【DTM】コンプレッサー「多段掛け」とは?より自然な圧縮を実現する手法
ミックスやマスタリングにおいて1種類のコンプレッサーだけで理想的なサウンドに仕上げるのは難しい場合があります。
そのような時に有効なのが「多段掛け」(シリアルコンプレッション)というテクニックです。
多段掛けとは
「多段掛け」は、複数のコンプレッサーを直列に接続して段階的に音を圧縮していく方法です。
1つのコンプレッサーで強く圧縮するのではなく、複数のコンプレッサーを使って少しずつ圧縮することで、より自然で滑らかなサウンドに仕上げることができる場合があります。
たとえば、1つのコンプレッサーで8dBのゲインリダクションを行うよりも、2つのコンプレッサーを使い、それぞれ4dBずつ圧縮する方が、音のキャラクターを保ちながらダイナミクスをコントロールしやすくなり、不自然な音の潰れやポンピングを防ぎやすいです。
多段掛けの組み合わせ例
コンプレッサーの組み合わせに厳密なルールはありませんが、いくつかの効果的なセオリーが存在します。
1. 緩やかなコンプ ➡️ 速いコンプ
この組み合わせは、ボーカルトラックなどにおいて音のキャラクターを保ちながら細部まで丁寧にコントロールしたい場合に有効です。
1段目:アタック・リリースタイムが緩やかなコンプレッサー(例:オプトコンプレッサー)
大きな音のピークを抑え、全体的な音量を均一にします。
音の立ち上がりを自然に残しつつ、ダイナミクスを緩やかに整える役割があります。
2段目以降:アタック・リリースタイムが速めのコンプレッサー(例:VCAコンプレッサー、FETコンプレッサー)
1段目で処理しきれなかった細かいピークを、より素早く制御します。
サウンドにパンチ感や存在感を与える目的でも使用されます。
2. キャラクター系コンプ ➡️ クリーン系コンプ
音の質感や個性を付加したい場合に適した組み合わせです。
1段目:キャラクター系のコンプレッサー(例:真空管コンプレッサー)
音に暖かさや厚み、倍音を加え、サウンドの質感を豊かにします。
2段目以降:クリーン系のコンプレッサー(例:デジタルコンプレッサー、VCAコンプレッサー)
1段目で加えたキャラクターを活かしつつ、ダイナミクスを正確にコントロールします。
音のピークを厳密に抑え、ミックス全体のバランスを整えます。
3. 多段掛けが可能なコンプレッサーを使う
1つの機材(プラグイン)の中に複数のコンプレッサーが内蔵されており、多段掛けができるように設計されているものがあります。
例えば、Shadow Hills Mastering Compressorには、オプティカルコンプレッサーとディスクリートコンプレッサーが搭載されており、それぞれのコンプのパラメーターを調整することで、細かい音作りができるようになっています。
また、LA-6176 Signature Channel Stripというプラグインには、1176という速いコンプレッサーと、LA-2Aという緩やかなコンプレッサーが搭載されています。
多段掛けの方法がよく分からない場合には、上記のような多段掛けが可能なコンプレッサーのプリセットなどから試してみるのも良いでしょう。
多段掛けのポイント
少しずつ慎重に:1つのコンプレッサーで大きく設定をいじるのではなく、各コンプレッサーで少しずつゲインリダクションを行います。
聴き比べが重要:多段掛けの効果は設定や組み合わせによって大きく変わります。こまめにバイパスして、元の音と聴き比べることで狙い通りの効果が得られているか確認しましょう。
プラグインの特性を理解する:コンプレッサーには、それぞれ異なる音響特性があります。例えば、オプトコンプレッサーは滑らかで音楽的な圧縮、FETコンプレッサーはアグレッシブな圧縮といった特徴を理解することで、より効果的な組み合わせが見つることができるようになると思います。
倍音の過剰な付加に注意:実機のコンプレッサーをモデリングしたプラグインには倍音を付加するものがありますが、そのようなコンプレッサーを直列で多段掛けすると、倍音が累積的に増加してしまい過剰になってしまう場合があります。倍音の量が多いと感じたら、クリーン系のコンプレッサーに置き換えるといった工夫をすると良いでしょう。
