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ミックス作業で大事なこと⑥:各トラックのフェーダーを上げすぎない

DAWのミキサーの初期設定では、各トラックのフェーダーは0dBFSになっています。
そのまま各トラックの音量を0dBFSを基準に調整していくと、マスタートラックの音量が大きく0dBFSを超えてしまいます。

マスタートラックが0dBFSを超えてしまった場合、マキシマイザーやリミッターで無理に音量を抑え込もうとする人もいますが、この方法だと音質が悪化してしまいますし、マスタリング作業でできることも限られてしまうため、あまりおすすめできません。

このような事態を防ぐためには、各トラックのフェーダーを大きく下げた状態で全体の音量バランスを調整することが重要です。
どのくらい下げるかは個人の好みや作業スタイルによって異なりますが、キックのピークメーターが-10dBFS前後になるように調整し、そこから他の楽器のバランスをとっていくという方法が考えられます。
この調整方法であれば、マスタートラックが0dBFSを超えるリスクはほとんどなくなります。


過去の常識と現代のDAW

以前であれば「出来るだけフェーダーを上げろ」と専門学校などで指導された経験を持つ人もいるかもしれません。
以前は「0dBFSとの間の余白は音質劣化やノイズの原因になる」という理由から各トラックのフェーダーをできるだけ0dBFSに近づけて作業することが推奨されていました。

しかし、現在主流のDAW(Cubase、Logic、Studio Oneなど)は、プロジェクトのビット解像度設定に関わらず32bit floatで内部処理を行うようになっています。
これにより、フェーダーを大きく下げても音質劣化はほとんど起こりません。
そのため、現代ではフェーダーを無理に上げて作業するよりも、余裕を持って下げて作業するほうがメリットが大きいと言われています。



マスターメーターの適切な音量

マスタリングの余白を十分に確保するためには、マスターメーターが0dBFSよりも、かなり下のほうで上下するように調整する必要があります。

マスターのメーターが何dBFS付近になっているのが理想か、という点に明確な答えはないと思われ、-6dBFSから-3dBFSで調整している人もいれば、-12dBFSくらいまで下げて調整する人もいるため、さまざまな考え方があります。

ただしマスターメーターが0dBFSよりも下のほうに位置するように調整する場合にも、マスタートラックのフェーダーは基本的に0dBFSに固定しておきましょう。
(ただし、曲の冒頭と最後にオートメーションでマスタートラックのフェーダーをゼロにして、ノイズを防ぐことは問題ありません。)

マスターのピークメーターが0dBFSに近づいたり、超えてしまったりした場合、本来は各トラックのフェーダーを一律で下げるのが正しい対処法です。
しかし、フェーダーを下げることでバランスが崩れるのが心配な場合は、一時的な解決策としてマスタートラックの前段に音量調整用のプラグインを挿入するという方法があります。
CubaseなどのDAWには標準で搭載されているプラグインのほか、MUtilityのような無料のプラグインでも代用できます。



ダイナミックレンジについて

ミキシング時にフェーダーを下げることは、ダイナミックレンジ(音の最も小さい部分から最も大きい部分までの幅)を確保する上で非常に重要です。

フェーダーを下げてマスタートラックに十分な余裕(ヘッドルーム)を持たせておくことで、マスタリング工程でコンプレッサーやリミッターを適切に使い、ダイナミックレンジをコントロールしやすくなりますが、逆にこの余裕がないと意図しない音の歪みや潰れが生じやすくなってしまいます。



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