ミックス作業で大事なこと⑤:ミックス作業時の音量(音の大きさ)の重要性
DTM関連の書籍などを読んでいると、ミックス時の音量に関して一見すると矛盾したような記述を目にすることがあります。
① できるだけ一定の音量で作業すべき
② 異なる音量でミックスのチェックをすべき
これは、それぞれ異なる目的とタイミングで行う作業なので決して矛盾しているわけではないと考えられます。
① 一定の音量でミックス作業をする理由
人間の耳は、音量が大きいほど「良い音」だと錯覚しやすい性質を持っており、また音量によって周波数特性が異なって聞こえるという性質もあります。
たとえば、1日目に「10」の音量で作業し、2日目に「13」の音量で作業をすると、2日目のほうが音が良く聞こえてしまったり、周波数特性が変わったように聞こえてしまい正確な判断ができなくなるのです。
これを防ぐため、ミックス作業中はスピーカーやヘッドホンのボリューム位置をできるだけ一定に保つ必要があります。
オーディオインターフェイスの出力音量を数値で確認できる場合
作業を始める前に、最適な音量設定の数値をメモしておきましょう。
出力音量が数値で確認できない場合
ノブの位置を写真で撮っておくか、マスキングテープなどで印を付けておくと便利です。
最適な音量レベルとは?
「一定の音量」が具体的にどのくらいが良いかは、人によって意見が分かれます。
小さめの音量
耳への負担を減らし、長時間の作業でも疲れにくいというメリットがあります。
WHO(世界保健機関)によると、80dBの音を週に40時間以上聞き続けると、難聴のリスクが高まるとされています。80dBは、地下鉄の車内やピアノ、人間の大声と同程度の音量です。この基準を意識した音量にすることで聴力低下のリスクを減らせますし、長時間の作業でも判断ミスを防ぐことにもつながります。
大きめの音量
ある程度の音量がないと、特に低音域の「良し悪し」を正確に判断できないこともあるため、後述のとおり一時的に大きな音量でチェックすることも必要です。
どの程度の音量が80dBなのか感覚が分からない人は、安いモノで良いので騒音計を手元に置いておくと便利です。
また、作業音量を決めたら、ミックス作業を始める前に、その音量でリファレンス楽曲を聴いておくことをおすすめします。
これにより、耳がその音量に慣れ、より客観的な判断ができるようになります。
複数のヘッドホンを使用する場合の注意点
複数のヘッドホンを使い分けている場合は注意が必要です。
製品ごとにインピーダンスなどの影響で、同じ音量で出力しても実際の音量が異なって聞こえることがあります。
複数のヘッドホンを利用する場合には、ヘッドホン端子が複数あるオーディオインターフェイスを使うか、音量を個別に音量調整ができるヘッドホンアンプを経由させると便利です。
【補足】音量を客観的に管理する方法
ミックス作業中に音量を一定に保つのは意外と難しいものです。
特に、ミックスが進むにつれてトラック数が増え全体の音量が大きくなりがちです。
そこで、おすすめなのがアナライザーやVUメーターを常時表示しておく方法です。
アナライザーやVUメーターを小型のサブディスプレイに表示しておけば、視覚的に音量レベルを管理できます。
マスターに何もインサートしていない場合でも、ピークや平均的な音量レベルを把握しやすくなるので、聴覚の疲労を防ぎながら安定した音量でミックス作業を進められます。
② 異なる音量でミックスをチェックする理由
ミックスの「作業」は一定の音量で行いますが、「チェック」の際には、異なる音量で聴くことも必要です。
これは、リスナーが必ずしも一定の音量で音楽を聴くとは限らず、小さな音量で聴く人もいれば大きな音量で聴く人もいるので、どのような環境でも意図したとおりに聴こえるかを確認する必要があるためです。
■ 小さな音量でチェックできること
小さな音量で再生したときに、ボーカル以外の楽器の音が急に聞こえにくくなることがあります。
この場合、ボーカルの音量が大きすぎる可能性が高いため、リスナーがボリュームを絞ったときにボーカルだけが浮いて聴こえることを防ぐためにボーカルの音量を調整する必要があります。
■ 大きな音量でチェックできること
低音域、特に50Hz以下の帯域は、大きな音量でなければ正確なチェックが難しい場合があります。
この帯域は「音」というよりも身体に響く「振動」や「圧力」として感じられることが多いため、ある程度大きな音量と大型のスピーカーが必要になることもあります。
ただし、100dBを超えるような大音量は短時間でも聴力に悪影響を及ぼす可能性があります。
100dB以下での一時的な確認(20〜30秒程度)に留め、聴覚を守りながら作業を進めたほうが安全です。
