化力」を飛躍的に向上させるのか、具体的な事例を交えながら解説します。

MECEとは何か?:「漏れなくダブりなく」の思考法

MECEとは、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の頭文字を取った言葉で、日本語では「漏れなく、ダブりなく」と訳されます。この概念は、何かを分類したり、分析したり、あるいは定義したりする際に、考えるべき要素がすべて含まれており(漏れなく)、かつ、それぞれの要素が重複していない(ダブりなく)状態を指します。

この「漏れなくダブりなく」という原則は、一見すると当たり前のように感じるかもしれません。しかし、実際に言葉を定義したり、物事を分解したりする際に、これを徹底することは非常に難しいものです。

なぜ「言葉の定義」にMECEが不可欠なのか?

スパルタン言語化でMECEが重視されるのは、それが「言葉の定義」や「具体化」の質を決定づけるからです。

  • 情報量が増えない「言い換え」を防ぐ: 曖昧な言葉を定義する際に、ただ別の曖昧な言葉に言い換えるだけでは、情報量は増えません。例えば、「良い言語化とは何か?」という問いに対し、「分かりやすく整理することです」と答えても、「分かりやすく整理」自体が曖昧なため、定義としては不十分です。わかりやすさは人によって定義が異なります。MECEを意識することで、情報量を減らさずに、矛盾なく、文章量を減らすこと(抽象化)や、細部や詳細を具体的に理解すること(具体化)が可能になります。

  • 「何が分からないかすら分からない」状態の回避: 定義が不完全(漏れがある)だと、聞き手は「何が分からないのかすら分からない」状態に陥りがちです。また、重複した情報(ダブり)があると、冗長になり、本質が見えにくくなります。MECEは、こういった情報伝達の課題を根本から解決するために必要です。

  • 「因数分解」の精度向上: 言葉を具体的に定義する際によく用いられる「因数分解(数値化、言葉/関係の定義)」において、MECEは特に重要です。例えば、「採用力」を「応募数 × 応募からの内定率」のように数式化する際も、MECEな視点が欠かせません。

MECEを実践する方法:軸で切る思考

MECEを実現するための最も効果的なアプローチの一つが「軸で切る」という思考法です。

スパルタン言語化では、抽象的な概念を因数分解する際に、特定の「軸」を設定し、その軸に基づいて要素を分類することを推奨しています。

  • 具体的な軸の例:

    • 「質」と「量」: 例えば、「効果的」という言葉を定義する際に、「質の高さ」と「量の多さ」という軸で分解することができます。

    • 「中」と「外」: リスクを考える際に、「社内の問題」と「社外の問題」という軸で分類することで、漏れなくリスクを洗い出すことが可能です。

    • 5W1H: 何かを定義したり、状況を整理したりする際に、「When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)」といったフレームワークを軸として活用することも有効です。これは比較的テンプレートとして使いやすく、網羅性を担保しやすい方法です。

    • プロセス: 物事を時間軸や手順で分解することも、MECEな視点をもたらします。例えば、プロジェクトの進行を定義する際に、各ステップを分解し、それらが漏れなく含まれているかを確認します。

例えば、AIDMAというフレームワークもプロセスを軸にしています
出典: https://xn--tcke8gsdh0c7c.com/mece

この「軸で切る」という方法は、単に言葉を表現するだけでなく、思考そのものを網羅的に、かつ重複なく整理する上でも非常に有効だとされています。

具体例) 企画立案で使った軸

仕事における軸の切り方として、以前、ある新機能の企画立案を補助するにあたり、必要な内容を「高める」「広げる」「深める」という軸で列挙しました。

このような軸を使うことで、漏れをなるべく防ぐことができます。

  • 高める: 高い視座・視点から本企画を捉える
    例) 経営陣や上長の意図に沿った企画となっているか?

  • 広げる: 選択肢を広げた上で絞る
    例) 結論ありきで企画を考えていないか?他の選択肢は?

  • 深める: 具体的に実行できるように解像度を上げる
    例) スケジュールや数値感は?

特に新しいことを企画する場合だと、多くの人が「深める」=やることに集中し、「高める」「広げる」が欠けていたり、十分に行っていないことが多いように感じます。そこで、このプロジェクトでは特に「高める」部分に時間の半分を使ってズレがないようにしました。

※なお、「高める」「広げる」「深める」の軸は、本来キャリアアップの方向性を考えるため、Mindsetの李さんが使っていたものを、企画立案の軸としてアレンジしたものです。

MECEは難しい、だが価値がある

完璧なMECEを常に達成することは、非常に難しい挑戦です。しかし、トレーニングで繰り返しMECEを意識することは、あなたの思考の質を格段に高めます。

例えば、いわゆるロジックツリーを作ったり、フェルミ推定を行ったりすることで鍛えることも可能です(これは色々な文献があるためご自身で調べてもらえれば)。

「軸で切る」ことで、自分一人では思いつかないような観点に到達しやすくなり、結果としてより網羅的で説得力のあるコミュニケーションが可能になります。これは、単に資料の書き方だけでなく、日々の問題解決や意思決定においても強力な武器となるでしょう。

まとめ

効果的な「言語化」のためには、言葉を具体的に定義するだけでなく、その定義が「漏れなく、ダブりなく」要素をカバーしているか(MECEであるか)を常に意識することが重要です。

  • MECEは「漏れなく、ダブりなく」を意味し、情報伝達の曖昧さや冗長さを排除します。

  • MECEを達成するには、「軸で切る」という思考法が有効で、5W1Hや質と量などの軸で分解することで網羅性を高めます。

  • 最も重要なのは、定義の「目的」と「コンテクスト」を理解し、相手(特に上位者)の期待をMECEに捉えることです。

日々のコミュニケーションで「MECE」の視点を取り入れることで、あなたの「言語化力」は確実にレベルアップするでしょう。ぜひ、意識して実践してみてください。


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